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萎縮性胃炎

蔡某某,男,46歳。
右上腹に疼痛があるようになって四、五年経つ。
日常的に発作を反復し,痛い時には火灼感あり,頻頻と嗳気が出る。
某医院の診断では慢性萎縮性胃炎だった。
この一年来、胸部に痞悶を自覚し,胸骨下は梗塞したようで,時には疼痛があり,嗳気が出れば稍スッキリする。
食べても咽が塞がれ,ことに干食は困難で,形体は消痩し,大便は干結,舌紅く無苔,脈は弦細数。
医院の上消化道のバリウム検査で,食道狭窄と診断された。
中医の辨証は,気鬱日久,耗傷陰津,胃失滋潤,気滞気逆である。
治は養陰潤燥、柔肝解鬱、益胃降逆法に宜しい。
啓膈散加味
(沙参・生地・麦冬・白芍・丹参・代赭石10 合歓花・砂仁2 鬱金・貝母4 茯苓・煅瓦楞5 荷葉蒂1个 杵頭糠一撮)82
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二診:上方を服すること十剤にして,胃脘の焼灼感は已に軽くなり,胃痛及び胸部の窒塞感は減軽し,食后の反流は減少し,大便は暢通となり,舌紅く薄苔,脈は弦細だが数ではない。
病に転機があったので、原方より煅瓦楞、生地、麦冬を去った。
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三診:上方を服すること十五剤,証情は継続して好転した。
胃痛及び焼灼感は大いに減り,飲食は已に暢通である。
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四診:上薬を連服すること二个月で,諸症は完全に消失した。
    例二  梁颂名治萎缩性胃炎兼食道狭窄案(选自《新中医》)
※引き続き啓膈散の治験例です。病名は違ってもこれも噎膈のひとつです。

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剤頚而還

《傷寒論》に「剤頚而還」という語句が3度出てきます。
(111) 太陽病中風,‥‥‥但頭汗出,剤頚而還
(134) 太陽病,‥‥‥但頭汗出,余処無汗,剤頚而還
(236) 陽明病,‥‥‥但頭汗出,身無汗,剤頚而還
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これは“但だ頭に汗が出るが,頚から以下は無汗である”という意味に取れます。
今までに幾つか文献を調べてみましたが明快な解釈は見つかりませんでした。
今回はネットで一つの解釈「“但头汗出““剂颈而还“解」を見つけました。.
そこには「剤とは斉の古字で,刀を手に取って切るのを斉という。ところがその後、刀を使わずにものを切るのを斉とし,刀を使って切るのを剤と書くようになった。どうもこの辺の変遷がイマイチ分からない。」とあります。
よって “剤頚而還“ とは「頭汗は頚までを境にして還り、身汗にはならない。」との意味になります。

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噎膈(いっかく)

啓膈散は清代の医家、程鍾齢(国彭)著《医学心悟》より出る。
原方は“噎膈”の治療に設けられている。
とは即ち噎塞、哽噎のことで,食物が咽を下り難い;とは格拒のことで,飲食不下や,咽を下っても后で又吐出することを指す。

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逆流性食道炎

逆流性食道炎は軽ければ焼心、胸痛 等の症状を現し,重ければ呑咽困難、反胃(胃内容物や十二指腸液(胆汁、胰汁)が賁門から食道へと逆流)となる。
本病は中医の“噎膈”、“胸痛”、“吐酸”の範畴に属し,其の病因は憂思鬱怒,酒食所傷である。
憂思すれば脾を傷つけ,脾が傷つけば気は結び,気が結ばれれば津液は輸布されず,遂に聚って痰となり,痰と気が食道を交阻する。

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実証のシャックリ(呃逆)

以前「吃逆 (しゃっくり)」の記事にて実証の呃逆を竹葉石膏湯加味を用いた例を挙げた。

珍しい実証呃逆の二例目として今度は啓膈散を用いた例です。
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当帰四逆湯の木通はどんな役割か?

