麦門冬と水腫
補気建中湯は腹水などに使われますが、その構成は白朮・蒼朮・茯苓・陳皮・人参・黄岑・厚朴・沢瀉・麦門冬です。
他の成分が浮腫に使われるのは分かりますが、麦門冬が入っているのは何故でしょうか?
麦門冬は肺の滋陰剤です。
それが何故利尿作用と関係があるのでしょうか?
ほかにも麦門冬の入った処方が浮腫みに用いられる治験例を多く見かけますが、その意図はどこにあるのでしょうか?
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『医級』に味麦地黄丸(八仙長寿丸)という処方があります。
六味丸に麦門冬・五味子を加えたものです。
功能は、滋腎養肺。
主治は、肺腎陰虧による潮熱盗汗,咽干,眩暈耳鳴,腰膝痠軟など。
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ところが《辨証録》にはこの処方が「腎水が衰え,手足が尽く脹れ,腹も腫れて鼓の如く,面目は赤く且つ浮腫み,皮膚へと水が流れ,小便は閉渋して,気喘のため臥すこと能わざるを治す。」となっています。
そして臌脹門には“腎虚によって火動が起こり,肺が虚して皮膚への水流となる。腎水を補えば火は自ら静まり,肺陰を補えば水は自ら通ずる”とある。
これより麦門冬が肺という上源を滋せば、下源の腎水が萌えて気化が起こり小水が通る事が分かる。
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《症因脈治》の人参固本丸は人参・熟地・天門冬より構成されており、これも肺陰虚による小便不利を治す益気養陰が利水に働く例である。
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