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臓熱腑寒説と温胆湯

ものが盗まれたと騒ぐ」「ものが盗まれたと騒ぐ2」と論考を進めてきましたが、いまいちピンときません。
これを“妄想”と見ると“胆寒”という概念にぶつかりました。
温胆湯と胆寒」の記事への追補となります。

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肝着(脇痛)

劉某々、女、24歳。
もともと感情が抑鬱気味だったが、右脇の脹痛と胸満を感ずるようになってから2年になる。
医師達は逍遥散や越麹丸などで疏肝解鬱を図ったが効果がなかった。
この数日は脇痛が頻発し、まるで一ヶ所が針で刺されるようだ。
痛む所を手で叩くと少し楽になる。
兼ねて痰涎を嘔吐し、また熱いものが飲みたくなり、飲んだ後は暫時 心胸が緩解する。
舌質は暗、苔は薄白、脈は細弦。
劉老師は“肝着”の証と診て旋覆花湯加味を投じた。

 旋覆花・青葱管・柏子仁・当帰・紫絳香・紅花10 茜草・合歓皮12 絲瓜絡20

服薬すること3剤にして疼痛が起こらなくなった。

【按語】《金匱要略・五臓風寒積聚病脈証并治》には“肝着,其人常欲蹈其胸上,先未苦時,但欲飲熱,旋覆花湯主之。”となっている。
 (肝着とは胸を叩いたり摩ったりすると楽になり、発作時には熱いものが飲みたくなる)
肝着は肝の疎泄機能が失われ、気血が鬱滞し、肝絡に淤積ができて経気が不通となったものである。
本証の提示する二点、“其人常欲蹈其胸上”と“但欲飲熱”から、これは“肝着”の特徴と符合するので旋覆花湯加味を用いた。
 原方は 旋覆花・葱白・新絳 の三味からなるが、狙いは下気散結・疏肝利肺・活血通絡にある。
新絳とは茜草で染めた布だが実際には茜草や紅花で代用する。
本案では紫絳香を加え旋覆花の下気散結の作用を助けている。
当帰・絲瓜絡を加えたのは茜草の活血化淤通絡の作用を助けている。
合歓皮は疏肝利気を、柏子仁は養肝血安神を図っている。
葉天士の“通絡法”の基本は“旋覆花湯”にあり、“久病入絡”の証ではこれにて良効を得る。
            『劉渡舟験案精選』より

※旋覆花は肺経にゆき肺気を下降させる。停滞している肝気を旋覆花の利肺作用(下気散結)を助けにして肝自らは上昇しようとする。かくして脇の気は昇降を得て停滞を免れる。

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左金丸と胃炎(酸水を吐く)

左金丸《朱震亨・丹渓心法》は黄連、呉茱萸の二薬を組成とする。
原方では黄連と呉茱萸の比は6﹕1である。
黄連は苦寒で心に入り,清熱瀉火;これに対して反佐薬の呉茱萸は辛熱で肝に入り,温中降逆となり,黄連の寒を制する。
組方の立論は五行の相生理論によるものである。
実すれば則ち其の子を瀉す”で,肝火が旺ずれば其の子の心を清するの意である。
肝胃鬱熱の胃脘嘈雑,灼痛,呑酸,嘔吐,口苦等の症状の治療に用いられる。
沈舒文は臨証運用には二者の比を2﹕1としている。
黄連は5~6g,呉茱萸は3~4g,并せて常に制刺蝟皮15~20gを配して化瘀止痛,収渋制酸を図っている。
消化性潰瘍、慢性胃炎で泛酸(吐酸水)の甚しい者に対して良好な作用がある。
胃脘隠痛,灼熱,口干,飢えているのに食を欲しない者を,沈舒文は湿熱傷胃陰と考えて,常に滋胃湯(太子参、麦冬、石斛)を配している。

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腹脹(慢性B型肝炎)

