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薬草の修治

私(王学美)は臨床歴30年になりますが、中薬の規範炮制と臨床の治療効果とは密接な関係があると感じています。
明の陳嘉謨も次の様に指摘しています。
「酒制は升提し、姜制は発散し、塩が入れば腎臓に行き、・・・・酢を用いれば肝経に注ぎ且つ痛みを止め、童便制は降下し、米 シ甘制は燥性を去り和中し、乳制は滋潤回枯し陰血を助生し、蜜制は甘緩・・・・、元陽を増益する。」
また炮制歌の中には次に様なのがあります。
「遠志は芯を去らないと煩悶する。草果は皮を去らないと胸が脹る。芫花の利水には酢を欠かせない。地楡の止血には細い所を去る。」
どれも薬物の炮制と治療法との相対道理を述べている。
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小柴胡湯合香蘇散をめぐって

日本漢方の報告に「耳管狭窄症や耳管開放症の耳閉塞感に小柴胡湯合香蘇散(紫蘇飲)が有効」というのがあります。
中医学では通気散《医学凖縄六要》が有効と云われています。
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(1) 小柴胡湯合香蘇散
(柴胡・半夏・黄岑・人参・甘草・大棗・生姜+香附子・紫蘇葉・陳皮)
(2) 通気散
(柴胡・香附子・川芎)
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両者を比べると「柴胡・香附子」が共通成分です。
あなたならどちらを使いますか?
保険エキスしか使えないという縛りがあれば当然(1)になるでしょう。
薬草処方が使える人は(2)も選べます。
そう云って二通りに分かれてしまって終わりとなるのなら何をかいわんや。
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小柴胡湯合香蘇散を選んだ人はどういう根拠で選んだのか、通気散を選んだ人はどういう根拠で選んだのか?
それを明らかにしなければ医学の体をなしません。
と、いうのは表向き。
本当は日本のエキス漢方では限られた処方数しか使えない、だからと云って「それ以外の処方には目を向けない」というのがしゃくに触るのです。

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嚥下障害(誤嚥)3

※私もよく食事や飲み物でむせる事があります。歳ですから小さな脳梗塞もあるでしょう。
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(1) 治中風后呑咽困難(陰虚精虧)方
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処方:六味丸加味(丹皮・茯苓5 沢瀉4 生地8 山薬・山茱萸・桔梗・知母3)34
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功効主治:滋陰補腎。
用于治療中風后呑咽困難,中医辨証属陰虚精虧型。
症見呑咽不能,音喑失語,気短乏力,腰膝酸軟,舌質紅无苔,脈細。
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(2) 治中風后呑咽困難(痰熱阻絡)方
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処方:(胆南星・半夏・竹茹・黄芩・石菖蒲・鬱金・瓜蒌4 枳実・陳皮・杏仁3 茯苓5)42
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功効主治:清熱化痰,祛風通絡。
用于治療中風后呑咽困難,中医辨証属痰熱阻絡型。
症見呑咽不利,飲水発呛(水を飲む時にむせる),言語不利,舌強語謇,舌質紅,苔黄膩,脈滑数。
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(3) 治中風后呑咽困難(気虚血瘀)方
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処方:(黄耆10 赤芍・桃仁5 紅花・当帰・鬱金・石菖蒲4 地竜・全蝎・遠志3)45
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功効主治:補気活血,通経活絡。
用于治療中風后呑咽困難,中医辨証属気虚血滞,脈絡瘀阻型。
症見呑咽困難,語言謇渋,面色萎黄或暗淡无華,肢体浮腫,苔薄白,舌質淡或紫黯,脈細渋无力。
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嚥下困難(呑咽困難)

