« November 2013 | Main | January 2014 »

桂枝は衝逆を治す???

日本の古方家の元祖・吉益東洞は『薬徴』で「桂枝:主治は衝逆なり,旁治として奔豚頭痛、発熱悪風、汗出身痛がある。」と述べ、主治と旁治を強調している。
主治を強調するあまり「桂枝の本が解肌(傷寒表虚)であるとは,仲景氏の意に非ざる也。此れは誤入文であるから採用しない。」とも云っている。
これを最初に読んだ人は皆ビックリ仰天しただろう。
江戸期の停滞した漢方家の尻を叩くにはこれ位刺激的に云わなければならなかったのであろう。
東洞の発明は間違っているが与えた衝撃は大きかった。
それを契機にして日本の漢方は大きく進歩した。
しかし今なお東洞の説を信じて疑わない方々もネット上にはおられる。
それは“病機”というものを理解しないためであろう。
どうして衝逆が起こり、どうしたから衝逆が収まったという機序のことである。
《陰寒の気》が《三焦の通り道を塞いだ》から《行き場を失った陽気が衝逆した》のであり、桂枝が《陽気を通じさせた為に三焦の水道が通調して》衝逆が収まったのである。
やはり桂枝の効は“通陽”にあり、”降逆”はその結果に過ぎない。
結果を強調する余り病機がすっ飛んでしまったのである。
中国のネットで見付けたのだが、湯本求真の《漢皇医学》には「桂枝湯証の腹証は‥‥‥腹直筋の攣急は必ず右側に現れ,左側には現れないかあっても軽い,また気の上衝は必ず右側に沿って発し、左側は少ない。」と書かれているそうだ。
それは「人体の右側が陽で左側は陰」だから、右側の陽経である三焦の水道が水邪によって塞がれて腹直筋の攣急が起こり、気が上衝するのではないかと説明している。
日中合作の成果かも。
       人体脏腑能量循环

| | Comments (0) | TrackBack (0)

槐米・槐花・槐角の相違は?

もうひとつ『中医臨床』v34-4 に猪越恭也氏が潰瘍性大腸炎に槐角丸を応用する例が出ていて大変斬新な見解です。
槐角丸に使われているのは槐角であり、日本で流通しているのは専ら槐米の方である。
両者には幾らかの相違がある。
槐米は槐樹の蕾で、槐花はその花、槐角はその実である。
同一物の採取時期の違った生薬である。
ともに性味は苦・微寒、肝と大腸経に帰し、凉血止血の作用がある。
吐血、鼻血、便血、痔瘡出血、尿血、崩漏などの実熱証に応用される。
ただし槐米・槐花は止血作用に優れ、槐角は清熱の力が優れ且つ潤腸作用がある。
こんな微妙な差異にこだわるのは我のみか。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

開局申請てんまつ記

家の改築に先立って薬局の廃止を届け出た。
今度はまた薬局を新規に開かなければならない。
それで開局を申請する事になるのだが、思わず手間取った。
それは「処方せん薬」について、こちらの思い違いと保健所の無知とがあったからです。
処方せん薬とは何か、双方共それを知らなかったので話が難航した。
私は最初「処方せん薬とは医師の発行する処方せんに記載されている薬」と単純に考えていた。
だから医師が処方せんに「当帰芍薬散」と書けば、当帰・芍薬・・・と構成薬草の全てが「処方せん薬」だと思っていた。
そうすると「処方せん薬はみだりに分割販売してはいけない」という薬事法に触れて当帰も芍薬も売れなくなる。
そんな筈は無いとネットを調べて、どこかで「漢方薬は例外である」というのを読んで、では売れるじゃないかと開局申請書を書いて出した。
ところが保健所から待ったがかかった。
「処方せん薬は分割販売出来ない」し、「小売するには薬草毎に製造許可を取って小分け容器に入れなければならない」と。
そんな大げさな話になるとは思ってもいなかったので「薬剤師には零売(分割販売)の権利があるはずだ」と反論した。
保健所では上の方に聞いてみるからといって日にちばかりが経過した。
話がそれ以上に進まないのでまたネットを調べてみた。
するとWikipediaに「処方箋医薬品には薬理作用が強い薬剤や発売後期間を多く経ていない新発医薬品などが指定されており、一方で経口投与のビタミン剤や漢方薬などは医療現場で繁用されているにも拘らず指定されていない。」とある。
また「非処方せん薬のリスト 」という北海道医師会のページがある。
それを見ると、何と当帰も芍薬も、それこそ全部の薬草とエキス剤が非処方せん薬として載っているではないか。
やはり漢方薬は例外だったのだ。
そのアドレスを示して保健所と折衝したところ、今度はあっさりと申請書が受け入れられた。
保健所の人も詳しい事は知らなかったらしい。
また私も「処方せん薬」と「非処方せん薬」の区別を知らなかった。
医師が処方せんに書いても、それがそのまま「処方せん薬」ではない。
法律で規定される「処方せん薬」とは「処方せん薬のリスト」に載っているものに限られる。
それ以外のものは「非処方せん薬のリスト」に載っている。
何の事はない、リストが決め手なのである。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

