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旋覆代赭湯の応用

《傷寒論》には「傷寒病を発汗をしたり,若しくは吐かせたり,若しくは下したりして,解した後に,心下が痞鞕し,噫気(ゲップ)が除かれなければ,旋覆代赭湯が主る。」という一文があります。
これは汗・吐・下という体の負担になる治療法により胃が損なわれたため、痰湿を生じて胃気が上逆している状態です。

以下に応用例を2題あげます。

病例1:張某,女,45歳。
嗳気が出るようになり1月余りになる。
飯后2~3時間になると胃中に気の上冲するのを覚え,嗳気を出すと楽になる。
空腹時にも同じ症があり,平素は温かいものを喜ぶ。
舌は淡紅、苔は白膩,脈は細弦。
寒湿中阻,濁陰上汎の証に属する。
治療は温中燥湿,降逆止噫が良い。
処方は旋覆代赭湯合丁香柿蒂湯、平胃散加減とする。

(旋覆花・降香1.5 代赭石・瓦楞子5 党参・半夏・刀豆・厚朴・枳殻2 柿蒂・陳皮・藿香2.5 丁香・蒼朮1 砂仁・白寇仁0.5)33.5

歴代の医家の多くは胃虚気逆,痰濁内阻,肝胃不和が嗳気の主要病機だと認めている。
患者は平素から温かいものを喜び,舌は淡紅、苔は白膩,ゆえに中焦の寒湿困阻と辨証され,旋覆代赭湯に,平胃散の化湿と,丁香柿蒂湯の温中降逆を合わせて,素早い効果を得た。

例2:趙某,女,71歳。
上腹部が満悶して嗳気を伴うこと2月余りになる。
患者は素体虚弱で,糖尿病、高血圧病、慢性胃炎の病史がある。
2月前,腹の立つことがあってから脘腹脹満を感じ,継いで嗳気が連々と出る。
音は低く沈んでいて,嗳気を発するのがひどくなると,咽喉部に憋阻感を伴い,頻りに喉を鳴らす。

刻診:元気が無く,脘腹は脹満しているが押さえても痛まない。
咽部に梗塞感を伴い,乏力,焦慮や不安感があり,食欲不振。
口は苦くない、渇かず,二便は調い,舌質は淡暗にして嫩,舌体は胖大、辺に歯痕あり,苔は白膩で水滑,脈は沈緩。
これは太陰病に気鬱を兼ねた痰飲と弁証される。

処方は旋覆代赭湯+半夏厚朴湯加味
(旋覆花・半夏・厚朴・茯苓・大棗6 代赭石・人参・蘇梗・蘇葉・甘草3 生姜1)46

4剤を水煎し,日中に3回、夜に1回服した。
上方を服した后,患者の脘腹脹満不適は明らかに減軽し,嗳気も次第に減少した。
咽干不適に梗塞感を伴うのも消失した。
その后加減して又8剤を服したら,諸症は殆ど消失した。
まだ時に上腹部に軽度の痞満があるので,又 附子理中丸を2周続服させた。

この患者は中陽が素虚なるところに,又加えて情志鬱結があり,木横侮土となり,胃が和降を失い,気逆痰阻となったものである。
すなわち中陽虚損に,気逆痰阻の虚実夾雑証である。
病機の重点は中陽虚損にある。
故に旋覆代赭湯の応用に当たっては,代赭石の用量は多すぎてはいけない。
降胃鎮冲を図っても同時に、已に虚損している中陽をこれ以上失わないようにした。

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