4/21 NHK『家で看取るということ』という放送を見ていて「ものを飲み込む」事の困難さが良く分かりました。
80歳を過ぎるとただでさえ食欲が落ちるているのに、体力保持のためといって家人は無理にでも食べさせようとします。
それに答えようとして病人は必死で食べ物を飲み込もうとするのですが、口の中に残っていつまで経っても咽を越すことが出来ません。
それが液体の水であっても同じなのです。
私はそれを見て、嚥下というのは並大抵ではない事だと感じました。
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嚥下が困難になるという事は何が原因なのでしょうか?
食欲が乏しい事から見ても当然“脾気”が虚しているからでしょう。
胃気は下降をつかさどり脾気は上昇をつかさどるといいますから、とりあえずは“胃気”の虚とも云えます。
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漢方ではこれを「脾の気虚陽微」といいます。
人体にとってこの昇降作用がいかに大切なことであるかは食欲と排泄を見れば明らかです。
下降(嚥下)するためには先ず上昇(昇提)させなければなりません。
上昇が出来てこその下降です。
“胃気の昇提”を図れば食欲がでて物を飲み込むことも出来るでしょう。
ネットで調べたところ、次のような処方がありました。
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長期にわたって飲食が下らなかったり,食后にすぐ吐いたりして,面色は白く,倦怠で,寒がりで呼吸が浅い,腹脹があり浮腫もある,足は腫れ,舌色は淡く苔が白く,脈は細弱である証候には、
補気温陽の治法をとる。
補気運脾湯(人参6 白朮9 橘紅・茯苓4.5 黄耆3 砂仁2.4 甘草1.2)30.6g ;右帰丸も併用する。
 ※嚥下困難と誤嚥とは違います。誤嚥では嚥下力がまだありますから。

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鳥インフルエンザ(H7N9型)への準備

中国では鳥インフルエンザ(H7N9型)の感染が広がっています。
いずれ日本へも入ってくるでしょう。
分かっていながら何も対策を考えていないのはどうしたものでしょうか。
鳥インフルは流感の一種だから「温病か傷寒の理論でケースバイケースで対応すれば良い」というのが一般の漢方家の考えではないかと思います。
しかしそれでは余りにずさんではないでしょうか。
地震に対しては色んなシュミレーションがなされ、予備知識が与えられています。
同じ事が鳥インフルに対しても行われていれば少しは安心が出来るというものです。
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以前「かかりがけの風邪に六味湯加味」という記事を書きました。
そこでは「“六味湯”を服用する事は、新型インフルエンザ(H1N1)の予防ワクチンを注射する事に匹敵するし更には治療にもなる」と書きました。
六味湯《喉科秘旨》(荊芥・防風・白僵蚕・桔梗・甘草・薄荷)の構成です。
もともとは「風寒襲喉証」への対応でした。
それを六味湯加味として風熱にも応用を広げたのは急性外感熱病が風寒風熱の両方の性質を兼ね備えているからです。
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六味湯加味(黄耆・白朮5 荊芥・防風・貫衆・金銀花4 陳皮・白僵蚕・桔梗3 生甘草・薄荷2)39
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「黄耆・白朮」を加えたのは未病の時に服用するためです。
いよいよ感染してしまえば「黄耆・白朮」は抜いて使います。
漢方は隨証治療が原則です。
その時々の感染の度合いに応じて治療法を決めるのが「隨証」の意味です。
治療は過度であったもダメだし、不足であってもダメで無効です。
証と処方がピタリと合った“適度の治療”ということがどんなに大切な事であるかを再認識しなければなりません。
いくら鳥インフルであっても感染初期にしっかり対応すればいくらでも撃退できます。
否、撃退は初期のほかにはあり得ません。
初期の状態(証)を予想しておいて、それに対する対応を準備しておけばひとまず安心です。
古典には“春温”という急性外感熱病の記載もあります。
春は冬季の不摂生が原因となり自然との違和が表面化する時期であります。

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風邪と鼻血

『傷寒論』麻黄湯の一条に、太陽病で発汗法を取るべき時機を失したが尚どうしても発汗させなければ切り抜けない緊急時に遅まきながら麻黄湯を用いるケースが書かれています。
(46) 太陽病,脈浮緊,無汗,発熱,身疼痛,八九日不解,表証仍在,此当発其汗。服薬已微除,其人発煩目瞑,劇者必衄,衄乃解。所以然者,陽気重故也。麻黄湯主之。
果たせるかな暝眩が起こりました。
胸が苦しく目がくらみ、あげくには鼻血が出でやっと楽になりました。
これは解表の時期が遅れたための苦肉策です。
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先日わが息子(成人)が風邪を引きました。
咽が痛い、体がだるい、少し寒気がある、頭も少し痛むというのが症状でした。
そこで軽剤である桑菊飲を飲ませました。
翌日にはほぼ良くなったものの鼻汁に血が混じっていました。
熱を体表(衛分)から全部取り切れなくて一部の熱が奥に残ってしまいました。
奥とは陽明気分・肺のことです。
これは先程の太陽病・麻黄湯のケースとは全く違う事はお分かりでしょう。
傷寒とただの春風邪では病邪が違います。
前者は風寒で後者は風温です。
流れるような鼻衄と鼻涕帯血も正確に云えば違います。
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さて奥に残った熱とは陽明熱です。
これには石膏が必要になります。
石膏といえば白虎湯(石膏・知母・粳米・甘草)が浮かびますが、ちょっと合いません。
仲間に玉女煎(石膏・熟地・麦門冬・知母・牛膝)というのがあります。
そこで桑菊飲+玉女煎として飲ませて事なきを得ました。
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※風邪は人により場合によってその都度変わります。毎回が新鮮で勉強になります。
ちなみに子供の鼻血には玉女煎を単独で使うと良いでしょう。