当帰四逆湯《傷寒論》というのは次のような組成で、血虚寒厥証の手足厥寒などに応用されます。
(当帰・桂枝・芍薬・細辛3 甘草・通草2 大棗八)
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通草には木通が用いられています。
木通は寒薬とされています。
当帰四逆湯は温経散寒の作用を発揮する処方ですから温薬ばかり使えば良いのに寒薬の木通が混じっているのが不釣合いです。
何故だろう?
ネットを調べてようやく納得の答えに出会いました。
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当帰四逆湯の組成の意義
本方中の木通には三つの意義がある。
①木通には通血脈の作用があり、当帰・細辛・桂枝等の血脈を通行させる力を更に強くする。
②苦寒の性味で細辛・桂枝の温燥性を制約し,其の燥烈にして陰血を傷つけるのを防ぐ,反佐作用をしている。
③苦寒の性は細辛・当帰・桂枝等の温熱薬から制約を受けて,“去性取用(木通から寒性を去り、通血脈の作用だけを残す)”の妙を実現している。
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本方は肌表の温通活血剤で,血虚受寒,手足不温の諸症,例えば凍瘡・皹裂(あかぎれ)等に使用される。
しかし市販には当帰四逆湯はなく、当帰四逆加呉茱萸生姜湯があります。
呉茱萸と生姜が加わると苦味が強く飲みにくくなります。
そして“内寒”といって、内臓の冷えがある場合の適用になります。
当帰四逆湯の市販品があれば良いのにねー。
女性には寒い冬のホットカイロ(懐炉)代わりに是非とも使って欲しい漢方薬です。

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中風后遺症

高某某,男, 59歳。1992年2月19日初診。
三ケ月前, 高血圧に因り中風を患い,左側の半身不遂,左面頬の麻木,肩臂が挙らず, 頭目眩暈となった。
血圧200/100mmHg, 曽って“牛黄降圧丸”、“復方降圧片”等の薬物を服したが,血圧は降ったり升ったりである。
其の人身熱く汗あり。
痰涎の量多く, 咳吐して尽きず, 小便黄色で暢びず, 大便は正常である。
舌苔は黄膩で,脈は沈滑。
劉老は痰熱が経絡に阻滞し,気血の運行不利の証と辨じた。
治には清熱化痰通絡の法を以ってす:
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(茯苓10 枳殻・風化硝(玄明粉)3 半夏7 黄連・黄芩2 天竺黄5 鮮竹瀝水36ml)32
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服薬すること五剤の后, 暗紅色黏膩の大便を頗る多く瀉下した, 頓に周身軽爽するを覚え, 血圧は140/88mmHgに降り,小便も之に随って暢利となった。
薬は已に的中したので, 原方に鈞藤5 羚羊角粉0.3 生姜汁18ml を加えた。
服すること二十余剤で, 血圧は一気に穏定して正常範囲となり, 左臂は已に能く頭を越えて高く挙り, 咳吐していた痰涎も已に除かれた。
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【按語】陽亢化火して動風すれば, 火熱によって煎じられた津液は痰となり, 痰熱が経絡を阻滞し, 気血を痺阻する;
或いは高巓を上犯すれば, 清気は升らず, 故に瘫痪不挙、麻木不仁、頭目眩暈等の症となる。
«景嶽全書»に云わく: “痰が周身に在れば, 病は測り知れず, 凡そ瘫痪、*契*从、半身不遂等の証は, 皆 伏痰留滞して然るなり。”
本案の痰熱交阻には, 其の辨証の要点は二つある:
一つは咳吐する痰が多く,小溲が短黄であること;
二つは舌苔が黄膩で, 脈が沈滑であることである。
故に治療には清熱化痰通絡を法とすべきである。
劉老は先ず“指迷茯苓丸”加味を用いた。
茯苓は健脾化痰飲, 半夏は和胃化痰濁, 枳売は寛中化痰気, 风化硝は通腑瀉熱して痰凝を去る。
四薬を合用すれば, 已に痰になったものも消え, 又 生痰の路も絶える。
«成方便読»の指出には: “夫れ痰の病たる, 腑に在れば治し易く, 臓に在れば医し難く, 絡に在れば更に捜剔し難し。四肢は皆 気を脾より禀けている, 若し脾が病んで運化不能となれば, 則ち痰は中脘に停り, 四肢へと充溢すれば, 自ずとかくなるべし。之を治すには, 当に其の正気が虚しない時に乗じて攻撃し,脘中の痰を去って留らせないこと, 然る后に脾が其の健運の職を回復すれば, 則ち絡中の痰は自ら腑へと還り, 消えるを以って成功となる。”
黄連、黄芩、天竺黄、竹瀝を加えたのは清熱化痰,通達経絡の力を強くしたためである。
熱痰が化し, 経絡が通るのを待てば, 瘫、麻、掉眩などの諸症は自ら愈える。
          『劉渡舟験案精選』より
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指迷茯苓丸《証治准縄》(茯苓・枳売・半夏・元明粉・生姜汁)
「黏膩の大便を頗る多く瀉下した」なるほど指迷茯苓丸に玄明粉がある理由が始めて理解できました!