柔肝とは

最新号の『中医臨床』v34-4 には「頑固な眩暈治療」を“柔肝熄風”によって治すという素晴らしい治験例が載っています。
熟読すればするほど薬物に対する知見が得られます。
柔肝とはまた養肝ともいい、肝陰虚・肝血不足の治療方法である。
症状としては「視力減退,両眼干渋,夜盲,頭暈耳鳴,或睡眠不熟,多夢,口干津少,肢体麻木,脈弦細等がある。
常用薬物は当帰、白芍、地黄、首烏、枸杞子、女貞子、旱蓮草、桑椹子 等がある。
(時には肺への滋水性がある麦門冬や沙参なども間接的に加えられる。)
根拠となるのは《類証治裁》の“肝為剛臓,職司疏泄,用薬不宜剛而宜柔,不宜伐而宜和。”という行で、これより「肝臓は柔を以って補と為す」といわれる。
         柔肝

| | Comments (0) | TrackBack (0)

家が建ちました

七ヶ月間をかけて家が新築され、無事に入居しました。
今までの薬局は廃止したので、これから新たに開局の届けを出さなければなりません。
それで保健所とのやり取りで色々な事が分かりました。
私が願うのは《漢方薬の分割販売》です。
処方箋調剤はする気が無いので、薬局でなく医薬品販売業でも良いかなと思いましたが、それだと取り扱い出来る薬草の品目が少な過ぎて駄目です。
やはり薬局にしなければ医療用薬品である当帰や芍薬は扱えません。
しかし薬局にすると処方箋の調剤受け入れが前提です。
そこで調剤薬局にはするが、保険薬局にはしないという方法を取りました。
つまり処方箋の調剤をするとしても保険扱いにはならないで実費になります。
実費を払ってまでして処方箋調剤を頼みに来るお客さんは居ないでしょうから、実際には医療用薬品を販売するだけの調剤薬局ということになります。
このような形態の薬局は全国でも殆ど無いでしょう。
これが許可されれば、これで天下晴れて 誰にも邪魔されないで「好きな漢方専門薬局」を営むことが出来ます。
薬局の構造とか備品とか、もう少し整備しなければならないので開局は来年の初めになるでしょう。
ブログのプロフィルの写真は、新築の家の隣にあった“離れ”を薬局にと改造したものです。
はなはだお粗末で物置のようですが、あと数年の仕事にならこれで充分でしょう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

参耆地黄湯と腎炎

参耆地黄湯は清·沈金鰲の《沈氏尊生書》に出てくる処方で、六味地黄湯から沢瀉を去り、人参、黄耆、姜、棗を加えたものである。
従って気陰両虚に用いられる処方である事が分かる。
これが慢性腎炎によく応用されている事を紹介したい。
例えば『張琪腎病医案精選』では参耆地黄湯に養血活血・解毒泄濁薬を加えたり、瀉湿濁・解毒活血薬を加えたり、活血解毒薬を加えたりして各種の慢性腎衰竭を治療している。
基本は益気養陰・健脾補腎法ではあるが、糸球体濾過が悪くなる事よりこれを“”の蓄積と考え、黄耆の補気托毒・排膿生肌の作用に期待している事が注目される。
験案挙例
  劉某,女,21歳,2005年7月2日初診。
患者は“腎病綜合症”になって1年の病歴がある。
刻診:眼瞼及び双下肢に軽度の水腫があり,乏力・腰困を伴う。
平素から怕冷と易感冒があり,尿は常に蛋白+++,潜血++を示し,舌は淡胖,苔白,脈は沈細である。
肺腎の気虚兼血瘀と辨証される。
よって治法は補益肺腎・祛風活血とする。
処方:生黄耆・山茱萸・山薬・茯苓・防風・蝉蛻・竜葵・白茅根10 党参・熟地黄・菟絲子・青黛5 牡丹皮・沢蘭3
ステロイド剤による治療を平行して当処方を3剤にして,3日后の再診では,元気が出て,乏力は減軽した。
此の方の加減を運用して8ケ月余り治療して,症状は消失し,尿検が正常となった。
          戴恩来老师运用参芪地黄汤经验 より

| | Comments (0) | TrackBack (0)

女貞子の修治をする

北陸は今日も一日みぞれだった。
天候が悪いので乾燥の出来が気になるが、女貞子が切れたので修治をした。
まず女貞子1Kgに日本酒100㏄ほど入れてかき混ぜ、吸収するのを待ちアルミの蒸篭(せいろ)二層に移す。
それを約30分ほど強火で蒸す。
すぐに部屋中に独特な臭いが漂う。
更に30分ほどそのままにして熟成させ、蓋を開け、予め用意しておいた新聞紙を敷いたトタン製のバット2枚に開ける。
均等に広げて後は乾燥するのを待つ。
女貞子は甘苦兼酸の平薬で除熱の性質があるが、一方で益陰の性質もある。
この益陰の性を強めるために酒蒸の修治をする訳である。
家が新居になって、蓄熱暖房が入って温かく且つ乾燥している。
この環境なら何時間か室内に放置すれば、外で寒気に曝すよりも早く乾燥するかもしれない。
初めての試みである。
そして思ったのだが、こんな事をして薬草を調えているのは、広い世間でも自分だけかも知れないと。
このままでは漢方が亡びる」と懸念するのは間違いだろうか?
エキス漢方ばかりが幅を利かせている現在、若い人から薬草を煎じるとはどんな事かと質問をされる事もしばしば。
この狭き門より入る人は居ないのか、と嘆く。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« November 2013 | Main | January 2014 »