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止血散

先程のこと、女房が台所で包丁で怪我をしたらしい。
あたふたと調剤室へ来て、慣れた手つきで手当てをしていった。
使ったのはいつもの様に「止血散」である。
成分は(生半夏末・烏賊骨末 等分)。
烏賊骨は別名が「海螵蛸」、即ちコウイカの甲骨のこと。
これが大変よく効く。
毎回切り傷をすると止血散を着けに来るのだ。
 かなり以前の事である。
次男が幼稚園の頃、カミソリの刃で工作をしていて誤って手の親指の膨らみ(魚際)を深く切ってしまった。
血が飛び散って「ギャー」と泣いた。
医者の所へ行って縫合して貰わなければならないかと思ったが、応急処置として止血散を着けて絆創膏で固定してみた。
直ぐに止血して痛みも少なかったらしく、その日は眠ってしまった。
翌日絆創膏を剥がしてみると傷はくっついているようだ。
結局そのまま又止血散を着けて絆創膏で固定しておいた。
鋭い切り傷だったせいか、数日後にはきれいにくっついて治っていた。

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風邪には軽剤を!

温病学家の呉鞠通によれば、桑菊飲は「薬軽力薄」の軽剤です。
銀翹散は辛凉平剤で、白虎湯は辛凉重剤となっています。
このうち桑菊飲には力軽平和な辛凉の品が多く使われています。
例えば桑葉・杏仁などは専ら宣肺(宣通肺気)作用です。
“肺は上焦にあり羽の如し、軽きに非ざれば挙らず”というのが原則です。
それで選薬には軽質で平性のものを少量だけ用いて、風熱表証の軽い者を緩和に治すのです。
一方で銀翹散の銀花・連翹・竹葉などは清熱作用が強く、薬量も多く解表作用に特徴があり、風熱表証の重い者に用います。
白虎湯ともなると石膏・知母が含まれ、薬質は重く量も多く、体表(衛分)ではなく気分の実熱証に用いられます。
麻杏石甘湯も辛凉重剤であることに注意しなければなりません。
こういう訳で最も軽快な桑菊飲が風邪のファーストチョイスに選ばれることが多いのです。
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大腸癌の中医治療

中医学では大腸癌は“腸風”、“腸蕈”、“鎖肛痔”、“積聚”、“腸結”等の病名に含まれ、病因としては素体虚弱、脾腎不足、飲食因素、起居不節、憂思抑鬱等があげられます。
内外因が合わさって脾胃を損傷し,気血生化の源が乏しくなると,正気は虚損し,邪気が乗じて襲い,大腸に蘊結し,気機が阻まれ,血行不暢,痰瘀毒結によって,腫瘤を形成する。
病機は正虚邪実であり,正虚が本,邪実が標である。
辨証分型は,脾虚気滞、気血両虚、気陰両虚、脾虚湿阻、腸腑不通、脾胃虚寒、湿熱内蘊、気滞血瘀、脾腎陽虚、肝腎陰虚、気虚血瘀等と多種の証型に分かれるが,“脾虚”が77%を占める。
だから腸管切除の手術をすると術後には,乏力、神疲、便溏、納呆(食欲不振)、腹脹等が起こり,ますます后天の本である脾虚は重くなる。
そのため清陽不升,濁陰不降となり,邪濁が腸道に積聚されて,癌転移もしやすくなる。
中医の大腸癌の治則は,健脾益気が基本である。
     大肠癌的中医治疗 より

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