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グチ解禁

昭和30年代の事です、街中に小さな薬房がありました。
ちょっとした軽い病いから難病に至るまで色々な病気の人々が密かに尋ねてきました。
店主は漢方一筋の頑固な老人でした。
それぞれの人にかなり高価な漢方薬を処方して渡していました。
保健所へ告発すれば咎められるもぐりの販売行為です。
当時ようやく漢方に興味を持ち始めた私は独学で本を漁っていました。
少しでも知識が欲しくて、ある日その店を訪れました。

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愚痴

昨日のNHKクローズアップ現代「映画監督・木下恵介」を見て、胸にズシンと来たのは「女の愚痴に見る人が共感する」という山田太一監督の解説でした。
愚痴といえば男が口にする事ではない、沽券にかかわる等と偉そうに思っていましたが、いや愚痴には本音がこもっているのだと改めて気が付きました。
私のブログにも「グチ」というグループを作ってありますが、本当は云いたい事が山ほどあるのに久しく発言していません。
これからは おおいに愚痴を云おうと思った。

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肝咳

案七:李某,女,45歳。
咳嗽すること3年余,一日の咳嗽は3~7回,毎回約3分間,無痰,咳をする時に両脇と少腹が引き攣るように痛む,劇しいと嘔吐し,鼻衄が出て,小兒の百日咳に似るが,雑治しても効なし。
尋ねたところでは飲食は一般であり,大便は干秘し,二三日に一回,眩暈と腰困があり,口苦して冷飲を欲しがる。
舌質は淡紅で無苔,脈象は沈弦。
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其の脈症を観れば,肝咳と知れる,肝火犯肺により,木反侮金して来る,四逆散加減を擬す:
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(白芍・桑白皮・地骨皮・瓜蒌・蘇子・烏梅5 柴胡3 甘草2 青黛1)36 三剤
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二診:咳嗽の回数が減少して,程度も減軽した,脈は沈弦で,左尺が弱い。
脈弦は肝旺を主り,尺弱は腎虚を示す。
木反侮金とは,乃ち水不涵木也。
当に補腎養肝,滋水涵木すべし。
若し津液が上承すれば,肺気は自ら清粛下降する。
咳を治さずして咳は自ら止む也。
六味地黄湯加減:
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(生地8 白芍5 蘇子・山薬4 烏梅・茯苓・甘草・丹皮3)33 五剤
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三診:咳は大いに減り,日に僅か一回,時には仍お嘔吐する。
最近 たまたま右の耳門穴に触れたら,すぐに咳嗽を発した,視ても紅くも無く腫れてもいないが,撫でたり按じたりは出来ない。
風熱内鬱に似ている,故に一触即発する。
宣肺散熱の麻杏甘石湯を擬して試す:
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(麻黄・杏仁・桑葉・蝉衣・桔梗・芦根3 石膏10 甘草1)29 二剤
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四診:僅か一剤で,咳嗽は減るどころか反って増し,一日に六七回に達した,用薬に誤りがあったので,復び滋腎柔肝法を擬す:
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(沙参・麦冬・烏梅・白芍・柴胡・蘇子5 黄芩・甘草3 羚羊粉1(冲))37 三剤
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五診:咳嗽は復た減り,守方して三剤を続服する。
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按:《素問·咳論》に云く:“肝咳の状は,咳をすると両脇下が痛み,甚しければ転側できず,転ずれば両脇下満となる”,“肝咳が已まなければ,胆が之を受けて,胆咳の状となり,咳して胆汁を嘔く。”
本案は肝咳に属す,初めに清肝の剤を擬して已に効を見た,后は肝腎同源の理により,滋腎柔肝を以って,症状は緩減を得た,是は本病の治則として有効である。
中途で耳門穴に触れて咳が出るという症に惑い,新しい処方を使った。
宣散を誤用したところ,咳嗽は増劇した,実に肝咳を治す教訓となった。
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《素問·臓気法時論》に“肝は急を苦しむ,急ぎ甘を食して以って之を緩めよ”、“肺は収を欲す,急ぎ酸を食して以って之を収めよ”の論があるが,此れを経験して失敗した,得たものは深い。
耳門穴に触れると直ぐに咳が出たのは(愈えて后に触れると仍お咳をした),何が原因だったか,まだ分からない。
        臨証実験録 案七:肝咳 より
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※咳き込むと脇腹に響いて痛むというタイプの咳嗽があり、それを“肝咳”といいます。
病機は「肝火犯肺」で、以前にも二度取り上げましたが、瀉白散がらみを更に追加です。
肝火犯肺(1)

