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皮膚病を肺より論ず

喩氏の清燥救肺湯と言えば《医門法律·傷燥門》に出てくる処方で、内科の肺系疾病のものです。
清燥潤肺の功があり、「燥邪傷肺・気陰両傷」の重症が対象です。
燥邪”は中国大陸と違って、湿気の多い日本ではあまり馴染みがありません。
しかし環境的な「外燥」ではなく、体内で起こる「内燥」という状態なら幾らでもあります。
例えば老年皮膚掻痒症がその一つです。
中医学では「血虚生風生燥」がその病機であると云っています。
肺は皮毛の功能を主ると考えるので肺の失調は「肌膚失養」につながり本病を発するとしています。
清燥救肺湯治療単純性老年皮膚掻痒症 には次の様な処方を使っています。
(党参・生石膏・麦冬・阿膠10 胡麻仁・杏仁・冬桑葉・炙杷葉・制首烏・生地5 甘草2)72
単純性皮膚掻痒症
 王某、男、65歳、2005年10月17日初診。
全身の皮膚が掻痒すること3年。
体は健康で、糖尿病、高血圧、心臓病などは無い。
皮疹は出ていない。
体格は痩せ型で皮膚は乾燥しており、引っ掻き傷があり、部分的に軽度に苔蘚化している。
舌赤く津液が少ない。
苔薄白く脈は細弱。
中医の弁証は血虚風燥である。
養血去風潤燥の法として喩氏の清燥救肺湯加減を取る。
(枇杷葉・桑葉・白蘚皮5 阿膠・沙参3 杏仁・胡麻仁4 麦門冬・石膏7 烏梢蛇10)  7剤。
2診: 掻痒は軽減し、睡眠・二便は調っている。続服一週して諸症は消えた。
銀屑病(乾癬)
 呉某氏、男、42歳、2006年9月23日初診。
全身の皮膚には紅斑、鱗屑、掻痒があり、既に4年繰り返している。
体は健康で酒もタバコもやらない。
この所二ヶ月は悪化してきている。
上肢の外側には粟粒大の膿胞があり、掻痒、灼熱、煩躁、口鼻乾燥、干咳無痰、朝起きると額に汗をかいている。
37.9℃の微熱があり、眠りが足らないが、二便は調っている。
舌淡苔薄白、脈細数。
中医の弁証は温燥傷肺、気陰虧虚。
清燥潤肺、益気養陰、少し涼血を図る。
清燥救肺湯合生脈散加減
(桑葉・枇杷葉・阿膠・胡麻仁・杏仁5 沙参・麦門冬・石膏・地黄・水牛角・太子参10 五味子3 甘草2)  5剤。
2診: 灼熱掻痒は明らかに軽減し、紅斑の色も薄くなった。
膿胞も縮小し、乾いている。
体温は正常で力があり、口鼻の乾燥も良くなり、汗もかいていない。
睡眠は良く、二便は調い、舌淡、苔薄白、脈細微数。
続服3週して諸症は消退して病状が安定してきた。
3診: 既に灼熱掻痒は無く、夜も安眠でき体幹四肢、頭面の大片状紅斑や鱗屑は消退してきている。
湿疹
 劉某、女、66歳、2006年11月17日初診。
10年前から下肢(小腿)に湿疹があり、秋冬に悪化し、掻くと汁が出る。
口渇、咽干もある。
小腿は暗紅色の斑丘疹が融合して地図状になっている。
皮膚は肥厚して粗糙、掻き傷やカサブタがあり、フケだっている。
舌質は暗紅、苔薄く脈細。
中医の弁証は陰虧血虚風燥。
滋陰養血去風潤燥の法をとる。
清燥救肺湯加減
(地黄・白蘚皮・夜交藤10 当帰・白芍・胡麻仁・苦参・玄参・麦門冬3 桑葉・枇杷葉・神麹5 猪苓4 甘草2)  10剤。
2診: 掻痒は軽減し眠れるようになった。
上方より夜交藤を去り地骨皮5を加える。続服3週して皮疹の大部分は消退した。
上方より苦参を去り金銭草10を加えて効果を確定的にする。

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