« 急性乳腺炎(1) | Main | 紫雲膏の蜜蝋について »

急性乳腺炎(2)

急性乳腺炎は中医学では“乳癰”の分類に属します。
多くは乳腺管が堵塞して乳汁が鬱積したものです。
どうしてそうなったか?
丹渓が云うには“乳房は陽明経に所属し,乳頭は厥陰経に所属する”
だから感情が暢びやかでないと肝気が鬱滞しやすくなり、乳房に影響が出ます。
また産后に飲食の節度を守らないと脾胃は運化を失し,湿熱が胃絡に蘊結します。
陽明の胃経が壅滞すると乳絡は閉阻されて暢びず、気滞血瘀を形成します。
治療には疏肝理気・清胃熱・和営通乳をしなければなりません。

そこで考案されたのが瓜蒌牛蒡湯という処方です。
いくつかの加減方があります。
(瓜蒌仁4 牛蒡子・天花粉・黄芩・山梔子・金銀花・連翹・皂角刺3 青皮・陳皮・柴胡・生甘草1)29
(瓜蒌仁5 牛蒡子・天花粉・皀角刺・柴胡4 黄芩・陳皮・山梔子・白芷2 金銀花・蒲公英7)43
(全瓜蒌・蒲公英5 牛蒡子・赤芍・橘葉・絲瓜絡4 柴胡・青皮・鹿角霜3)35

この処方を見ると葛根湯とはかなり内容に違いがあります。
構成生薬から文字通り、清熱や疏肝理気の剤が大半を占めています。
だから表証といっても、ここでは発熱はあっても悪寒はありません。
一般にはこちらのタイプが多いのではないかと思います。

例:患者,女,28歳,2007年3月8日初診。
主訴:産后乳汁分泌がスムーズに行かない,双乳房は腫脹し,結塊があり,すでに4日間疼痛している。
検査:双乳は腫脹し,結塊は硬く,触れると痛み,皮膚温が少し高い,舌質は淡紅,苔は薄黄,脈は弦である。
双乳の超音波スキャンで双乳腺に積乳がある。
中医辨証は肝鬱気滞である。
治法:疏肝解鬱,消腫通乳。
方薬:瓜蒌牛蒡湯加減。
(全瓜蒌・蒲公英・王不留行5 牛蒡子・赤芍・橘葉・絲瓜絡・路路通・川楝子4 柴胡・青皮・鹿角霜・山甲・当帰3)54

上方を1剤服した后,乳汁はひとりでに溢れ,結塊は次第に軟らかくなり,疼痛は明らかに軽減した。
次の日にも1剤を継服したら諸症は消失した。

‥‥‥
漢方は鍵と鍵穴がピタリと合わなければ開かないように、処方と症状がピタリと合わなければ効きません。
これでお分かりのように簡単に「乳腺炎に葛根湯」とは云えないのです。
もし瓜蒌牛蒡湯を与えなければならない場合に葛根湯を与えたらどうなりますか?
葛根湯はお湯で、瓜蒌牛蒡湯は氷です。
葛根湯の温める作用が火に油を注ぐようになり、発熱はますますひどくなって乳腺炎は爆発してしまいます。

|

« 急性乳腺炎(1) | Main | 紫雲膏の蜜蝋について »

優良処方データーベース」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/10949/54274257

Listed below are links to weblogs that reference 急性乳腺炎(2):

« 急性乳腺炎(1) | Main | 紫雲膏の蜜蝋について »