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腹脹(慢性B型肝炎)

以前「柴胡桂枝干姜湯に異論あり!」の記事を書きましたが、理屈っぽくて真意を尽くせませんでした。今回は適当な医案がありましたので追加します。

劉某々、男、54歳。
“B型肝炎”に罹っているが、今までは何も苦しむような症状は見られなかった。
最近になって突然「腹脹」が起こり、それも決まって夜間ばかりである。
それが起こると寝ても座してもどうにも苦しくてたまらなくなる。
患者は腹を指さして「夜になると腹が脹りパンパンになります。ゲップも出ず、死ぬほどの思いです。」といいます。
これまでずーっと中西薬を合わせて飲んでいるが効きません。
問えば大便は溏薄で形が無く、毎日三行ある。
便通の回数が増えてからはなお夜間の腹脹がひどくなった。
小便は少ししか出ず、右脇から肩や背にかけて痛みとだるさがある。
脈は弦緩。舌は淡嫩で苔が白滑。
劉老師が云うには、仲景の“太陰の病は腹満して食が入らず下痢がひどい”に当たる。
下痢・腹満・不渇だから、これは太陰に属する。
陰寒というものは夜間に盛んになる、だから夜にばかり発作が起きる。
脈の緩は太陰に属し、脈の弦は肝胆に属する。
脇から肩背は胆脈の通路であるからそこが痛むのである。
太陰の腹満はよくある事だが、これはひどい。
肝胆の気機疎泄が利いていない、それで六腑の昇降が途絶えているのだろう。
劉老師は前後の様子から肝脾を併治するために『傷寒論』の柴胡桂枝干姜湯を選んだ。

 柴胡16 桂枝・瓜呂根・炙甘草10 干姜12 牡蛎30 黄岑4

これを僅か一剤服しただけで夜間の腹脹は半減し、三剤で全消し、しかも下痢までが止まった。

【按語】柴胡桂枝干姜湯は小柴胡湯の変方で、少陽胆熱兼太陰脾寒で「気化不利で、津凝不滋から起きる腹脹、大便溏瀉、小便不利、口渇心煩、脇痛控背、手指発麻、舌紅苔白、脈弦緩等の症に用いられる。
本方は少陽を和解し、兼ねて脾家の寒湿を温める。
大柴胡湯が少陽を和解し、兼ねて陽明胃実を瀉するのとは一実一虚である。
少陽病が脾胃に及ぶも寒熱虚実において違ってくる。

B型肝炎で苦寒清利の薬を長期にわたって服用すると往々にして脾気虚寒を引き起こす。
この時に本方で肝胆を疏利しつつ、兼ねて太陰虚寒を温めるのが良い。
本方の黄岑の用量は少なくして、干姜は大量に用いる。
尿が少なければ茯苓を加え、体虚ならば党参を加える。
これは劉老師の肝炎の常用方である。
            『劉渡舟験案精選』より

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