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三叉神経痛と漢方

三叉神経痛の漢方処方には余り適当なものがありません。
何故ならパーキンソン病などと同様に、病機の解明がし難いからです。
この度は 李可の書 にヒントがありました。
三叉神経痛を火不帰原証と弁証して傅山の引火湯を使用した例が挙げられています。
火不帰原とは、腎の陰陽(水火)のバランスが崩れて陰虚陽亢となって陽火が腎水へ帰らない状態のことです。
この場合の陽火とはまた“虚火”でもあります。
そうなると虚火は衝脈に沿って上奔し、顔面を攻撃します。
それは「頭痛、頭暈,牙痛、歯浮,鼻衄、歯衄,目赤如鳩,面赤如醉、心悸暴喘、耳鳴如潮、口舌生瘡、咽痛如火灼等」などの症状となって現れます。
中医学では“病程愈久,病機愈顕”(病程が長引くほど、病機は顕在化する)といいます。
また「病機既明,当用“甚者从之”之法(病機を明らかにした以上、甚だしきものはそれに従う)”との原則に則り、腎の虚火から治療しなければなりません。
ここで用いられるのが傅山の引火湯(熟地90 塩巴戟肉・天麦冬各30 云苓15 五味子6)の加味方です。
加味するのは虫類(全虫12只、蜈蚣2条)と細辛で、これは少陰に入り伏寒を駆逐し、兼ねて火鬱を発する意味があります。

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パーキンソン病と漢方2

パーキンソン病と漢方」という以前の記事で張錫純が中風の一種として、宗気と宗筋の病として治療しているのを紹介しました。
黄耆と山茱萸を最大限利用するのが氏の方針ですが、処方が複雑でいまいち納得できませんでした。

この度は中医 李可の書で「腎気大衰,腎陰匱乏,任督空虚。精気不能上達」すなわち“上盛下虚”が病機であるとの例が挙げられています。
用いられている処方は大定風珠に黄連阿膠鶏子黄湯を合わせ、更に虫類で熄風し、腎四味(枸杞子、菟絲子、塩補骨脂、仙霊脾)で腎気を鼓舞している。
これだと理論が明快で理解できます。
李可が多用するのは竜骨・牡蛎・磁石などの重鎮物や虫類(全蠍・蜈蚣)です。
この分野の薬物については日本では余り研究がなされていません。
選択された処方は
 亀鼈二膠各10(化入),生竜牡(搗先煎)、磁石(先煎)、白芍、腎四味、定風丹(首烏、白疾藜子)各30,阿膠18(化入),麦冬12,五味子10,黄連、油桂各6,炙草15,葛根60,全虫12只、蜈蚣2条,研末冲服,遠志12,鶏子黄2枚(分冲)。

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五十肩(肩周炎)

“五十肩”の原因については風寒湿で説明され、候補の処方に例えば独活葛根湯などが挙げられている。
しかしそれでは効果が得られないので次には血淤や痰湿も登場する。
私もブログで「指迷茯苓丸は肩周炎の神方」というのを紹介した事がある。
珍しい処では、柴胡桂枝湯の応用もありました。
例えば『燕山医話』では王大経が「柴胡桂枝湯+白芥子・川烏・草烏・附子・虫類薬」を報告している。

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白朮(ビャクジュツ)の便通作用2

先の「白朮(ビャクジュツ)の便通作用」では、これを「運脾行津法」という理論で説明をしましたが、私の認識不足で“脾”だけにしか目が行っていませんでした。
この度は『名中医李可Dr.の急病重病難病臨床事例と理論』を読んでいて関連する一例を見つけました。
これにて脾と肺の両方によって大腸の生津潤便がなされる事が理解されました。

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もっと使って!生化湯

わが国では余り使われていないけれど中国や台湾ではごく一般的に使われている処方に生化湯があります。
ひと頃は産前に当帰芍薬散を飲むことが必須であるように宣伝されたことがありましたが、産後の養生については余り問題にされませんでした。
このような良い処方はもっと使うべきだと思うので『名中医李可Dr.の急病重病難病臨床事例と理論』より引用して紹介します。