以前「柴胡桂枝干姜湯に異論あり!」の記事を書きましたが、理屈っぽくて真意を尽くせませんでした。今回は適当な医案がありましたので追加します。

劉某々、男、54歳。
“B型肝炎”に罹っているが、今までは何も苦しむような症状は見られなかった。
最近になって突然「腹脹」が起こり、それも決まって夜間ばかりである。
それが起こると寝ても座してもどうにも苦しくてたまらなくなる。
患者は腹を指さして「夜になると腹が脹りパンパンになります。ゲップも出ず、死ぬほどの思いです。」といいます。
これまでずーっと中西薬を合わせて飲んでいるが効きません。
問えば大便は溏薄で形が無く、毎日三行ある。
便通の回数が増えてからはなお夜間の腹脹がひどくなった。
小便は少ししか出ず、右脇から肩や背にかけて痛みとだるさがある。
脈は弦緩。舌は淡嫩で苔が白滑。
劉老師が云うには、仲景の“太陰の病は腹満して食が入らず下痢がひどい”に当たる。
下痢・腹満・不渇だから、これは太陰に属する。
陰寒というものは夜間に盛んになる、だから夜にばかり発作が起きる。
脈の緩は太陰に属し、脈の弦は肝胆に属する。
脇から肩背は胆脈の通路であるからそこが痛むのである。
太陰の腹満はよくある事だが、これはひどい。
肝胆の気機疎泄が利いていない、それで六腑の昇降が途絶えているのだろう。
劉老師は前後の様子から肝脾を併治するために『傷寒論』の柴胡桂枝干姜湯を選んだ。

 柴胡16 桂枝・瓜呂根・炙甘草10 干姜12 牡蛎30 黄岑4

これを僅か一剤服しただけで夜間の腹脹は半減し、三剤で全消し、しかも下痢までが止まった。

【按語】柴胡桂枝干姜湯は小柴胡湯の変方で、少陽胆熱兼太陰脾寒で「気化不利で、津凝不滋から起きる腹脹、大便溏瀉、小便不利、口渇心煩、脇痛控背、手指発麻、舌紅苔白、脈弦緩等の症に用いられる。
本方は少陽を和解し、兼ねて脾家の寒湿を温める。
大柴胡湯が少陽を和解し、兼ねて陽明胃実を瀉するのとは一実一虚である。
少陽病が脾胃に及ぶも寒熱虚実において違ってくる。

B型肝炎で苦寒清利の薬を長期にわたって服用すると往々にして脾気虚寒を引き起こす。
この時に本方で肝胆を疏利しつつ、兼ねて太陰虚寒を温めるのが良い。
本方の黄岑の用量は少なくして、干姜は大量に用いる。
尿が少なければ茯苓を加え、体虚ならば党参を加える。
これは劉老師の肝炎の常用方である。
            『劉渡舟験案精選』より

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耳管開放症

9月12日のTV「ためしてガッテン」では耳管開放症がテーマでした。
原因不明でストレスも要因の一つか、という結論でした。
私に少し異論があります。
飛行機の離着陸時は勿論のこと、エレベーターの昇降でも殆どの人が耳閉を感じています。
こういう分かりやすい事例を取り上げれば原因が気圧による血行障害であることは歴然としているではありませんか!

中医学でも耳管開放症(咽鼓管異常開放)について弁証論治していますが、その一つに“気滞血瘀”を取り上げています。
気滞血瘀を起こしたのは 頭や体の立居姿勢の変更であったり、エレベーターの昇降であったり、ちょっとしたきっかけが突発的な血行障害を起こしているのだと思われます。

これに対して《医学凖縄六要》では“通気散”を用いるとあります。
通気散《医林改錯》(柴胡・香附子6 川芎3)を基本にして、ほかに小茴香・木香・延胡索・石菖蒲や人参・甘草・陳皮・白僵蚕等を必要に応じて加味しています。

処方内容を見れば 芳香性の薬味(芳香性は血分にゆく)で何か阻塞する原因物を発散させ、気滞血瘀を去ろうとしています。
こうすることで耳竅の経脈は貫通し、経気が通るようになり耳閉は解消するのです。
結果として「行気活血通竅」が達成されたのです。

蛇足ながら、一部では「耳管開放症に加味帰脾湯エキスが有効」だという事でエビデンスも取られています。
それはそれで結構ですが、漢方や中医学の立場から考察してゆくならばこうもなろうかと愚考しました。

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舌麻

銭某々、女、66歳、内蒙古人。1995/04/26 初診。
16年前から高血圧性冠心病にて中西薬治療を受けている。
この一年間は病状が重くなり、血圧160/100mmHg、眩暈、心悸、胸悶、背中が重い、不眠、口乾、手足の振るえ、もっとも奇妙なのは舌麻が甚だしく五味を感じないことだ。
舌は大きくて紅く、苔が白滑、脈が沈。

