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苦心の論考

《傷寒論》の辨太陽病脈証并治の(6条)は次の様になっています。
「太陽病,発熱而渇,不悪寒者,為温病。若発汗已,身灼熱者,名曰風温。風温為病,脈陰陽倶浮,自汗出,身重,多眠睡,鼻息必鼾,語言難出,‥‥‥」
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ここで疑問になるのは「温病にも太陽病期はあるのか?」という事です。
温病といえば「衛気栄血」が弁証の基準ではなかったか。
太陽病とは傷寒病についての、太陽・陽明・少陽・・と続く六経病期の一つではないのか。
(1条)には既に「太陽之為病,脈浮,頭項強痛而悪寒。」と傷寒/太陽病の定義が出来ている。
(6条)の温病/太陽病だと「発熱而渇,不悪寒者」で、これでは同じ太陽病とは云えない。
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この疑問は既に昔からあるようで、簡単に後人の攙入文として無視している例もあります。
しかしまともに受け取って苦心の論考をしている人もいます。
張錫純もその一人です。
《医学衷中参西録》の「5.太陽温病麻杏甘石湯証」には次の様に云っています。
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《傷寒論》(63条)発汗后,不可更行桂枝湯,汗出而喘,無大熱者,可與麻黄杏仁甘草生石膏湯。
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この条文と(6条)を比べると、「発汗后(63条)」「発汗已(6条)」は同じ。
「喘(63条)」「鼻息必鼾(6条)」は同じ。(口息から出るのは喘で,鼻息から出るのは鼾)
「無大熱(63条)」「灼熱(6条)」は同じ。(灼熱は外表にある熱で,無大熱とは心中に熱が無い状態を指す)
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双方の条文は同じような並び方をしている事が分かる。
だから(63条)は温病の提綱の通りで、麻杏甘石湯は温病を治す方剤である。
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かくて中風(2条)・傷寒(3条)・温病(6条)の三大提綱が篇首に並んでいるのであり、仲景は各経の病証を誤服することの無きようにと意図したものと張錫純は云う。
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※果たして真実はどうなのか?
この記事は「温病は太陽病なのか」という『経方医の幻日記』にほだされて調べたものです。

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乾癬の考察2

蒲徳甫医案:王某某,男,13歳,1986年6月23日診。
父の説明:吾が児は1月前に発病しました,始めは全身に紅色疹が出て痒く,次第に拡大して片状になりました,表面には白屑があり,痒さも劇しくなりました。
当地では“湿熱”として10日間治療されましたが効果がありませんでした。
全身には大小さまざまの融合した斑片があり,地図状を呈し,境界ははっきりとして,周囲には炎症性の紅暈があり,基底には浸潤があります。
表面には多層の銀白色鱗屑が被覆しており,軽く擦って鱗屑を去ると紅色の光った薄膜があり,薄膜を去ると露珠状の小出血点が見えます。
患児は肥胖体で,脈象は滑数,舌尖が紅,苔は白膩。
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診断:銀屑病(乾癬)
処方:苓桂朮甘湯加味
(茯苓13 桂枝・白朮・炙甘草3 土茯苓7)29
1日1剤,水煎して三服に分けて温服する。
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服すること5剤にして,掻痒は已に減りはじめ,鱗屑は薄くなった,基底の浸潤もやや軽くなり,周囲の紅暈も淡くなった。
脈は滑で苔は白膩である,原方より土茯苓を去り,地膚子5gを加える。
継服すること20剤の后,痒さが微かになり,基底は淡紅,鱗屑は減少し,皮疹は縮小して平たくなった,脈は滑,苔白だが津液が多い。
上方より地膚子を去る。
服すること20剤の后,躯干及び上肢の皮損処の鱗屑は消除し,炎症の浸潤はなく,褐色斑が遺留している。
頭部及び下肢の皮損には微薄鱗屑が被覆しており,微かに痒い,脈は滑,苔は白潤。
上方に丹参3gを加える。
再服すること10剤の后,頭部及び下肢の皮損は消失して,浅褐色班を留めている,躯干及び上肢の皮色は正常である。
上方を又10剤進めて,痊愈とした。
次の年、頭部に原皮損が復現し,脱屑,発痒したが,苓桂朮甘湯加首烏3g,15剤で愈えた。
         (四川中医51990;(12):45)
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按:脾は水穀を運化し精微とし,肌膚を長養する。
脾が健運を失せば,精微は肌膚に与えられず,反って飲と化す。
本案は内に水飲ありて,外の肌膚が津虧となり,久しくして生燥化風したため,痒癬を発生した。
故に舌尖は紅くても、脈は滑数で苔は白膩だった。
治病には本を求める,苓桂朮甘湯を選用して健脾化飲し,土茯苓を加えて清熱解毒とする。
飲が去れば津布して,肌膚は養を得て,痒癬は自ずと消えた。

