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老人性皮膚掻痒症と四物湯加味

以前の記事で「風掻痒(苔癬様の皮膚掻痒症)」というのを書きました。
あの時は治皮膚掻痒症妙方にて私の「腿の裏に小さくポツリと出た赤疹」は数日で治癒しました。

ところが今度は反対側の腿の辺りに、カサカサした部分が出来て、そこが衣類に触れると痒くなった。
どうも老人性皮膚掻痒症のようだ。
この程度のものなら牡蛎や珍珠母などの重鎮熄風の薬は不要だろう。
それよりも乾燥性を先に治さなければとネットを探してみたら出てきたのが四物湯加味です。
なるほど老人の皮膚は血虚で乾燥性です。
血虚なら補血をしなければなりません。
中医の補血方法には二つあります。
「益精生血(精生血)」と「健脾生血(水穀生血)」です。
脾胃が健全で食欲があれば前者の益精生血法を取ります。
若し食欲が無ければ後者の健脾生血法を取ります。
選んだのは
四物湯加味 (熟地黄・当帰・白芍・丹参・川弓5 刺疾藜7 蝉衣・防風3)38
これは味があっさりしていて比較的飲みやすかった。
さてその結果は、1剤にして痒みが収まってきたのが分かった。
2剤にして効果が確実となり、後数剤があれば皮膚のカサカサも少なくなるだろうと思われる。
四物湯は“婦人科の聖方”と云われているけれど、どうして老人にも適応が広いと考えられます。
何故なら四物湯は“益精”による補血法ですから。
書き忘れましたが四物湯加味の先に、成分的には類似の当帰飲子exを飲んでみましたが、これはさっぱり効きませんでした。

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独活寄生湯加減と肩周炎

江戸時代の漢方医、亀井南冥の言葉に『医は意なり、意は学より生ず、方に古今なく、要は治を期す』というのがあります。
この「医は意なり」という言葉を上田秋成は「医は意(こころ)なり」と訓み、誠心誠意、真心を持って、親切に奉仕することだと解釈していますが、私は長く腑に落ちないでいました。
そんな時に丁度 素晴らしい治験例に出会いました。
独活寄生湯といえば名の通り独活を主薬とした処方で、主に腰脚痹痛を治す下半身の薬です。
何とこの主薬を羌活と入れ替えて「羌活寄生湯」とし、薬効を上焦へ向けさせ、また肉桂を桂枝に替えて同じく“引薬上行”を図り、更に附子と鶏血藤を加えて“舒筋活絡”を強化するという方法で五十肩を治療したという報告です。
独活寄生湯加減
(羌活・桑寄生・秦艽・防風・川芎・党参・杜仲・牛膝2 当帰・茯苓・熟地・白芍2.5 鶏血藤3.5 附子・桂枝1.5 細辛・甘草1)34.5
ここでふと思ったのです。
これが「医は意なり」という事ではないかと。
即ち「医やすには方意(処方の意味するところ)を知らなくてはならない」と云う事ではないかと。
葛根湯医者という言葉があります。
これも本当の名医を指す場合と薮医者を指す場合があります。
名医は幾つかの病気を平凡な葛根湯で治す事がある。
それは葛根湯の真の方意を知っているからそれを応用しているのです。
薮医は葛根湯はありふれた処方だから副作用も大してあるまい、「当たれば幸い」とその場を濁す。

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頚椎症と活絡効霊丹加味

頚椎症の漢方治療に活絡効霊丹加味を挙げたことがあります。
活絡効霊丹の応用3
この度は『活絡効霊丹加味治療頚椎病89例療効観察』という報告がありましたので紹介します。