これをミスって心陽虚弱・水寒の邪が上冲してものとみなし、苓桂朮甘湯を14剤も使ったものだ。
胸悶、心悸、背中が重いのは軽減したが、舌麻は増々ひどくなり、血圧は高くなり、眩暈、不眠、心悸、口乾、手足の振るえも悪化した。
舌は紅く無苔で、脈は沈細無力に変わった。
これは陰虚に、手の厥陰風火上燔の勢いが加わり、陰虚風動となったものである。
急ぎ滋陰潜陽熄風の法を取らなければならない。

三甲復脈湯加味
 麦門冬・白芍・酸棗仁・牡蛎10 生地・太子参7 鼈甲・炙甘草5 亀板4 阿膠・五味子3 桂枝1

七剤にて漸く舌麻は半減し、便通があり、眩暈、不眠、心悸、口乾も減った。
舌麻は夜明け頃に感じる。
夜明けに発するのは陰虚陽動なり
なお上方を30余剤用いて舌麻はしなくなり、血圧は120/80mmHgに安定した。
次いで羚羊鈎藤湯と黄連阿膠湯を交互に飲ませて善後を図った。

【按語】本案の舌麻は厥陰陰虚のため肝木を涵養することが出来ず、水は火を制御せず、陰は陽を潜めず、風陽が発動した現象である。
三甲復脈湯とは復脈湯(炙甘草湯)に三甲(牡蛎・鼈甲・亀板)を加えたものである。

注意を要するのは脈が沈細無力を呈した事から、この心臓病史には心陽不足の一面もあった事である。
そこで方中に太子参・桂枝などの甘温の品を加えたのである。
            『劉渡舟験案精選』より

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鼻淵(慢性副鼻腔炎・ちくのう症)

韓某々、女、38歳。
もう20年近くも鼻が詰まり濁涕が流れるのが続いている。
大学病院では慢性副鼻腔炎と診断され、薬治を受けていたが効果が無い。
手術を勧められたが嫌で1995/09/20に私の所へやってきた。
鼻塞流濁涕、臭いが分からぬ、頭から眼窩へかけて圧痛があり、感冒の度に重くなる。
夜寝ていると鼻が詰まり息が出来ず口呼吸をするので睡眠にも影響が出ている。
兼ねて咽喉がすっきりせず、咳嗽とともに黄痰を吐く。
舌苔は白く、脈は浮弦。
脈と証を合わせて風熱が脳へ上攻したものと弁証される。
風熱を疏散し、鼻竅を通利しなければならない。
処方:
 川芎・白芷・清荼5 半夏6 荊芥・防風・羌活3 細辛1.5 薄荷(後下)1 石膏10  七剤。

2診: 鼻塞流濁涕は顕著に軽減した。
夜も鼻呼吸ができ、痰を吐くことも無くなった。
荊芥・防風・羌活 を5g に増やし、金銀花・連翹5 を追加する。

【按語】足太陽の脈は目の内眦より起こり、額から脳へと上がる。
足の陽明胃経は同じく鼻より起こり前頭の太陽の脈へと傍納する。
故に風邪が襲い太陽が邪を受ければ肺気が壅塞する。
或いは陽明の邪熱は経をたどって上攻する。
いずれにしても鼻塞不通となる。
外では太陽の風邪を散らし、内では陽明の邪熱を清するのが治療法である。
川芎荼調散を用いるのは風邪を疏散し、肺気を宣利する意味である。
生石膏を加えれば陽明に直入し、邪熱を解する。
半夏を加えれば痰濁を化する。
            『劉渡舟験案精選』より

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気虚発熱

馬某々、女、74歳。1993/7/21初診。
午後から38℃前後に発熱する。
食欲は無く、腹の中が熱い。
その熱感は背中と大腿部へと放散している。
掌心の熱は手背の熱よりもひどい。
呼吸が速く疲労が激しい。
口の渇きは無く、腹は張らず、二便はまだ普通にある。
舌質は赤く、苔薄白く、脈は大で力が無い。
劉老師は気虚発熱と弁証した。