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痤瘡(にきび)と柴胡加竜骨牡蛎湯

柴胡加竜骨牡蛎湯は《傷寒論》にあり,仲景は専ら傷寒にて誤下し表裏倶病・虚実互見の変証を形成した時に用いている。
すなわち“胸満と煩驚があり,小便は不利で,譫語し,一身尽く重く,転側できない者”を専治すると。
これは少陽病といっても足の少陽胆経だけでなく手の少陽三焦経にも症状が及んでいるのに注意しなければならない。
にきびの成因を「三焦気滞・寒湿不化の“津停”から久鬱化火へと移行する状態」とみた痤瘡の治療に応用した例です。
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《素問·生気通天論》に説く:“汗出でて湿となれば,乃ち痤疿を生ず……労汗して風に当れば,寒がせまると液は固まり鼓となり,鬱して痤となる。”
張介賓の説:“形労して汗出で,坐臥して風に当れば,寒気がせまり,液は凝まりて鼓となる。”
王肯堂は旋覆花丸を用いると主張し,《医宗余鑑》では枇杷清肺飲を用いると主張している,帰納するところは均しく散風・宣肺により治すのだが,これを用いても臨床では効かないことが多い。
本病は腎気旺んな青年男女に多発する,彼らの多くは木形の体質で,痤は湿っているものが多い,故に柴胡加竜骨牡蛎湯を試用させたところ,服薬后は果然として桴鼓の如くに効き,霍然として愈えた。
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例:高××,男。22歳。
面、頚、胸部に痤瘡ができて3年以上になる,久治して効なく,この半年来は更に重くなった。
面・頚・胸には大量の丘疹が散在あるいは密集している,あるものは黒色で,あるものは鮮紅色,またあるものは暗紫色,あるものは針頭大で,あるものは豌豆大,ひどくなると桜桃大,あるものは白色膿点を併発し,あるものは数个の結節が密集しており,顔面は赤く,頭暈や頭痛あり,心煩して口苦く,舌苔は白く,脈は弦である。
証脈を合参すれば,肝鬱化火・営衛失調・湿鬱不化と診断される。
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柴胡加竜骨牡蛎湯加減(柴胡・半夏・黄芩・党参・桂枝・茯苓3 大黄・甘草2 生姜1 大棗・竜骨・牡蛎5)38
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服薬3剤にして,面部の痤瘡は稍減り,6剤の后には,面部の痤瘡は消失し,胸・頚部のものも好転した。
又服すること6剤(前后15剤)で,胸・頚部の痤瘡は消失して愈えた。
ただ頭痛と頭暈は減ったが未だ瘳えていない。

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乾癬の考察

●従来の見解では血熱が原因とされていた
明代の《医学入門》には銀屑病(乾癬)の病因は、金元時代の火熱内因説に,外感による風・燥説を併せて,曰く:“疥癬は皆 血分熱燥ありて,風毒が皮膚に着いたものである,浮浅なれば疥となり,深沈なれば癬となる。”
近現代の医家の多くも同じ観点である,
趙炳南は銀屑病の発生には血熱が鍵となっている;
朱仁康は血分有熱が銀屑病の主要原因である;
周鳴岐等は銀屑病の多くは素体血熱と風邪外襲が相合わさって発病し,病久しくなると陰血を耗傷し,陰虚血燥,肌膚失養となる;
禤国維は病因には風・熱・寒・湿・燥及び七情内傷があり、飲食失節等も因素である,だが根本原因はやはり機体の陽熱偏盛である。
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そこで“凉血散血”が治療法とされていた。
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指迷茯苓丸は肩周炎の神方

