参耆地黄湯と腎炎
参耆地黄湯は清·沈金鰲の《沈氏尊生書》に出てくる処方で、六味地黄湯から沢瀉を去り、人参、黄耆、姜、棗を加えたものである。
従って気陰両虚に用いられる処方である事が分かる。
これが慢性腎炎によく応用されている事を紹介したい。
例えば『張琪腎病医案精選』では参耆地黄湯に養血活血・解毒泄濁薬を加えたり、瀉湿濁・解毒活血薬を加えたり、活血解毒薬を加えたりして各種の慢性腎衰竭を治療している。
基本は益気養陰・健脾補腎法ではあるが、糸球体濾過が悪くなる事よりこれを“毒”の蓄積と考え、黄耆の補気托毒・排膿生肌の作用に期待している事が注目される。
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験案挙例
劉某,女,21歳,2005年7月2日初診。
患者は“腎病綜合症”になって1年の病歴がある。
刻診:眼瞼及び双下肢に軽度の水腫があり,乏力・腰困を伴う。
平素から怕冷と易感冒があり,尿は常に蛋白+++,潜血++を示し,舌は淡胖,苔白,脈は沈細である。
肺腎の気虚兼血瘀と辨証される。
よって治法は補益肺腎・祛風活血とする。
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処方:生黄耆・山茱萸・山薬・茯苓・防風・蝉蛻・竜葵・白茅根10 党参・熟地黄・菟絲子・青黛5 牡丹皮・沢蘭3
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ステロイド剤による治療を平行して当処方を3剤にして,3日后の再診では,元気が出て,乏力は減軽した。
此の方の加減を運用して8ケ月余り治療して,症状は消失し,尿検が正常となった。
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