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盗汗についての思い

もう、ん十年も前、遥か昔のこと、私はまだ20代でした。
季節は梅雨明けの頃、ふとした風邪がなかなか治らなくて売薬を飲んで数日休んでいました。
毎晩のように蒸々と寝汗が出て、下着も通るほどでした。
夜だけでなく日中も少しずつ自汗があったかと思います。
ために体力の消耗は激しく、食欲はなく、立ち上がると眩暈がしました。
寒気は殆ど感じなかったけれど微熱がずーっと続いていたようです。
思い余ってとうとう大きな病院で診察を受けました。
病名はリューマチ熱という診断で、即日入院となりました。
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今の私ならこう考える。
あの時もし漢方(中医学)の理解があれば、あの熱を“陰火”ととらえて甘温除大熱の法(気虚による大熱を甘温で除く)を採っていただろう。
そして老中医李可による「補中益気湯+来復湯加減」を試していただろう。
(人参・白朮・当帰・陳皮・大棗・柴胡・升麻・甘草・生姜+黄耆60 烏梅・山茱萸・生竜骨・牡蛎30)
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そうすればリューマチ熱という病名にはならず、ただの夏風邪で済んだかもしれない。
病名というものは恐ろしいもので、一旦決定するとそれから先は神聖な医学の領域となり、素人の云々できるものではなくなるかの如しである。
そして例のごとく、ステロイドによる治療が開始されたのである。
これとよく似た例が最近あった。
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私の従弟がやはり盗汗に苦しみ、長い間その原因が分からなかったが、結局リンパ腫が見つかり、悪性リンパ腫と病名が決定された。
これも若し漢方的に処置されていたら「盗汗」という症候名だけで何かの漢方処方で片付いていたかもしれない。
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また私の妹だが、腹満便秘で食事が進まなくなった時に病院で検査したら大腸癌と診断され、即手術となり、今も抗がん剤治療を受けている。
若しの話ばかりだが、これも若し適切な漢方処方があてがわれていたら「腹満」だけで症状が解除され、大腸癌は発見されず何年かが過ぎるのかもしれない。
症候が病名に置き換わると以後の命運が大きく変わることがあるのではないかと思うのです。
慶應義塾大の近藤誠医師が「癌の多くはガンモドキである」といっている事が分かる気がする。
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名中医李可Dr.の急病重病難病臨床事例と理論』には重症の癌が中医学で治っていく例が沢山載っている。
ましてなりがけの癌なら、一般病名の下に治っていく事が多くあるのではと思う。
そんなに癌になりたいのかと思われるほど、大衆は癌の検査をしたがる。
一般病名で済むなら、なにも癌治療を望まなくとも‥‥‥。
運が良ければ一般病名で治る事によって、癌への移行は止められるかも知れないではありませんか。

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奔豚とパニック障害

昇陥湯、補中益気湯を使うときの注意」に挙げた例は、胸に痰淤が貯留し胸悶痛を起こしている患者に瓜呂・枳実などの瀉剤を投与し、大気下陥を引き起こさせ呼吸困難・危篤状態にさせるという誤診をしたものを救うために、「昇陥湯と丹参飲」を合方して呼吸衰弱から回復させた。
だが昇陥が行過ぎて“提脱”を起こさせてしまった。
“提脱”とは「臍の下が動き、時々気が心臓に上がってきて、心悸を催す」いわゆる“奔豚”を起こしたのである。
これは腎気という根が無いのに昇提させ過ぎたから「腎気浮動、衝脈不安」となったのである。
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さて、ここでハタと気がついた。
パニック障害という病気と“奔豚”との類似である。
以前相談を受けたことのあるパニック症の患者さんの呈した「心悸・不安」の症状は“提脱”の結果とよく似ている。

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酸棗仁湯で不眠症が治るか?(2)

以前、「酸棗仁湯で不眠症が治るか?」というのを書きました。

その意図は「病人や高齢者などの体力を消耗しない人達の日常的不眠に対して酸棗仁湯を使うのは間違いではないか?」というものでした。
説明不足を補うためにもう一度続きを書きます。
酸棗仁湯は《金匮要略》の「痺虚労病脈証并治方」に出てくる処方です。
説明に「肝血不足,虚煩不眠証」とあります。
この“虚煩”について考察してみます。
労働や旅行などで疲れ過ぎて、却って眠れない経験はありませんか?
或いは疲れて直ぐに眠りに入ったのはいいが、夜中に目が覚めてそれきり再び寝付くことが出来ず悶々としたという経験はありませんか?
こういうのが“虚煩”ではないかと思うのです。
急性の虚労病のひとつです。
私も最近の夏の暑さにバテバテで直ぐに寝入ったけれど、夜中に途中覚醒して朝まで眠れない事がしばしばあります。
こういう時などに酸棗仁湯が合うのではないかという気がしますが如何ですか。

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呉茱萸の修治(湯洗)

呉茱萸は呉茱萸湯や当帰四逆加呉茱萸生姜湯に含まれる薬味のひとつですが、日本では修治がなされているだろうか?
名中医李可Dr.の急病重病難病臨床事例と理論』の中では呉茱萸を使う時には湯で九洗せよと繰り返し念を押している。
『傷寒論』では呉茱萸湯方の所で、呉茱萸一升(湯洗七遍)となっている。
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中醫クリニック・コタカの小髙修司氏は『呉茱萸は苦みやえぐみが強く、一般には6g 以下の使用量であるが、これも『傷寒論』の記述に従い「七回の湯通し」をすることで、著効が得られる15g の薬量服用を可能にしてある』と体験を記している。
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そこで私は実験をしてみました。
呉茱萸少々を茶漉しに入れ、茶碗に用意した熱湯200㏄程に漬けたり上げたりを九回繰り返してみました。
果たして洗液は苦く独特の香りがします。
一方洗われた呉茱萸の表面には苦味も香りもありません。
しかし噛むと中にはやはり苦味と香りが残っていますが半減しています。
この修治の意味は何であろうか?
思うに呉茱萸の実の表面の成分とは違った、中の方にある成分が有効成分なのかもしれない。
若しそうだとしたら、呉茱萸には是非とも七~九回湯洗したものを使ってもらいたい。
そうすれば呉茱萸湯や当帰四逆加呉茱萸生姜湯の味はずっと飲みやすくなるだろう。
全くのところ、この二つの処方の味ときたら飲めたものではないのだから。

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