« 杏蘇散加減による咽痒咳嗽の治療 | Main | 麦門冬と水腫 »

双極性障害(躁鬱症)

双極性障害(躁うつ病)は、躁状態とうつ状態という、2種類の「病相」を繰り返す病気です。
これらの病相が治った後は、精神的な症状は全くなくなります。
これらの病相が1回で終わることは少なく、予防療法をせずに放っておくと、多くの場合再発し、年と共に再発までの間隔が短くなる傾向があるため、ふつう予防療法を行います。
再発は治療により予防できます。
はっきりした躁状態がある場合は双極 I 型障害と呼ばれ、軽躁状態とうつ状態を繰り返す場合は、双極 II 型障害と呼ばれます。
軽躁状態は、むしろ調子の良い状態と感じるので、双極 II 型障害は、本人や周囲の人にとっては、「うつ病」と感じられます。
しかし、双極II 型障害ではうつ状態が再発しやすいことから、双極性障害に含めているのです。
一方、うつ状態では、一日中、気分がゆううつで、いつも見ていたテレビや新聞にも興味がもてず、何をしても楽しめません。
何も食べる気にならず、何 kg も体重が減ってしまいます。
夜は寝付かれない上、暗いうち目がさめてしまい、過去のことを悔やんだり、自分を責めたりすることばかり考えます。
逆に、食欲が増えたり(過食)、眠りすぎてしまう(過眠)という症状が見られることもあります。
仕事をしようとしても、考えが進まず、集中力や決断力がなくなり、ひどく疲れやすいなどで、とても仕事はできません。
何事もおっくうになり、機敏に行動できません。
場合によっては、じっとしていることができず、立ったり座ったりと落ち着かなくなる場合もあります。
しまいには、もう死ぬしかない、と自ら命を絶とうとする人もいます。
.
躁狂抑鬱症のことを“躁鬱症”と略称する。
其の発作には躁狂と抑鬱の両種の形式がある。
躁狂の発作は躁狂症と称し,情緒が高漲し,自我感覚が良好で,思維は敏捷で,注意力があり言語動作が多い。
これを躁狂の三徴という。
抑鬱症にも三徴があり,情緒の低落,思維の遅鈍と語言動作が鈍いことである。
其の情緒変化は晨重晩軽であり,厳重な者は妄想幻覚がある。
.
中医では“癲狂”と称する。
癲証は沈黙痴呆,言語が曖昧,静にして多喜が特徴であり;狂病は喧擾不寧、躁狂打罵、動にして多怒が特徴である。
二者の症状ははっきりとは分れず,相互に転化するので,癲狂と并称する。
.
癲証には痰気鬱結、心脾両虚の両証がある。
(1)痰気鬱結型は,精神抑鬱,表情淡漠,神志痴呆,語無倫次,或いは喃喃と自語し,喜怒無常,不思飲食,舌苔膩,脈弦滑。
治療は理気解鬱,化痰開竅が宜しい。
(2)心脾両虚型は,神思恍惚,魂夢顛倒,心悸易驚,善悲欲哭,肢体困乏,飲食減少,舌淡紅,脈細無力。
治療は健脾養心,益気安神が宜しい。
.
狂証には痰火上擾と、火盛陰傷の両証がある。
(1)痰火上撓型は,発病が急で先ず性急煩躁,頭痛失眠,両目怒視,面紅目赤があり,突然に狂乱無知となり,屋根に登り,叫罵し,親疏を問わず誰にでも,打人毀物,力が異常に強く,不食不眠,舌質紅絳、苔黄膩,脈象弦滑にして数である。
治療は鎮心滌痰,瀉肝清火が宜しい。
.
(2)火盛陰傷型は,狂病が久しくなり,勢いは漸衰し,疲憊の象があり,多言善驚,煩躁易怒,面紅,姿は痩せ,舌紅少苔,脈象細数である。
治療は滋陰降火,安神定志が宜しい。
癲狂の二証は,常に気血凝滞と関係があるので,証候に拘らず,適当に活血化瘀の品を加入すると良い。
.
‥‥‥
羅正鑫は躁狂症を3型に分けている:
痰火内擾型:急性躁狂症に相当する;
実熱内結(内火熾盛)型:軽躁狂症に相当する;
火盛傷陰型:慢性躁狂症に相当する。
.
抑鬱症は2型に分けている:
⒈肝気鬱結型:軽性抑鬱症に相当し,症状が重ければ急性抑鬱症に相当となる;
⒉久鬱傷陰(気陰両傷)型:慢性抑鬱症に相当する。
.
丁徳正は躁狂抑鬱性の精神病を抑鬱状態に分けて:
心気虚型:(黄芪、党参、白朮、云茯苓、棗仁、北五味子、炙甘草、遠志)で治療;
肝気虚型:(黄芪、党参、竜歯、白芍、山萸肉、当帰、白朮、茯苓、棗仁、炙甘草、柴胡)で治療;
肝気鬱結型:(当帰、柴胡、白芍、鬱金、香附、青皮、路路通、甘松、薄荷、合歓花、甘草、生鉄落、琥珀)で治療;
痰鬱型:(柴胡、香附、鬱金、路路通、滑石、礞石、陳皮、甘草、遠志、枳実、半夏、川貝母、甘松、菖蒲、琥珀)で治療;
腎気虚型:(熟地黄、黄芪、山萸肉、山薬、枸杞子、棗仁、柏子仁、茯苓、竜歯、遠志)で治療。
.
魏善初は本病を肝気鬱滞、痰瘀互結によるとし,疏肝解鬱,除痰消瘀を治療法則とした。
気鬱は寒化するか或いは熱化するか,寒熱交替するか或いは夾雑するか,必らず証によりて施治すべし。
躁狂型の治則は理気柔肝解鬱,清化痰瘀であり,憂鬱型の治則は疏肝解鬱,温化痰瘀である。
.
‥‥‥
『中医症状鑑別診断学』には発癲という項目に収められています。
発癲とは,精神抑鬱,表情淡漠,沈黙痴呆,語無倫次,静而少動的症状を指す。
又"癲疾"、"文痴"、"呆病"、"花癡"等と称す。
発癲は鬱証と鑑別しなければならない。
鬱証の多くは易怒善哭,胸脇脹痛,喉中如有異物,失眠等の症状を現す。
主要な表現は自我感覚の異常だが,自制力が少ないが,神志は尚清明である。
発癲も亦 喜怒無常,多語或いは不語等の症状を現すが,自制能力は失われ,神明は逆乱し,神志不清となる。
発癲はまた発狂とも鑑別しなければならない。
.
【鑑別】
肝鬱気滞発癲: 柴胡疏肝散加菖蒲、遠志、鬱金。
痰蒙清竅発癲: 滌痰湯加天竺黄等。
気虚痰結発癲: 四君子湯合滌痰湯加減
心脾兩虚発癲: 養心湯化裁。

|

« 杏蘇散加減による咽痒咳嗽の治療 | Main | 麦門冬と水腫 »

漢方」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/10949/57510217

Listed below are links to weblogs that reference 双極性障害(躁鬱症):

« 杏蘇散加減による咽痒咳嗽の治療 | Main | 麦門冬と水腫 »