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背部悪寒と苓桂朮甘湯

患者は範某,男,52歳,農民。
背部悪寒が一月余り続いている,口干あるも,あまり水を飲みたくない,熱いものなら飲む,早朝起ると口が微かに苦い,痰は多く咯出し易い,食欲はある,小便は普通,大便は溏,舌は淡白、胖大,歯痕あり,苔白く,脉は弦滑,手で肩胛骨の下を触れると,手掌大の範囲に冰凉感がある。
最近 感冒にかかったことはなく,発熱もない。
聴診では双肺の呼吸音は清で,干湿性ラ音は聞えない。
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患者の口干少飲,喜熱飲,痰多易咯,便溏,舌胖大有歯痕,脈弦滑,という脈症を合参して,脾陽不足,水気上犯の痰飲と辨証した。
治法は健脾益気,温陽利水,方は苓桂术甘湯加味を用いる。
処方:(茯苓7 白朮・桂枝5 甘草・葛根3 生姜1)24  10剤,水煎服,日1剤。
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寒さを避け暖かくし,辛辣の刺激性食物を避けるよう注意した。
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服薬后,患者は背部の悪寒が明らかに減軽し,其の他の不適な症状も亦好転した。
薬は已に効があったので,連続して服用すること1月の后に,“背部には已に凉を感じなくなったが,咽喉にまだ痰がある,其の他は悪いところはない”と患者は電話で告げてきた。
上方を基礎として桔梗・半夏3gを加えて,更に継続服用すること1月の后,症状は完全に消失した。
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按:本例の患者は《金匱要略·痰飲咳嗽病脈証并治第十二》中の“心下に留飲あれば,其の人は背に手大の寒冷を感じる”,これは脾陽が不足し,水飲が溢れて,心下に停留している。
清代の李珥臣は《金匱要略広注》中で亦論及しているのでは“背は陽なり,陽中の陽は,心也。故に心下に留飲があれば,則ち陰寒の気が背へと貫き,陽気が衰息して,背に手大の寒冷となる”,此の“心下”とは胃と胸膈を指す。
背部の腧穴とは人体の臓腑経絡の気血が輸注する処であり,心の兪穴は背部にあり,飲留が心下にあれば,寒飲は其の兪に注ぐ,陽気は展布できず,督脈の温煦功能に影響する故に背部に手大の寒冷を感じる。
病機は飲が心下の陽気を阻むため,背の兪穴が温煦を失ったのである。
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《金匱要略·痰飲咳嗽病脈証并治第十二》第16条に“心下に痰飲があれば,胸脇は支満し,目が眩む,苓桂朮甘湯が主る”。
温運脾陽,補気行水を主とすれば,祛痰飲、通経絡を達して諸症が消える。
処方は苓桂朮甘湯加味とし,《金匱要略·痰飲咳嗽病脈証并治第十二》第15条の“痰飲を病む者は,温薬にて和すべし”との治法を体現することになった,其の中の茯苓は淡滲利水,化飲降濁の飲病を治す要薬である;桂枝は辛温通陽,振奮陽気で飲邪を消す,両薬を合用すれば温陽化飲ができる;白朮は健脾燥湿に;甘草は和中益気に;葛根は升陽,舒筋脈に;生姜は温陽化痰に。
復診で参入した桔梗、半夏は化痰の力を強める,且つ桔梗は載薬上行して,病所に直達する働きがある。
諸薬が協力して,温陽健脾,行気利水を奏功する。

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