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壮火食気とは

1980年のこと、一人の農業青年を診察しました。
彼が言うには、一月前寒けがして高熱を発しました。
三日後に熱は退いたけれど心中の煩熱が解消しないと言うことです。
全身はだるくて寝ついたまま起き上がれません。
それなのに異常なほど空腹感を覚え、口渇して水を飲むけれどその割に小便は出ず、便秘しており、舌質は紅く、舌苔は黄干、脈は沈で力がある。
これは外邪が裏に入り熱化し、元気を消耗したのであろう。
即ち内経でいう“壮火食気”である。

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黄耆の三効

学生Aの質問;
呂先生(呂承全主任医師)、午前中の外来再診で診た、あの肝硬変の病人さんですが、初めからずーっと健脾利水剤を使って来たのに水腫はなかなか消えませんでした。
それを先生は原方の黄耆15gを50gに換え、更に猪苓・沢瀉という利水剤を去ったのに一週間もすると水腫は基本的に消失してしまいました。
どういう訳でしょうか?
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ノロか?妻の風邪

2013/01/08
水涕・鼻塞・背中に穴が開いたように寒気あり。
傷風によるアレルギー性鼻炎と考えて、午後から
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蒼耳子散加減
(桔梗・当帰・杏仁・防風・荊芥・紫蘇葉・白止・細辛・辛夷・蒼耳子・菊花・紫苑・前胡・桑白皮・甘草2 薄荷1.5)31.5
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2013/01/09
今朝起きたら鼻は大分楽になっていた。
念のためもう一日 蒼耳子散加減を飲む。
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2013/01/10
今朝起きたら鼻がスッキリとして快適で、治ったと喜んでいた。
ところが昼頃から腹が何とも云い様なくグチャグチャと不快でならなくなった。
便秘ではないが、おならが臭い。
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2013/01/11
今朝から急に目眩と悪心が始まった。
午前中は自然に数回に分けて大量の排便があり、好調に感じていた。
昼頃に呉茱萸湯加味を飲ませたら、その直後に朝食とも嘔吐してしまった。
暖房を嫌って寒い方が気持ちがいいという所を見ると、温薬を与えたのは失敗だった。
食欲が無いので昼食は抜き、私にミカンとアイスクリームを買って来てくれという。
夕方、便通と嘔吐で胃腸が通じた後は順調に食欲が出てきたので何も服薬せずに様子を見た。
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2013/01/12
引き続き順調に回復している。
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これは腹証を併発した風邪である。
若しかしたら新型ノロウィルスによる感染かもしれない。
反省:水涕・鼻塞・背中の寒気などの表証が出た時点で、単純に風寒証と考えたのは半分しか当たっていない。
表証が去った後でグチャグチャと不快な腹証を起こしたのは、残存した邪が裏へと移行したのである。
それは暖房を嫌ったり、アイスクリームを欲しがる事から内熱があったであろうと考えられる。
初発で表寒内熱と弁証が出来ておればもっと早くに解決出来ただろう。
では、それはどんな処方になるだろうか?
ノロウィルス感染性胃腸炎」に出てきた藿蘇苓朮湯の加減方が思い出される。
藿蘇苓朮湯(藿香・白朮・茯苓・太子参・車前子・山楂子炭6 紫蘇葉・厚朴3 煨葛根15)57
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加減:腹痛腸鳴者加木香1.5;
夾食滞者加神麹6 砂仁I.5;
肛周紅赤,有化熱之象者少佐黄連1.5
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この辺の処方を組んでおれば表証と内熱は共に駆逐できたかも知れない。