各家の医案・治療を読むと肩周炎の多くは寒凝血瘀と論治しているが、効果は極めて緩慢である。
私はこれまでに色々な方法を試したが皆どれも意に反した。
たまたま《医学心悟》の<肩背臂膊痛>一章を翻いていたら、そこに云く「肩臂痛は古方では茯苓丸を用いる。痰飲の患也。」と。
そこで重ねて《方剤学》を開き、茯苓丸の一節を読んで忽然と大悟した。
(人参・茯苓・桂心・橘紅・半夏・干姜・白朮・枳穀・甘草)
"両臂が疼痛し、手が上へ挙がらなかったり左右へ動かせなかったり、両手が疲れやすく、四肢が浮腫んだりする。舌苔は白膩、脈は沈細か弦滑。" 即ちこれ"痰停中脘の証なり。"
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果たして試してみると、これがよく効く。
更に理中湯を加えて温化痰湿を、姜黄を加えて諸薬を引いて肩部へ達せしめれば、効は桴鼓の如く、五例を治療して皆五剤を超えずして癒えた。
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例: 徐莫 女 70歳。
左肩周炎。肩部が明らかに萎縮して水平で30度しか挙がらず、疼痛のため夜は眠れない。
舌淡、苔白濁、脈滑。
病程は半年以上もさかのぼる。
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処方:(茯苓4 枳殻・干姜・姜黄・半夏3 党参5 白朮8 炙甘草2 芒硝1)32    五剤
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たった四剤の服用で肩関節はもう恢復した。(腹瀉が一度あった)
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        治肩周炎的经验方より

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迎風流涙と苓桂朮甘湯

私も寄る年波です、海岸を散歩する時に寒い風に当たると眼から涙が溢れてきます。
何故だろうと長らく考えてきましたが分かりませんでした。
肝腎陰虚だからだろうと、過去に滋陰止泪湯や験方止泪湯などを試してみましたが効果はありませんでした。
この度ある治験例が目に付き、ハタと思い当たるものがありましたので紹介します。
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王某某 ,男,54歳。
両眼からひとりでに流泪する。
眼屎が多い,反復1年経つが愈えない。
検査では異常無し,涙腺を洗ったり眼薬を外用したが無効。
また復方丹参片・杞菊地黄丸を服しても変わらず。
舌苔薄白く,脈は細。
気虚失固と辨じて,[黄耆20g,党参15g,白朮・谷精草・桑椹子各12g,升麻・当帰各10g] を5剤投じても症状に改善なし。
いつも飲酒后や辛辣なものを食べるとひどくなる。
時に畏寒あり,頭には重脹感がある。
舌苔はやや白膩 ,脈は細滑。
此れは陽気虚で,眼絡に寒湿凝阻がある。
改めて苓桂朮甘湯加減を投じた。
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処方:(桂枝4 茯苓・白朮・木賊草5 黄耆7 制南星・羌活3 紅花2)34
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3剤の后 流泪は明らかに好転した。
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上方に加 桑葉3 夏枯草4g,3剤にて愈えた。
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按: 本例の患者の流泪を,筆者は初めは気虚失固と思って用薬したが無効だった。
細かく辨じると畏寒,頭重脹,舌苔白稍膩,脈細滑などがある。
これは明らかに風寒外擾,陽気内虚のため,清陽失升,痰湿内凝,阻滞眼絡の証となって流泪している。
処方は苓桂朮甘湯去甘草にて,温陽化飲・祛寒湿を,羌活・南星を加えて祛風痰を,黄耆にて益気を,木賊草・紅花にて清睛通絡を図り,諸薬を合用して収効した。

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苓桂朮甘湯と心筋梗塞

水心病(冠心病)
劉渡舟医案:陸某某,男,42歳。
形体が肥胖しており,冠心病 心筋梗塞で入院2ケ月余になるが,まだ功効なし。
心胸疼痛,心悸気短,多くは夜晩に発作がある。
発作の時は気が咽喉に上衝するのが自覚され,気息が窒塞する感じで,時には呼吸ができず全身から冷汗が出て,死ぬんじゃないかとさえ思う。
頚旁の血脈も又気に随って上衝し,心悸と脹痛が続く。
舌は水滑でしたたるよう,脈は沈弦,たまに結象がある。
水気凌心・心陽受阻と辨じられ,血脈不利の“水心病”である。
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処方:(茯苓10 桂枝4 白朮・炙甘草3)20
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此の方を服すること3剤,気衝は平となり,心神は安んじ,諸症は明らかに軽減した。
但し脈がまだ結帯し,畏寒肢冷等の陽虚の証がある。
上方加附子3,肉桂2,以って心腎四気を回復する。
服すること3剤にて手足は温かくなり,悪寒せず,かくして心悸気短は全愈した。
再び上方中に党参・五味子3 を加えて,心肺脈絡の気を補う。
連服すること6剤で,諸症は皆癒えた。
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按語:本案の冠心病は水気上衝による,劉老はこれを“水心病”と名づけた。
総て心・脾・腎陽虚により,水は気化せずに内停し,痰飲と成り,上凌無制の患となる。
心陽虚衰となれば,陣頭指揮が取れず,水気は上衝し,胸痛・心悸・短気等の心病証候を現す。
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別の文献では、苓桂朮甘湯加味というのもある。
(茯苓10 白朮・鶏血藤・丹参8 黄耆7 半夏5 桂枝3 甘草2)51