中医証侯辨証では次のような5分類がなされています。
1.風寒湿痺型12例
2.気滞血瘀型43例
3.痰湿阻絡型25例
4.気血虧虚型6例
5.肝腎不足型3例
治療方法は 活絡効霊丹(丹参15 制乳香・制没薬・当帰10)45 を基本方としています。
風寒湿痺型 加羌活10g、桂枝6g;
気滞血瘀型 加川芎10g、紅花6g;
痰湿阻絡型 加僵蚕10g,半夏10g;
気血虧虚型 加黄芪30g、党参15g;
肝腎不足型 加山萸肉10g、牛膝15g
治療結果は 1.風寒湿痺 2.気滞血瘀 3.痰湿阻絡 の三型に対して療効顕著としており、4.気血虧虚型 5.肝腎不足型 には余り効果がありません。
討論分析
頚椎病は中医では血瘀証の痺証に帰属します。
活絡効霊丹は張錫純の《医学衷中参西録》に出てきます。
処方中の丹参は活血化瘀で、これに配当されている当帰は養血活血で、両薬の合用により補中に攻有り、攻中に補有りで「攻補兼施」となり活血化瘀の功能を増強しています。
更に乳香・没薬を配しているのは、これらの気味が「香竄入絡」で、経絡を通し、気血を暢行させ、薬力を病所に直達させるからです。
※経絡が閉塞して不通となった場合、乳香・没薬のような香りの強い樹脂類を使って「香竄入絡」させるか、土鳖虫・地竜・全蠍・烏梢蛇・蜈蚣などで「捜剔竄透」させるかのどちらかの方法を取ります。
また次の加減方も報告されています。
葛羌活絡効霊丹(葛根10 羌活・当帰・丹参・乳香・没薬5)35
風寒+桂枝・防風10 
上肢麻木+黄耆30 白僵蚕10 
腎虚+続断・菟絲子30
気血両虚+黄耆30 当帰15
五虫活絡効霊丹合大補元煎(庶虫・乳香・没薬・当帰・人参・地竜・杜仲・山茱萸10 全蠍・烏梢蛇・甘草6 熟地12 丹参・山薬・枸杞子15 蜈蚣1)

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薬草漢方の終わり

二日続きのお通夜でうつったのか、私ものど風邪にやられました。
2014/03/08 夜 少しの寒気と咽痛があったが何も手当てをせず。
03/09 風寒鬱熱とみて、朝からこれを飲む。
六味湯2(荊芥・防風・貫衆・金銀花4 陳皮・白僵蚕・桔梗3 生甘草・薄荷2)29
夜には咽痛はかなり緩和されたが背中の寒気はまだあり蓄煖に背中をくっつけている。
代わって鼻水が出始める。
夜中に鼻水で仰向けになったままでしか寝られない。
最初から「六味湯2+黄耆・白朮5」を飲むべきだった。
03/10 その代わりに中葯の「辛岑顆粒」を飲み始める。
(黄耆8 黄岑・荊芥・白止・桂枝・蒼耳子・石菖蒲・白朮・防風3 細辛1)33
03/11 大分鼻水は少なくなり、代わって無痰の咳嗽が出始めた。
六味湯加味を飲み始める。
(桑葉・白芍5 荊芥・防風・桔梗・白僵蚕・杏仁・前胡・百部・牛蒡子3 蝉衣・甘草2)40
お陰で症状は軽快した。
振り返ると「六味湯」の証が中心にあり、それを少しずつ加減して今回の風邪は卒業しそうだ。
それで思うのですが、私は手元に原料は何でも持っているから六味湯は加減でも何でも煎じ薬で簡単に作れるけれど、一般の人はこれを求めても手に入れることが出来ない。
六味湯の代用に出来るエキス製剤は何かあるだろうか?
ちょっと見当たらない。
葛根湯、小青竜湯、柴胡桂枝湯、参蘇飲、銀翹散などのどれもピッタリ来るものはない。
薬草を処方する医者も稀有である。
それでは六味湯の処方は見つけても手に入れることが出来ない。
中国へ行って中医師にでも診てもらわないことには不可能だ。
薬事法の改正以前には街の薬局で簡単に作ってもらえたのに‥‥今はそれが出来ない。
私が再開しようとしている薬局でも作ることは出来ない。
あり得ない事だが、あとはどこか奇特な医師が処方を切ってくれるのを待つ以外にない。
薬草漢方はこうして終わっていく。

