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耳の閉塞感

いわゆる耳蒙(耳管開放症)を腎から論ずる事が多いが湿熱からも起る場合がある。
耳蒙治験:周某,女,23歳,公務員。
1997年夏季、感冒にかかり発熱悪寒,治愈后 耳蒙となり,聴力が減退し,両耳が物で堵がったようになった。
時には風に吹かれた樹の葉のざわめきが聞こえる。
ビタミンや竜胆瀉肝丸、磁朱丸で治療したが,症状に変化なし。
双耳の軽度伝導性耳聾。
初診時には已に1月余りも経っており,舌苔は白膩で,黄苔が載っており,脈は弦緩。
経過を見ると湿熱が清竅を上蒙していたもので,治療により表の暑湿は減ったが,上蒙の濁気だけが未だ退かず,清陽が阻まれている。
故に升清降濁法を取り,六和湯※加減を選ぶ。
(党参・茯苓5 炒白朮・藿香・清半夏・木瓜・炒杏仁・厚朴花・石菖蒲・生甘草3 白扁豆10 柴胡2 蝉衣0.5)
5剤を服用して,物堵の感は減軽し,両耳が通った。
その后 冬瓜皮、絲瓜絡二味を加入して,継服すること10剤で,物堵の感と樹の葉のざわめきがなくなった。
まだ聴力が復原しないので,継服すること8剤で,聴力も恢復した。
按:