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脾虚湿阻による盗汗

盗汗(寝汗)の色々」の記事があります。
ここでは盗汗は陰虚によるものだけではない事を強調しました。
しかしここでも抜けている例があります。
それは脾虚湿阻による盗汗です。
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例l 李某,男,42歳,農民。20O2—06—20就診。
盗汗、自汗が3年余り,已に中薬 100余剤を服したが未だ治らない。
頭重が裹(つつ)む如く,肢体は困倦し,納呆 口膩,陰頭が寒い。
舌苔薄く白膩、質淡,脈は濡緩。
証は湿阻陽虚に属し,化湿運中温陽法を用いて治す。
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処方:(炒蒼朮5 陳皮・茯苓・沢瀉・制半夏・補骨脂4 厚朴3 白豆蔻仁2 生苡仁8 牡蛎7)45
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上方を7剤服し終わって,盗汗は大いに減った,醒后には但頭額に汗が出るのみ,内衣は湿っていない;
頭重如裹、肢体困倦、納呆口膩及自汗等症状も亦倶に減軽した;
惟だ陰頭は仍お寒く,脈、舌は変わらない。
再び原法に菟絲子4 杜仲3gを加えて7剤、服し完って 盗汗、自汗は倶に止り,諸症は均しく解除した。
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例2 杜某,男,36歳,干部。1996—03—16就診。
寐れば汗が出て,醒めれば汗が止り,夢が多い。
已に5年以上になり,中西薬を多方服したが無効だった。
肢体は倦息無力,脘悶 口膩 ,食欲はまだあり,二便は通調している。
舌苔は白膩、質は淡,脈は濡細。
証は脾虚湿阻,営衛失調に属し,化湿運中の法を用いて治す。
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処方:(蒼朮・白朮・陳皮・茯苓・沢瀉4 厚朴・白豆寇仁2 生薏苡仁・黄耆・牡蛎7)45
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上方を 7剤服した后,盗汗はすぐに止り,寐中も亦夢を見ない,精神は漸く振う,但し仍脘悶口膩がある。
舌苔は薄白膩,脈は濡細。
此れは湿濁阻滞,気機不暢の象である。
再び原法にて治す。
上方の厚朴を4gに改め,温中化湿の功を増強する。
又7剤を服完の后,脘悶口膩も亦消除した。
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例3 陳某,男,48歳,工人。1996—08—22就診。
近来夜間の盗汗が継続している。
肢体は倦怠 無力で,納呆、口膩,鼻塞り,喉痒して咳嗽する,舌苔は白厚膩、質淡 ,脈は濡緩。
此れは脾虚湿盛の上に,復た風邪を感受し,肺気失宣,中焦湿阻となった。
化湿運中宣肺の法を用いて治した。
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処方:(炒蒼朮・茯苓・佩蘭・川貝母4 陳皮・白豆蔻仁2 制半夏・杏仁・沢瀉3 生薏苡仁8 桑白皮5 牡蛎7)49
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上方を7剤服した后,盗汗はすぐ止り,食欲が出て,口膩は減軽し,鼻竅は通じた。
惟だ喉痒咳嗽は未だ止らない。
舌苔は薄白膩、質淡,脈濡緩。
此れは余邪未清で,肺気不宣なる故である。
再び原方に白果・桔梗3g を加えて宣肺作用を強め,連服l0余剤にして諸症は倶に除かれた。
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体会
所謂“湿阻盗汗”とは,脾虚にて運化が失常し,湿が内生し,湿濁が気機を阻遏したため,升降失常となり起ったものである。
脾虚湿阻は,多くは生冷酒醴肥甘の恣食に因るか,或いは飢えた時に飽食して,脾胃を損傷し,功能が失常し,津液が敷布されず,湿が内生して起こる。
脾虚湿阻の程度は軽重色々である。
四診の所見より,帰納できる。
口膩、肢体困倦無力は共有の症状で,時には裹むような頭重や,脘悶、納呆がある。
但し其の舌苔は均しく白厚膩か薄白膩で,舌は淡潤,脈象は均しく濡緩か濡細である。
病程は短かければ数月,長ければ数年に達する。
治療時には化湿運中法を応用する。
目的は除邪祛湿にあり,中焦の運化功能を正常にし,升降を適度にすれば,脾気は回復することが出来,衛気の生成も充足される。
衛気が充足すれば,皮膚の開合功能は正常となり,盗汗(或いは自汗)は自ずから無くなる。
此れより盗汗は陰虚だけでなく,脾虚湿阻にもあり得る事である。

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