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リウマチと四神煎

『中医臨床』v31-4 に、王承徳先生の著作『実用中医風湿病学』から「中国におけるリウマチ性疾患事情―最近の中医の取り組み―」が紹介されています。
日本では馴染みのない処方名です。
リウマチという難病に対して中国ではどう取り組んでいるのか知りたくて少し調べてみました。

四神煎:《験方新編》原著清·鮑相璈 

組成:生黄耆 半斤,遠志肉、牛膝 各三両,石斛 四両,金銀花 一両

用法:生黄耆、遠志、牛膝、石斛を先煎した後,金銀花一両を再入してもう一度煎じる。
服后に両腿が火熱の如くなるのを覚えたら,即暖かく蓋って睡る。
汗が雨の如く出たら,汗出が止まってからタオルで拭き,緩々と被衣を去り,その後は風を避ける。

主治:鶴膝風。
両膝が疼痛し,膝が腫大して,大腿は細く,形が鶴膝に似て,歩履が艱難し,日久しくなれば破潰する証。

功効:扶正養陰祛邪,清熱解毒,活血通利関節。

方解:方剤薬は僅か五味だが,組方には全面バランスを考えてあり,薬簡量大にして,効果絶大である。
黄耆は重用してある,味甘性温,補気の聖薬であり,又善く大風を祛り,并せて固表止汗し,托瘡排膿をする。
気は乃ち血の帥なり,気が行れば則ち血も行り,血が行れば風は自から滅する。
正気が充足すれば,邪は自から除き易く,重用した黄耆は,正気を扶助し以って諸薬を統領して病所へ直達させ,蠲痺除滞し,邪を祛り外へと出す;
牛膝は味苦、酸、性は平,益陰壮陽し,筋骨を强健にし,祛瘀および止瘀となり,善く膝関節の屈伸不利を治す;
石斛は味甘淡,性は寒に偏り,養陰生津して清熱となる;
遠志は味辛、苦微温,心腎を補益し,以って邪気が内伝する路を杜絶して,予め未だ邪を受けていない地を安全にし,又能く祛痰して痛腫を消す;
金銀花は甘寒,清熱解毒の功が頗る佳い,此れにて瘀に因って化熱した関節腫痛を消除でき,且つ黄耆の温熱の性を制約できる。
諸薬を相伍に総観すれば,扶正の功が甚だ强く,祛邪の功も亦具わり,真に補しても滞らず,清しても寒とならず,大汗かいても虚とならず,妙方と称するに堪える也。
‥‥‥

欧陽某某,女,57歳,于2009年4月26日診。
患者は左膝関節が元々痛かったのだが,近年来次第に関節が腫大してきた,其の関節周囲を按ずるとダブダブと波動感があった。
診れば左膝関節が腫大して球のようで,数日前に一度水を抜いたが,歩くには不十分で,左膝関節には少し熱があり,晩には冷えるよし。
舌質は淡紅,苔はやや膩で,脈はやや緩。
鶴膝風に疑いないが,以前よく似た例を治して効が無かった事がある。
その后《験方新編》を読んで四神煎が“鶴膝風”を治すという一法を知り,今はそれを試してみようと思った。

薬用:黄耆250g,遠志・淮牛膝90g,石斛120g,金銀花30g(別包)。2剤。
煎服法:金銀花を除いた外を,水10碗で煎じて2碗とし,再び金銀花を入れ,煎じて1碗とし,睡前に一気に全量を服する。
 
4月28日二診,上の両剤を服した后,素もと汗をかかない体質なのに,晩には僅かながら汗をかいた,だが左膝関節の疼痛及び腫勢は明らかに軽くなり,左足はまだ少し冷えている,舌質は膩,よって前方に防已20g,薏苡仁30g,附片6g,蒼朮15gを加えて3剤を与えて予後とした。

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験案
女,72,游走性関節紅腫疼痛が半年続いている。
初診では双膝の関節の腫痛が主だったので,四剤を与えた后,痛みは肩、肘、腕へと転じた,さらに十六剤の后,諸腫痛は全て消えた。
停薬して一周后に,双腕に紅腫が再発した,舌は淡で水滑,脈は大だが沈取すると無力。

生北黄耆210 石斛90 川牛膝50 遠志50 老鸛草15 穿山竜20 桑枝30 銀花20(后下) 日一剤,水煎して二次に分服する。

二三診も皆此の方を用いた。此の方を服したら風を避けて臥床し微汗出を取るのが佳い。

 病案挙例

病例一:于宏洋,男 35歳,職員,2001年9月15日就診。
患者はこの三年来毎年のように九月になると膝関節が腫大して痛み,屈伸が困難になる。
某医院では滑嚢炎と診断され,毎回発作ごとに中西薬を調治してもらい二ケ月ほどして愈える。
右膝関節が仙鶴の膝頭のように腫大しており,活動は制限され,屈伸が出来ず,動けば疼痛忍び難い。
膝部の皮膚はやや紅く,圧せば痛む。
体温37℃,右膝関節の周径は左膝に比べて1.5cm太い,舌質は紅,苔は薄白,脈は弦数。
辨証は風寒湿邪が内侵して,瘀となり化熱し,気陰両虧となっている。
用法は扶正養陰祛邪,清熱解毒,活血通利関節とする。
法の如く四神煎一剤を服したら,薬后に一時許りして全身から大汗が淋漓とし,二時許りで自然に止った。
次の日の朝、自然に起きて立つことができたので,夢中になって,数回にわたって連服したところ,果して痛くないし,歩くことは自在だし,局部の腫れも七、八割り消えた。
但し行動が長くなると膝関節は軽微に疼痛したので,又両剤を服用し,薬が無くなった頃には腫れも消え痛みも止った。