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苓桂朮甘湯と高血圧

中医学にはもともと高血圧という概念はありません。
それが中西医結合以后になって,はじめて中医にも問題として取り上げられました。
中医での高血圧の治療時に採取される辨証論治の原則は,大てい補腎・活血・滋陰・利水等の治法です。
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私の父親の祝谌予は常々自分の治療経験から云っていました。
“上の血圧(収縮期血圧)を下げるだけでなく,下の血圧(拡張期血圧)も下げなけねば”と。
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背部悪寒と苓桂朮甘湯

患者は範某,男,52歳,農民。
背部悪寒が一月余り続いている,口干あるも,あまり水を飲みたくない,熱いものなら飲む,早朝起ると口が微かに苦い,痰は多く咯出し易い,食欲はある,小便は普通,大便は溏,舌は淡白、胖大,歯痕あり,苔白く,脉は弦滑,手で肩胛骨の下を触れると,手掌大の範囲に冰凉感がある。
最近 感冒にかかったことはなく,発熱もない。
聴診では双肺の呼吸音は清で,干湿性ラ音は聞えない。
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小兒肺炎と桂枝加厚朴杏子湯

初XX,男,3个月,
発熱して四日目,咳嗽,呼吸が早い,ひきつけが2度あった,1961年2月24日に某医院に入院。
検査:体温39.4℃,脈搏106回/分,発育及び営養は中等,右肺聴診で稍濁,両肺の呼吸音は粗糙,干ラ音及び小水泡音が,右肺で著しい。
腸鳴音がやや亢進している。
血化験:白血球数12,900/ml3,胸レントゲン:右肺の上下に片状陰影あり,肺紋理は模糊。
臨床診断:腺病毒(ウイルス)肺炎。
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病程と治療:患児は2月21日に突然発熱し,咳嗽,少量の痰あり,腹瀉を伴う,日に四、五回ほど,黄色い溏便,元気がない,母乳をあまり飲まない,二日后 咳嗽気喘が重くなった,続いて某門にて診治療,退熱消炎止咳等の西薬を用いたが効なし,2月24日突然ひきつけが2度起こった,3,4秒間持続する,間隔時間が短い,そこで某院へ入院した。
高熱で無汗,煩躁して泣く,時に驚惕不安等がある,先ずテラマイシンを次いでエリスロマイシン等をと西薬を用い,并せて大剤の麻杏石甘湯や銀翹散加味を服させ,冰嚢にて熱を取り除こうとしたが,症状は改善せず,すぐにエリスロマイシンを停止した。
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頑固頭痛と清震湯