病機は脾虚により清陽が下陥し、昇降が失調したため東垣の云う“陰火上乗土位”になっている。
この種の内傷発熱には東垣の“甘温除大熱”の法が当たるべきである。

処方は 補中益気湯加生甘草 とする。
 黄耆20 党参15 白朮・当帰12 陳皮8 柴胡6 炙甘草・生甘草5 升麻3 生姜三片 大棗12枚

五剤を服して食欲が出、体力がつき、午後から発熱しなくなり、腹中の熱感は大いに減じた。
続けて五剤を服し、腹中の熱感もしなくなった。

【按語】これは脾胃気虚により昇清降濁ができず、陰陽が失調した内傷発熱に当たる。
『内経』にこのような病機は既に認識されている。
『素問・調経論』に「陰虚で内熱を生ずるのは何故か?」との問いに対して、岐伯は「労倦ありて形気が衰え、穀気が入らなければ上焦は行らず、下脘は不通となる。そうすれば胃気は熱し、熱気が胸中にこもるから内熱となる。」
ここでの“陰”とは“内”の意味であり、内傷気虚の発熱証の事である。
東垣はこれを“陰火上乗土位”と理論づけている。
当に甘温薬を用いて「補を以って瀉となし、昇を以って降となす」のが治療法である。
生甘草を加えるのは補脾気の中に瀉心火の意味をこめている。
           『劉渡舟験案精選』より

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ものが盗まれたと騒ぐ2

先に「心血が不足すると神気が養われない」タイプを心脾両虚の疑病としましたが、更に考察を加えてみます。

益気聡明湯《医方集解》には次のように記載されています。

「五臓は皆気を脾胃から禀けて,以って九竅に達する;煩労により中(脾胃)を傷れば,冲和之気(陰陽調和の気)が上升できず,故に目は昏くなり耳は聾する也。」

これは耳目を治すには大本の脾胃から“冲和之気”が上昇する事が出来るようにするのが根本治療であるといっています。

「十二経の清陽之気は,皆頭面に上り空竅へ走る,飲食労役に因り,脾胃が受傷すれば,心火は太盛となり,百脈は沸騰して,邪が空竅を害する。」

脾胃が受傷すれば心火は太盛となるというのは、いわゆる“陰火升騰”のことである。

物が盗まれるという被害妄想はこの陰火のなせる業です。
これを治すには脾胃を治す以外に方法は無い。

益気聡明湯加減治療老年性痴呆
療法提供:上海市第八人民医院 洪慶祥
治療方法:

益気聡明湯:(黄耆10 党参・葛根・蔓荆子・白芍・黄柏4 升麻3 炙甘草2)35

随証加減:
腎陰虚明顕加女貞子、旱蓮草、枸杞子、玉竹;
腎陽虚明顕加補骨脂、仙霊脾、巴戟天、南燭葉;
瘀湿明顕加桃仁、紅花、陳皮、半夏;
心悸失眠加酸棗仁、合歓皮、煅竜歯;
肢体不遂偏瘫加地竜、白僵蚕、水蛭;
腑気不通便秘加生首烏、望江南、火麻仁。
‥‥‥

老年になれば先天の気が衰えていくのは避けられません。
昔は健忘症はあっても痴呆症などというものはありませんでした。
先天の気の衰えだけではこの問題は解けません。
痴呆症には後天の元気が大きく関わっていると予想されます。
益気聡明湯は中気不足・清陽不升・孔竅失養の証の治療に有効だというところからトライする価値があるのではないでしょうか。

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インフルエンザと麻黄湯

漢方を標榜する医師の中に、インフルエンザに対して麻黄湯エキスを使う方があります。
目に余るケースを見るにつけ、敢えて云わせて下さい。
この時にエビデンスやマニュアル以外に漢方的な理論をも考慮して欲しいのです。

【症例】 傷寒表実証
劉某々、男、50歳。
冬の最中に戸外で作業をしていたら寒気を感じ、夜になって39.8℃の発熱になった。
悪寒はますますひどくなり、いくら布団を被っても震えが止まらない。
全身の関節は全て痛み、発汗は無く、肌は火照り、咳嗽が出始めた。
舌苔は薄白く、脈は浮緊で力強い。
これは太陽病、傷寒表実の証である。
『傷寒論』にいわく、“太陽病、或いは既に発熱しているか、或いは未だ発熱していなくとも、必ず悪寒ありて、体が痛み嘔逆する。脈が陰陽(強く圧したり弱く圧したりしても)共に緊であれば傷寒である。”
治療法は辛温発汗・解表散寒で、処方は麻黄湯を用いる。