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半身不随

姜某,男,66歳。
左半身が偏廃して,左手が拘急して伸び難く,活動不能,血圧 200/l20 mmHg,頭目眩暈あり,心煩して,不寐,性情は急躁して怒り易い,大便は秘結し,小便は黄色い。
舌体が左に向って歪斜し,舌質は紅絳で少津,舌苔は黄干,脈は滑数。
此れは火動傷陰・兼有動風の証である。
治は当に瀉火清熱・熄風活血すべし。
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疏方: 大黄5,黄芩・黄連10
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服薬すること五剤,大便は暢通し,頭目は清爽となり,心中の煩乱も頓に消え,血圧は 170/100 mmHgに降った。
復診した時,家人の扶けが無くても,腿脚は動いた。
然し左手の攣急が未だ解けず,転方して芍薬甘草湯に,羚羊角粉1.8g(冲服)を加えて瘥えた。
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【按語】
本案は火動傷陰により,血が柔肝せず,動風傷筋となった証である。
«素問・生気通天論»に“陽強ければ密ならず,陰気は乃ち絶す”の説がある。
本証では大便秘結し,小便が黄色く,舌苔は黄,脈が滑数であり,これは陽熱内盛を映している;
心煩して不寐なるは陰気が内虚で,水火不済の象である。
陰が陽より勝たなければ,陽亢化風となり,血圧は升高し,頭目は眩暈する。
火淫血脈となり,血は火により煎耗し,内風を煽動し,手攣舌歪,半身不遂となる。
«素問・至真要大論»に説く:“諸熱瞀瘛(視物模糊昏花,指手指筋脈拘急抽搐),皆火に属す”
本証の半身不遂は、形は中風に似ているが,其の実は “火中”の証であり,若し誤って燥薬を用いて駆風すれば,千里も戻ることになる。
劉老は瀉火清熱,釜底抽薪(竈から薪を抜き火力を鎮める)の法を採用し,«金匱»三黄瀉心湯の苦寒剤を選用した。
黄連は心火を瀉し,黄岑は肺火を瀉すものである。
妙は大黄の一味に在り,既に能く胃中の火熱を通降させているのに,加えて活血逐瘀,推陳致新にもなる。
若し本証で大便不燥で小便が赤渋不利ならば,黄連解毒湯に改めれば好い。
この臨床例は,西医学では高脂血症・脳血栓・脳栓塞・脳出血 等の病であり,どれも肢体偏廃,手足不仁,甚しければ突然昏倒,不省人事にするものである。
劉老の経験に拠れば,多くは“火中”の範囲であり,治は当に通瀉火熱を主とし,三黄瀉心湯か或いは黄連解毒湯を用いるのが妥当で,如し温燥祛風の品を濫用すれば,火に油を澆ぐ如きもので治療を加えれば加えるほど重くなるだろう。
          『劉渡舟験案精選』より
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 ※中風に三黄瀉心湯の適応もあるのを忘れないで!

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葛根/生津 or 升津?