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急性腎盂腎炎と柴葛解肌湯加減

彭某,女,30歳。
尿頻尿急尿痛を反復すること1月,発熱腰痛半月,2013年1月4日、我が院の急診科へ入院。
体温39.3℃。
“急性腎盂腎炎”と診断され,西医の治療を受けたが体温は37.3℃~39.7℃の間を行き来する。
1月5日に腎内科へ転入して治療することになった。
入院時の患者は高熱,畏寒,頭痛,全身の肌肉酸痛,腰痛,尿頻尿急,腹瀉は無く,肉眼的に血尿も無かった。
酸水痰涎を嘔吐することが1回あった。
舌紅,苔薄黄,脈細数。
診断:急性腎盂腎炎,太陽陽明合病証。
治療:中医の治療は辛凉解肌,清泄裏熱とし;方は陶氏の柴葛解肌湯加減を用いた。
処方:(柴胡・葛根・黄芩・白芍・羌活・麦冬3 生石膏・山薬10 桔梗・通草2)42
午後三時に服薬を開始し,当晩19:00時には体温37℃になった。
1月6日の血液検査は正常、尿も正常だった。
体温はずーっと37℃前後に穏定している。
2013年1月14日出院。
       古方今用之柴葛解肌湯

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柴葛解肌湯について2

私には思い出すのも辛い症例があります。
昭和46年ですから、私が会社を辞めて漢方専門薬局を開いてから一年後のことです。
妻が3人目の子供を出産した六月の事です。
出産が順調に終わった翌々日ぐらいから妻は突然はげしい悪寒と高熱に見舞われました。
季節がらから言っても悪寒などが来るような時期ではありません。
その悪寒の激しさといったらありませんでした。
初夏なのに上から布団をかぶせ体で覆ってでも震えは止まりませんでした。
その悪寒が一分間ほどで収まると今度は暑い暑いといって発汗と同時に布団を跳ねのけるのです。
まるで話に聞くマラリヤのようでした。
記憶が遠くて部分的にしか憶えていませんが、体温は急上昇しました。
産後で産婦人科に入院中だったので医師はいろいろと検査や処置をしてくれましたが、効果が出なくてその後も数日同じ状態が続きました。
病名も確定せず症状は続くので乳児の世話どころではなく母体の方にかかりっきりです。
妻は体質が頑健な方でしたが、さすがに産後の事でもあり、食事はとれずどんどん衰弱していきました。
私は漢方薬局を始めたばかりの青二才でした。
見舞いに行くと悪寒こそしなくなりましたが高熱が続いており、医師は頭をかしげています。
一週間ほども過ぎましたか、妻の舌を見ますと何と棘状の黄苔が生えているではありませんか。
これは大変な事になっていると内心ひどく慌てました。
そして乏しい頭を痛くなるほど必死でひねりました。
ようやく考えついたのが《傷寒論》陽明病の大承気湯でした。
こんな大剤を使ってもし間違っていたら大変な事になるという危惧の念に襲われつつも、このまま医師に任せておけば妻を失いかねないという思いもありました。
恐る恐る大黄2gで二日間飲ませましたが便通もなく解熱もしません。
そこで浣腸をして欲しいと医師に申し出ました。
医師は腹を診て便秘の様子もないけれど、と言いながらもしぶしぶ浣腸をしてくれました。
そしてかなりの量が出ると、たちまちにして体温は平熱に近くなりました。
出ていた汗も止まり、口の乾きも無くなり、食欲までが出てきました。
舌苔は次第に剥げ落ちて下地が見えてきました。
数日後に妻子は何事もなかったかのように主治医や看護婦さんにお礼を言って退院しました。
危機を脱したものとばかり思っていたのでしたが、帰宅してから程なく今度は微熱が続くようになりました。
近くの内科医に診てもらいましたら検尿で細菌が沢山確認されるとの事で、腎盂炎という診断です。
腎盂炎ならよくある病気だからと左程心配もせずにいたのですが、この微熱と食欲不振がなかなか治らず、乳児に哺乳ができません。
それから一ヶ月間ほど妻は病床から立てませんでした。
この時の情けない思いは今も強く脳裏に残っています。
私もいろいろと煎じ薬を飲ませましたが何一つとして応答のあったものはありませんでした。
漢方でも不可能な事があるのかと、それからずーっと自信喪失と懐疑とに挟まれてきました。
そして今にして思い当たるのが柴葛解肌湯《傷寒六書》です。
当初はマラリヤ(瘧状)の如き悪寒と高熱の繰り返しが2度あり、直ぐに高熱期に移りました。
先に紹介した柴葛解肌湯加減は格好の処方ではなかったかと今にして思われるのです。
(柴胡・黄芩・桔梗・薄荷・金銀花6 葛根9 羌活・白芷3 生石膏・蘆根15 生甘草3 生姜1)
何と40年以上経ってやっと辿り着いた正解かも‥‥‥。
我ながらお粗末な体験です。
退院後に続いた微熱も柴葛解肌湯を加減して使っていればもっと早くに治せたのではないか。
あの時は近所の内科医院が頼りなくて、やきもきしていたものです。
恥ずかしながら反省をこめてこの一文を残しておきます。

