アトピーと胃強脾弱
案三、郭某,男,1歳半
一診:一九七二年五月十一日
患児は生后2个月から顔面に紅斑、丘疹が出来はじめてもう1年以上になる。
普段から消化不良で哺乳期間中はいつも下痢便だった。
長じてからも食べる量は多いが、食后暫くしてから便を催しそれも不消化便である。
身体は消痩で面色は白く、頭皮・顔面には片状の丘疱疹がある。
腹部及び両腿にもまた同様の皮疹があり、淡褐色で滲出液は少ない。
舌苔は薄白、脈証から見るとこれは「胃強脾弱,運化不健,水湿内生,浸淫肌膚」の脾虚湿蘊証である。
健脾理湿法、除湿胃苓湯加減(小児化湿湯と同じ)
蒼朮・陳皮・茯苓・沢瀉4.5 炒麦芽9 六一散6(包) 5剤
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二診:五月十六日
服薬后に大便はまだ稀薄だが皮疹は次第に消え始め、痒みも軽くなり安眠できた。
前方を継服すること5剤。
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三診:五月二十三日
1周后復診すると、皮疹は基本的に消退し、新しい湿疹は出ておらず大便は形をなしてきた。
後は“健脾片”にて効果を鞏固にするようにと言い残す。
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【按語】本例は嬰児湿疹にて中医では胎瀲瘡と称する。
其の成因は「先天不足,胃強脾弱」である。
胃強とは食多量大のこと、脾弱とは運化失職のこと。
それで消化不良となり水湿が内生し,浸淫瘡となる。
病根は脾にある。
故に治療は治脾に重きを置き、脾虚を補って脾弱を強に転ずれば水穀は運化を得て、湿は産生されなくなる。
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[解析] 異位性皮炎(アトピー)は一種の嬰児湿疹であり、中医では"[女乃]癬""胎瀲瘡"といい、《外科正宗》には頭面遍身に発するのは[女乃]癬であり、片状となり、睡臥不安、掻痒がひどいとある。
《医宗金鑑》中では“瀲瘡は嬰児の頭頂や眉端に生じ、痒くて白屑が出、形は癬疥のようである。これは胎中の血熱が生れ落ちてから風を受けたからである。”といっている。
※アトピーの原因は「先天不足,胃強脾弱」であると喝破しているのは注目に値する!
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