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インフルエンザと麻黄湯

漢方を標榜する医師の中に、インフルエンザに対して麻黄湯エキスを使う方があります。
目に余るケースを見るにつけ、敢えて云わせて下さい。
この時にエビデンスやマニュアル以外に漢方的な理論をも考慮して欲しいのです。

【症例】 傷寒表実証
劉某々、男、50歳。
冬の最中に戸外で作業をしていたら寒気を感じ、夜になって39.8℃の発熱になった。
悪寒はますますひどくなり、いくら布団を被っても震えが止まらない。
全身の関節は全て痛み、発汗は無く、肌は火照り、咳嗽が出始めた。
舌苔は薄白く、脈は浮緊で力強い。
これは太陽病、傷寒表実の証である。
『傷寒論』にいわく、“太陽病、或いは既に発熱しているか、或いは未だ発熱していなくとも、必ず悪寒ありて、体が痛み嘔逆する。脈が陰陽(強く圧したり弱く圧したりしても)共に緊であれば傷寒である。”
治療法は辛温発汗・解表散寒で、処方は麻黄湯を用いる。

 麻黄9 桂枝6 杏仁12 炙甘草3 一剤。

服薬後は布団を被り温かくしていたら直ぐに全身から発汗をみて解表した。

【按語】太陽表実証とは衛陽が遮られて体表を守らず、それを補う営陰も欝滞して届かずというものである。
このために無汗にして喘し、悪寒して頭身疼痛するという表実の証候になる。
本方は発汗解表を行うことが出来る。
即ち肺衛が体表で働き、奥にある営陰がこれを補うようになるので寒邪を汗とともに外へ出させることになる。
麻黄湯は発汗剤の中でも俊剤である。
もしこれが妥当でなければ副作用が起こる。
それでかなりの(中国の)医師は麻黄・桂枝を怖がって使わない。
そうかといって、発熱とみれば温熱の証だとみなして辛凉性の薬草を乱用すれば、却って表寒の邪を閉じ込めてしまって、変じて咳や微熱や咽イガなどになる。
表実の証の“発熱”とは衛陽が閉じ込められて正邪が争う故に発するもので、その発熱には必ず悪寒を伴う。
これに対して温熱病の発熱には悪寒が無いし、口渇などの傷津の候があるから本質的に違う。
風寒の邪が衛陽を閉じ込めるのだから辛温発汗の方法を取るのです。
寒邪が汗によって外へ出れば、閉じ込められていた衛気は一気に通じて発熱は自然に退いてゆきます。

麻黄湯の使用で注意しなければならないのは、桂枝・甘草よりもかなり大量を使わなければならない事です。
そうしないと発汗解表の目的を発揮することが出来ません。
もう一つは、麻黄だけを先に煎じて、上沫を取り去ることです。
そうしないと患者さんに心煩を起こさせる事になりかねません。
           『劉渡舟験案精選』より

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