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柴葛解肌湯について

日本では一般に浅田家方が用いられていますが、何故でしょうか?
本来なら《傷寒六書》が原本ですから、そちらの方を使うのが普通です。
比べてみますと、
浅田家方(柴胡4 葛根・黄芩・芍薬・桂枝・半夏3 麻黄2 石膏5 甘草・乾生姜1)28
傷寒六書方(柴胡4 葛根・黄芩・芍薬3 羗活・白芷・桔梗・甘草・大棗2 石膏5 乾生姜1)29
浅田方函には「太陽少陽合病、頭痛、鼻乾、口渇、不眠、四肢煩疼、脈洪数ノ者ヲ治ス」とあるだけで、変方した訳は書かれていません。
浅田家方は「葛根湯+小柴胡湯+石膏」の構成で、傷寒六書方の持つ意味とは少しずれがあります。
中医学では柴葛解肌湯の多くは加減方を取り、例えば次のように発展しています。
柴葛解肌湯加減(柴胡・黄芩・桔梗・薄荷・金銀花6 葛根9 羌活・白芷3 生石膏・蘆根15 生甘草3 生姜1)
桂枝・半夏・麻黄などの温薬は見当たらず、冷薬が増えていきます。
浅田方が太陽表証や少陽にこだわるのとは反対ですね。
中医方は外感風寒が発散しきれず、裏に入って化熱証となったものを対象とするからです。
即ち「太陽表邪未尽」の状況ですから、残りの表邪を発散するには「羗活・白芷」で充分で、「麻黄・桂枝」などを使って“傷津”しないように気遣っています。
仮に無汗で悪寒が甚しければ黄芩を去り麻黄を加えるか、夏秋なら紫蘇葉を加えるようです。
私個人としては浅田方は使いづらく、中医方を更に加減して使う方が好みです。

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三叉神経痛と柴葛解肌湯加減

三叉神経痛 《四川中医》(1992,12:21):
某女,22歳。
5年前から三叉神経痛を罹患しており,時に軽く時に重く,遷延するも愈えず。
診見:左半側頭及び面頬の疼痛が忍び難い,焼灼感があり,頭痛部位は時に左時に右へと移り,牙歯・目眶・太陽穴へ牽及し,常に飲食・説話・洗臉に因って痙攣し,痛みが止った后も頭部が昏沈する。
近来は発作が頻劇となり,目眩を伴い,鼻干,耳鳴,口苦と渇,煩躁易怒がある。
舌質は干,苔は正常,脈は弦緊数。
風毒が陽明経筋に入侵した証で,鬱熱が太少両陽に波及している。
柴葛解肌湯加減:
(柴胡・葛根・黄岑・白芍5 石膏10 羌活・白止・桔梗4 甘草・大棗3 蜈蚣1条 地竜7 全蝎2)58
二診:3剤后,痛熱は大いに減ったが,面部は尚軽く微熱感があり,脈弦遅。
上方から石膏を去り黄耆10gを加えて,5剤を再服する。
三診:疼痛は消失したが,唯面肌に時に酸脹を覚える。
原方を間日1剤とし,又半月用いて停薬する。
三叉神経痛への乏しい情報に追加して記憶したい。
          柴葛解肌汤

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