病例二:張力軍,男,51歳,工人,2002年6月1日来診,
この患者は半年前に右膝部を外傷后に,右膝関節が腫大して疼痛した,某医院で損傷性関節炎と診断され,中西薬が調治されたが今に至るも効が無い。
右腿は湾曲してまっ直ぐ伸ばせず,活動が制限される,膝の周径は健側に較べて1.5cm太い,舌質は紅,苔は薄白,脈は弦細。
症は外傷后に瘀となり化熱し,長引いて傷陰している,また前医が投じた辛温散寒の剤が更に其の陰を傷り,気虚陰虧となっている。
治は益気養陰祛邪,清熱解毒,活血通利関節とし,四神煎を投ずる。
法のごとく煎服させ、薬が両剤服薬し終わったところで,腫脹は大半消退し,疼痛も大いに減り,歩態は平穏となった。
后上法を続用し,薬量を調減しながら,調治すること一月にして正常工作が出来るほどに恢復した。

病例三:梁永柱,男,14歳,学生,2002年8月19日就診。
左膝関節が腫痛して半月余りになる,当地の医院でペニシリン注射をしても無効で,次第に重くなり,立って歩けなくなった。
体温37.3℃,膝関節x線では異常が無い。
左膝は屈曲し,屈伸活動が制限される,腫脹は明らかで,患側の膝周の径は健側に比して2cm太く,双足の第五趾関節の外側も亦腫痛する。
舌苔は紅,苔は薄白,脈は細滑数。
患者の年は14歳でまだ発育の途中であり,まだ陰が不足しているので,六淫の侵襲を被りやすい。
風寒湿邪が関節に留って瘀となり化熱し,関節腫痛等の症となったものである。
治法は益気養陰祛邪,清熱解毒,通利関節。
法の如く四神煎二剤を服用させた。
腫脹の大半は消退し,疼痛は顕著に減軽し,立ってゆっくりなら歩けるようになった,后は益気養陰,養血疏風散寒,兼活血通絡薬を以って,調治すること月余にして,腫れは消え痛みは止り,膝関節の功能は正常となった。

 体会
此の方を服した后、病人は全身から汗が出た,甚しい時は大汗淋漓として3時間にも及んだ。
しかし臨床では必ずしも亡陽することを危惧することはないと験証されている,陳士鐸が《辨証録、鶴膝風》中で云うように黄耆の発汗功用は“黄耆を用いるのは補気をしながら汗を出すことである,乃ち邪汗を発しても正汗を損わざる也……,ただ亡陽しないだけでなく,反って益陽する事が出来る。”黄耆等の薬力を籍りて経脈を通行し,腠理を宣暢し,営衛を充実させれば,陽気は旺盛となり,陰精は充足して,自然に汗が出て,邪を出す,随って汗によって解するのである。
まして心腎を益する遠志と陰津を養う石斛が相伍すれば,万に一つも失敗は無い。

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病例四:患者,女,60歳,退休干部,2004年11月16日初診。
患者は30年前にはっきりした誘因も無いままに双膝関節及び足跟の疼痛が現れた,腫脹は無く,某院でRAと診断され,止痛薬による治療を受けたが,症状の発作を反復している。
左手の2、3指関節が腫痛し,双腕、双肩が疼痛し,双膝関節は腫痛し,口干き,口腔の潰瘍及び皮疹は無く,レイノー現象は無いが,畏寒を自覚し,肢冷,悪風あり,食欲不振で,眠りは取れており,二便も調っている。
左手第2、3指間の関節は腫脹し、圧痛が明らかで,局部の皮温は高く,左肘の屈曲は制限され,双膝の伸直は困難である,右側が重い。
舌は黯,苔は黄,脈は滑数。

処方:生黄耆60 石斛・赤芍・土茯苓・青風藤・金銀花30 遠志・連翹・紅花・莪朮・苦参・貝母10 牛膝・川芎・鶏血藤15 露蜂房・全蝎5。毎日1剤,水煎服。

服薬40余日后,患者は全身の関節の疼痛が明らかに好転するのを自覚し,食欲もつき,眠りは安らかで,手で写字ができるようになり,欣喜の余り手紙をくれた。
原方から青風藤を去り炒酸棗仁12g、丹参15gを加えて,継投すること30剤にして,患者の沈痾の病は明らかに転機を迎えた。

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