古今の医家が葛根の薬性について言う時、生津か又は升津か、論の分かれる所である。
筆者は葛根の性味は辛甘であり、酸甘ではないと思う。
だから滋陰生津の作用はないと思う。
所謂、「升津」とは胃気を鼓舞することにより、胃陽を升発し、陽が升ると陰が動きだし、陰津が上部を潤すと消渇を治し、経脈を濡潤するという効果に結び付くのである。
故に漢代の張仲景は葛根の辛甘升散の性を借りて体内の津液を経輸に升入してその経を濡潤し、太陽病の“項背強几几”を治したのである。
これを見れば葛根は升津であり、生津ではないと分かる。
故に温熱傷津か或いは陰虚火旺の証では盲目的に葛根を選用してはならない。
さもないと辛甘升散の葛根は更に陰津を耗傷することになる。
        「黄河医話」 童増畢 より
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※あなたが葛根湯を適用するとき 葛根は本当に薬効を発揮していますか?

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パーキンソン病

陳某某, 男, 75歳。 1995年10月18日初診。
1994年1月発病, 全身が震顫して止まらない。
某医院の診断は“帕金森病”(パーキンソン病)だった。
西洋薬を服用したが症状の好転は無く、特に頼んで劉老の診治を請うた。
症状は全身の顫抖で,上肢が尤も重く,手指の節にも律性震顫があり,まるで“丸薬を丸めているよう”です。
肌肉は強直し,顔は無表情で,双目は直視したまま,口角から流涎し,歩履は困難である。
頭痛を伴い,口干して渇き,大便は秘結して,一周に一行しかない,小便の色は濃茶の如く,口噤して歯ぎしりし,言語は賽渋である。
舌は紅く,苔は黄膩で燥き,脈は滑大である。
証は三焦火盛による動風である。
津液を煎灼して痰を成し,痰火が経絡を阻塞したので陽気は風と化し顫動を生じている。
治には清熱瀉火,平肝熄風,化痰通絡が宜しい。
黄連解毒湯合羚羊鈞藤湯加減を用いる。
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(羚羊角粉0.6(分冲) 黄連・黄芩・黄柏・梔子・竜胆草・菊花・桑葉・菖蒲・佩蘭3 竹茹7 鈞藤5 天竺黄・半夏4)47.6
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服薬すること十四剤の后,両手の震顫は減軽し,行走は前に較べて有力となり,口渇は止り,小便の色は淡に変ったが,まだ大便は秘結したままで,頭痛と眩暈,言賽不利,多痰少寐,舌苔は白膩挾黄,脈は滑数である。
以上の脈証に対して、上方加大黄1gとし,并せて“局方至宝丹”3丸を加服させ,毎晩睡前にも1丸を服させる。
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 ※ 至宝丹(朱砂・麝香・安息香・犀角・牛黄・氷片・琥珀・雄黄・玳冒・金箔・銀箔)‥‥‥痰火内閉に用いる。
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服薬すること月余にして,頭暈少寐多痰は大いに減軽し,語言は明らかに好転したが,まだ腹満便秘は変わらず,歯ぎしりし,小便は短赤で,四肢及び口唇は顫抖する。
舌紅く苔は黄干,脈は滑数である。
治には通腑瀉熱,凉肝熄風の法を用い,調胃承気合羚羊鈎藤湯加減とする。
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(羚羊角粉0.6(分冲) 大黄・芒硝1(后下) 炙甘草2 鈞藤・白芍7 木瓜3 麦冬10)31.6
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上方を服すること七剤で,大便は通暢し,糞便は串珠状の如し。
腹満は頓に除かれ,歯ぎしりは大いに減り,小便は暢利し,四肢の顫抖は軽微である。
効があったので前方を更えず,そのまま“黄連解毒湯”合“羚羊鈞藤湯”加減を用いた。
治療すること三个月,肢体の震顫は消除され,自分で行走が出来,手指の屈伸も思うままに,握拳に力がある,言語は流暢になり,顔の表情も自然で,二便も正常となった。
惟だ時々頭暈があり,歯ぎしりをするので,芩連温胆湯加減を継続して病は愈えた。
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【按語】帕金森病は又震顫性麻痺と称し,中枢神経系統の疾病に属し,中・老年人に好発する。
臨床では肢体震顫,肌肉の僵直と運動障碍を特徴とする。
劉老は本病の核心は心肝にあり,其の病因の多くは火熱動風生痰であると考えている。
«素問.至真要大論»に説く: “諸風掉眩は,皆肝に属し,諸暴強直は,皆風に属す”。
肝熱動風となれば,津液は痰と成り,痰熱は肝風を随えて筋脈に竄入し,津液を灼傷すれば,肢体は震顫を発する。
所見の口干・便秘・小便短赤・歯ぎしり・言語不利・舌紅・苔黄膩・脈滑大の諸症は,皆 心肝熱盛,風動灼痰の変である。
故に治療では初めに清心瀉火,熄風化痰を法とした。
黄連解毒湯は能く三焦の火を瀉するし,配した羚羊鈎藤湯は能く凉肝熄風化痰となり,屡 奇功を建てることがある。
          『劉渡舟験案精選』より
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     「パーキンソン病と漢方