 麻黄9 桂枝6 杏仁12 炙甘草3 一剤。

服薬後は布団を被り温かくしていたら直ぐに全身から発汗をみて解表した。

【按語】太陽表実証とは衛陽が遮られて体表を守らず、それを補う営陰も欝滞して届かずというものである。
このために無汗にして喘し、悪寒して頭身疼痛するという表実の証候になる。
本方は発汗解表を行うことが出来る。
即ち肺衛が体表で働き、奥にある営陰がこれを補うようになるので寒邪を汗とともに外へ出させることになる。
麻黄湯は発汗剤の中でも俊剤である。
もしこれが妥当でなければ副作用が起こる。
それでかなりの(中国の)医師は麻黄・桂枝を怖がって使わない。
そうかといって、発熱とみれば温熱の証だとみなして辛凉性の薬草を乱用すれば、却って表寒の邪を閉じ込めてしまって、変じて咳や微熱や咽イガなどになる。
表実の証の“発熱”とは衛陽が閉じ込められて正邪が争う故に発するもので、その発熱には必ず悪寒を伴う。
これに対して温熱病の発熱には悪寒が無いし、口渇などの傷津の候があるから本質的に違う。
風寒の邪が衛陽を閉じ込めるのだから辛温発汗の方法を取るのです。
寒邪が汗によって外へ出れば、閉じ込められていた衛気は一気に通じて発熱は自然に退いてゆきます。

麻黄湯の使用で注意しなければならないのは、桂枝・甘草よりもかなり大量を使わなければならない事です。
そうしないと発汗解表の目的を発揮することが出来ません。
もう一つは、麻黄だけを先に煎じて、上沫を取り去ることです。
そうしないと患者さんに心煩を起こさせる事になりかねません。
           『劉渡舟験案精選』より

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腎人工透析の前に

病院で腎透析を薦められている、漢方でクレアチニン値を下げられないか、という質問があります。
大変難しい問題ですが、ひとつの方法があります。
それは腎機能障害を腎臓だけの問題としないで他の臓器との関係から補佐できないかと考える事です。
中医学理論では腎臓といわないで“”と呼び、整体としての人体、その中の一環として五蔵を考えます。
腎が弱ったら、その母である肺を頼るという手があります。
同じく、その子である肝からも援助が求められます。

古い“関格”という病名には小便閉・嘔吐の二症状があり、腎不全を指しています。
これは「腎の気化作用が障碍され、濁邪が三焦に壅滞して正気が下降できない」ために起こる危候であるとしています。
腎の気化というのは腎の濾過機能を指し、濁邪というのはクレアチニンや尿素窒素などの代謝産物を指しています。
この代謝産物の体内瀦留を避けるために腎透析が行われるのですが、これの辛さは周知の事です。

そこで腎の母である肺に何か出来る事は無いか、と考えてみます。
肺気が清粛であれば、その降気作用によって津気は下行して腎を滋す
つまり「金生水(肺生腎)」の理論です。
その肺の清気を遮って途中で止めているのは何だろうか?

大きな壁が“(横隔膜)”です。
心下痞(みぞおちの痞硬)」という症状として現れます。
心下痞には半夏瀉心湯(半夏・黄芩・干姜・人参・甘草・黄連・大棗)という有名な処方があります。
これを加減して腎機能障害に応用した一例が『中国名医特技精典』にありました。

方淑媛 王暁明 遼寧省沈陽市紅十字会医院
●半夏瀉心湯合保元湯
基本方: 黄耆、人参、半夏、干姜、大黄、黄芩

加減: 腎陽虚加附子,肉桂温補腎陽。
脾虚加白朮健脾燥湿。
浮腫尿少加茯苓、牛膝: 補益心気利湿。
皮膚接痒加白鮮皮清熱止痒。

いつか腎機能障害に使ってみたいと思っています。
‥‥‥
かつて、温脾湯《千金要方》(大黄12(後下)、附子9(先煎)、乾姜6、人参9、炙甘草3)という処方が人工透析導入前の患者さんに試されて時期の遅延効果があると報告されたことがあります。

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