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猪苓湯で咳や不眠が治せるか?

『傷寒論』に次の一文があります。
 319少陰病,下利六七日,咳而嘔渇,心煩不得眠者,猪苓湯主之。
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これを根拠にして不眠症に猪苓湯を使ったという治験例を過去に見たことがあります。
不眠症と猪苓湯の組み合わせはとても奇異な感じがします。
しかし今まで誰もそれに対して異論を差し挟む人がいませんでした。
また咳や嘔にしても、これらの症状と猪苓湯とが対応するとは一寸信じられません。
そこで中国のネットを調べてみました。
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本来、猪苓湯は陽明病の処方です。
 陽明病篇223,若脈浮発熱,渇欲飲水,小便不利者,猪苓湯主之。
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それが少陰病でも使われているのは何故でしょう?
少陰病とは
 (285) 少陰病,脈細沈数,病為在裏,不可発汗。
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病位は少陰(臓)にあり、麻黄細辛附子湯や真武湯が代表処方で、陽を補う温補の処方です。
ところが一方で、少陰篇には猪苓湯に並んで黄連阿膠湯や大承気湯も出てきます。
これらは反対に寒性で瀉性の処方です。
これらの寒瀉の処方が用いられるのは少陰にある病邪を陽明(腑)の位置から排除しなければならない緊急を要する場合だからです。
病邪は少陰腎経にある湿熱です。
319条では、猪苓湯はこれを陽明胃経や太陽膀胱経から排除しようとしています。
腎経の湿熱が除かれれば下痢も咳も嘔渇も心煩不眠もすべて起こり得ないのです。
それで猪苓湯が司るのは水熱互結・陰傷の証とされています。
猪苓湯が直接に下痢や咳や嘔や不眠を治すのではありません。
猪苓湯はあくまで湿熱を除き、併せて陰血を補う方剤です。
それを昔の人は臨床で上手に応用していたという事です。
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 劉懐徳医案:患者王某某,男,60歳。
生来体が弱く,煙草を嗜み,感冒にかかり咳嗽すること1月余り,前医はエリスロマイシン、魚腥草で四五日治療したが無効だった。
症状は咳嗽と少し黄色がかった白痰が,咯出しにくい,口は微渇,胸悶,舌紅無苔にして津液が多く、脈は細濡である。
私は初め表邪の入裏化熱により,肺胃の陰を耗傷したものと考えて,沙参麦門冬湯加減を用いた。
薬后はただ諸症が減らなかっただけでなく反って気短となり,痰も粘膩稠白となり,食を欲せず,大便は溏となった。
更に仔細に熟考して,これは《傷寒論》に云うところの水熱互結の咳嗽ではないか!
そこで潤燥清熱利水を図るべく処方した。
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 猪苓湯:阿膠30g,猪苓12g,茯苓1Og,沢瀉6g,滑石24g
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上方を服して2剤の后,諸症は大いに減り,舌苔は紅潤となり,脈は細緩となった。

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