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枸杞子で寝汗をかく

以前、消渇病(糖尿病)の患者を診た時の事です。
陰虚の証があったので 六味地黄湯+麦門冬・沙参・石斛・枸杞子 を処方しようとして枸杞子まで書いた時に、患者はきっぱりと言いました。
「枸杞子は飲めません」
その訳を尋ねたところ、彼女には二年前にある医院でこの病を治療してもらった時に処方の中に枸杞子が入っていて飲むと必ず寝汗が出、十剤続けたら流れる程の汗になり、病気が益々ひどくなったので服薬を止めたら寝汗はひとりでに止まったという経験があるのです。
病人自身もそう言いながら、心中にそんな馬鹿なという思いもあり、釈然とはしなかったのですが、その後、冬になり、夫が彼女に鳥鍋を食べさせようとして、治療によかれと思い、親切に二度も枸杞子を入れたところ、やはり寝汗が出ました。
もしも煮る時に枸杞子を加えなかったら寝汗は出なかったろう。
これにて寝汗は枸杞子のせいだとハッキリ分かったと言うのです。
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私はこれを聞いても半信半疑だったので再度、彼女の同意の上で二回実験しました。
その結果、枸杞子を飲み止めると寝汗も止まり、初めて信じる事が出来ました。
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盗汗(寝汗)は陰虚熱擾の結果、心液が斂蔵されなくなったものである。
《内経》に曰く「陽が陰を襲い汗となる」
この患者は陰虚とはいえ、平生は盗汗をかかない。
それなのにどうして枸杞子を食べたら盗汗が出るのか?
多分枸杞子を食べた後、陽盛熱擾して陰虚がひどくなったせいであろう。
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歴代の本草書には大抵、枸杞子は味が甘、性は平、肝腎肺の三経に入り;功能は滋腎、潤肺、補肝、明目、補益精気;主治は肝腎の陰虧、腰膝の酸軟、頭暈、目眩、目昏多泪、虚労の咳嗽、消渇、遺精;とあり、多くは滋陰の品と認識され、滋陰薬類に分類されている。
近代では一部の中薬学家は枸杞子に補血の効果を認め、補血薬類に分類している。
独周岩は《本草思弁録》の中で次のように言っている。
「枸杞子は内外全て純丹で津液を包含している。種子は本来腎に入るからこれは腎中の水火兼備の象に似ている。味は厚で甘、故に陰陽併補して‥‥‥純丹でも増火することはない。」
一部に陰虚陽盛から陰虚火旺となった患者があり、これに枸杞子を用いるとその陽は益々盛んとなり、陰は益々虚となり、陽が陰を襲い、熱が内で騒ぎ心液が外に溢れて盗汗となるわけだろう。
俗に「家を離れること千里、枸杞を食べるなかれ」(仕事で故郷を遠く離れても枸杞だけは食べてはいけない。何故なら勃起して女が欲しくなるから。)と言うのは即ち枸杞子の補腎興陽(勃起)の作用を指している。
この他に臨床上、枸杞子を食すると咽燥口干して飲を欲する様になり、甚だしくは鼻衂が出る者さへあるのは上のような道理である。
枸杞子が陰血を純補するだけのものではなく、実に補陽の効果もあり、陰陽併補の品であることを知らなければならない。
         「黄河医話」張文閣 より

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