心の病気を漢方で治せるか?
‥‥‥
次に中山英子氏の論説の一部の要略を転載します。
-宇宙のリズムに呼応する内臓波動-
「内臓の復興」「内臓の声に耳を傾けよ」「内臓の感受性を大切に」ということを三木成夫はいっているが、その理由は人の目につかないところで、昼も夜も休むことなく黙々と働きつづける内臓系こそが“本”で、睡眠という休みを取らなければならない脳神経や感覚器は“末”であるという発生学的な観点からです。
私たちの消化管の祖先は、五億年以前に現れた海綿動物やクラゲなどの腔腸動物に始まり、魚たちや両生類の脊堆動物の時代を経て哺乳動物の出現から六千四百万年の歴史がある。消化管には億の記憶が秘められている。「内臓の復興」が実はそのまま「心情の涵養」につながる、と三木成夫は説いた。
腸の超能力については消化吸収という事自体が「自己」と「非自己」を区別する免疫そのものである故、「食べる」という行為が運動と同じ位い重要なことである。静脈栄養法では腸に食物が入って来ないので消化管ホルモンが出なくなり、胃腸の壁は紙のようにうすくなり、膵臓も見るかげもなく小さくなってしまう。
‥‥‥
逢沢 堅 『おかねのかたち』
第三章 ヒトのかたちは生物史とともにできてきた
第一節 ヒトは心の目覚めた動物である
-心とは内臓のはたらきのことである-
神経系の一部である頭の極端な発達によって、ヒトは内臓のはたらきを心の動きとして感じ取るようになった。
たとえば、膀胱に中身が詰まると収縮するが、感覚はこれを不快の心情としてとらえる。逆にこの収縮がとければ、これを快の心情としてとらえる。空腹・酸欠・膀胱や子宮の充満などの〝内臓系の切迫〟は、神経系によって伝達され漠然とした不快感として表出される。‥‥‥内臓系の切迫は、いつも漠然とした無明の心情として、曖昧で靄につつまれた情感としてわたしたちに受け取られる。‥‥‥無意識下に沈んだままである。
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Comments
(2012/10/11 読売新聞 )呼吸生理学が専門の昭和大医学部教授 本間生夫氏の観察では、観世流能楽師の梅若猶彦さんが能の「隅田川」で我が子を亡くした母親を演じた直後に呼吸の変化を調べると、激しい身体運動は伴っていないのに、悲しみの表現によって呼吸が激しく乱れていた。
ここにも「悲しみの感情と肺呼吸との関連性」が述べられています。「心の病気」を内臓からもアプローチできるのではないかという一つの根拠になるのではと思います。
Posted by: youjyodo | 2012.10.11 11:41 AM
心臓の拍動、血管の拡張・収縮、発汗の過多は、いずれも自律神経を介して脳からコントロールされていると聞いたことがあります。脳の中の植物的機能を司る部分があり、そこが自律神経を介して内臓機能を調節しているそうです。
そして、心の病気に使われる薬の多くは、植物的機能を司る脳部位への作用を持つようです。
脳と体、感覚と感情、などなど、単純に二分して考えるのは危険かもしれません。
Posted by: kgh02362 | 2012.10.24 09:31 PM