張某某、頭痛を患って数年、時に軽く時に重し、久治するも未だ愈えず。
発作の重い時は全頭内が皆痛み、ひどくなると脳内に風雷の如き音響が轟く。
天気が変って大風となる時に発しやすい。
舌苔はやや白い。脈象は弦滑。
曽つて他の医院で清空膏・愈風丹・川芎茶調散・牛黄上清丸・羌活勝湿湯 等の加減方の湯薬・丸薬等を服用したがどれも効かなかった。
此の脈症によって我が診断を“雷頭風”とし、清震湯法の随証加減を用いた。
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处方:(升麻・蒼朮・羌活・蔓荊子・白蒺藜3 夏枯草6 石决明10 荷葉4 藁本・呉朱萸2)39
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本方を連服すること3周にして頭痛は痊愈した。
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この方の清震湯(蒼朮、升麻、荷葉)は軽揚発越・散風化湿を主薬とする。
輔薬の羌活は祛風勝湿で太陽経に入り、太陽の頭痛を治す;
藁本は督脈に入り、風寒を散じ、頭頂痛を治す。
佐薬の呉朱萸は辛温にして肝経に入り、頭痛を治す;
夏枯草は肝経に入り肝陽を平とし、肝鬱頭痛を治す;
生石決明は肝陰を養い、肝陽を潜伏させる;
蔓荊子は少陽経に入り、頭部の風熱を散じ、頭の両側痛を治す。
使薬の白蒺藜は肝肺二経に入り、其の性は善く破り、肝肺の鬱結を升散して病久入絡の疼痛を治す。
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東垣先生に“清空膏”があり、年久不愈の偏正頭痛 及び風湿熱が頭目に上壅して苦痛の止まないのを主治する。
其の方は:炒黄芩・炒黄連・羌活・防風30g 柴胡20g 川芎15g 炙甘草45g
細末とし、毎服9gをお茶にて膏の如くに練り、温水にて送下する。
此の例の頭痛患者が曽つて此の膏を服して効果が無かったのは何故か?
それは此の膏は太陽経に入る薬が最も重く、其の次が少陽経で、又その次が厥陰・太陰に入るものである。
しかも酒炒芩・黄連を用いて上部を清熱する故に此の方は風湿熱の上壅を主治するものである。
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本例は雷頭風であり、其の病情は普通の頭痛よりも深重、且つ天気の変幻によるものが多い。
大風の時に痛みが重く、其の痛みは頭全体ににおよび、且つ重い時には風雷の音のように響く。
已に風湿熱上壅の頭痛証には非ず、風邪は深く入りて清竅を閉塞し、発越疏散させることが出来ない。
経絡不通となり、風寒と温邪は互いに相い膠結し、鬱壅不散の証である。
故に清震湯を主とし、随証加減をしたのである。
全方は散風を主とし、祛寒・化湿を兼ねる。
其の脈が弦であるので養肝陰・潜肝陽・平肝防熱・温厥陰・破肝肺結気の品を加えた。
気が行り血が行れば経絡は通暢する。
風寒湿邪は辛温陽性薬を得れば発越升散する故速やかに効を取ることができる。
            《方剤心得十講》(焦樹徳著)より

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手足掌の発黄

【臨床医案】
患者,女,34歳。2004年10月5日初診。
1ケ月前から手足掌がなり始めたのだが、だんだん色が濃くなってきた。
多くの処で診察してもらったが不明で、肝機能やその他の検査指標は正常だった。
手足掌はミカンのように黄色く、顔色は悪く萎黄だが目は黄色くない。
食欲はやや減っており、舌苔は白膩で、脈は緩弱。
更に詳しく聴くと、ミカンが市場に出てから毎日1kgほども食べており、それから約1ケ月后に上述のような症状が現れたという。
これは湿性果物の過食で、聚湿傷脾となったものである。
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(黄耆・党参・茯苓・意苡仁・茵陳蒿5 白朮・山薬・白扁豆・桔梗・蓮肉・車前子4 砂仁・甘草2)53
5剤。
10月11日 再診時には手足掌の黄色は淡くなっていた。
更に継進すること10剤で,手足掌は紅潤となった。
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按:ミカンは夏に結実し秋に熟し、液汁が多いので湿性果物に属する。
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(世間ではミカンの食べ過ぎだから放っとけば治る、と軽く見過ごされていますが、湿性果物による弊害が脾を傷つけているという事実を看過している!)

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脇痛(胆結石)

 姜某々、男、36歳。1992/02/15初診。
 半年前から右脇痛あり、この一ヶ月は次第に重くなり、右側から背にかけて針で刺すように痛い。
微熱があり、小便は深黄色で大便は溏(泥状)。
超音波検査で肝胆管泥砂様結石と分かった。
舌苔は白膩、脈弦。
肝胆湿熱鬱結、疎泄不利の証である。
疏肝利胆、清熱利湿をしなければならない。
劉老は“柴胡排石湯”を採用した。
柴胡18 虎杖根・白芍16 魚腥草・茵陳蒿15 金銭草30 黄岑・海金砂・鶏内金・川楝子・延胡索・姜黄・劉奇奴10
服薬七剤で症状は軽減し、更に続服すること一ヵ月半にて超音波検査で排石されたことを確認した。
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【按語】『霊枢・脹論』に曰く“胆脹とは脇下が痛脹し、口中苦く、よくタメ息をつく”
治療には排石のためには湿熱を清利し、重ねて肝胆の気機を疏利して解鬱を図る。
柴胡排石湯は小柴胡湯を基礎にして加減したものである。
            『劉渡舟験案精選』より

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