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枸杞子で寝汗をかく

以前、消渇病(糖尿病)の患者を診た時の事です。
陰虚の証があったので 六味地黄湯+麦門冬・沙参・石斛・枸杞子 を処方しようとして枸杞子まで書いた時に、患者はきっぱりと言いました。
「枸杞子は飲めません」
その訳を尋ねたところ、彼女には二年前にある医院でこの病を治療してもらった時に処方の中に枸杞子が入っていて飲むと必ず寝汗が出、十剤続けたら流れる程の汗になり、病気が益々ひどくなったので服薬を止めたら寝汗はひとりでに止まったという経験があるのです。
病人自身もそう言いながら、心中にそんな馬鹿なという思いもあり、釈然とはしなかったのですが、その後、冬になり、夫が彼女に鳥鍋を食べさせようとして、治療によかれと思い、親切に二度も枸杞子を入れたところ、やはり寝汗が出ました。
もしも煮る時に枸杞子を加えなかったら寝汗は出なかったろう。
これにて寝汗は枸杞子のせいだとハッキリ分かったと言うのです。
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私はこれを聞いても半信半疑だったので再度、彼女の同意の上で二回実験しました。
その結果、枸杞子を飲み止めると寝汗も止まり、初めて信じる事が出来ました。
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盗汗(寝汗)は陰虚熱擾の結果、心液が斂蔵されなくなったものである。
《内経》に曰く「陽が陰を襲い汗となる」
この患者は陰虚とはいえ、平生は盗汗をかかない。
それなのにどうして枸杞子を食べたら盗汗が出るのか?
多分枸杞子を食べた後、陽盛熱擾して陰虚がひどくなったせいであろう。
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歴代の本草書には大抵、枸杞子は味が甘、性は平、肝腎肺の三経に入り;功能は滋腎、潤肺、補肝、明目、補益精気;主治は肝腎の陰虧、腰膝の酸軟、頭暈、目眩、目昏多泪、虚労の咳嗽、消渇、遺精;とあり、多くは滋陰の品と認識され、滋陰薬類に分類されている。
近代では一部の中薬学家は枸杞子に補血の効果を認め、補血薬類に分類している。
独周岩は《本草思弁録》の中で次のように言っている。
「枸杞子は内外全て純丹で津液を包含している。種子は本来腎に入るからこれは腎中の水火兼備の象に似ている。味は厚で甘、故に陰陽併補して‥‥‥純丹でも増火することはない。」
一部に陰虚陽盛から陰虚火旺となった患者があり、これに枸杞子を用いるとその陽は益々盛んとなり、陰は益々虚となり、陽が陰を襲い、熱が内で騒ぎ心液が外に溢れて盗汗となるわけだろう。
俗に「家を離れること千里、枸杞を食べるなかれ」(仕事で故郷を遠く離れても枸杞だけは食べてはいけない。何故なら勃起して女が欲しくなるから。)と言うのは即ち枸杞子の補腎興陽(勃起)の作用を指している。
この他に臨床上、枸杞子を食すると咽燥口干して飲を欲する様になり、甚だしくは鼻衂が出る者さへあるのは上のような道理である。
枸杞子が陰血を純補するだけのものではなく、実に補陽の効果もあり、陰陽併補の品であることを知らなければならない。
         「黄河医話」張文閣 より

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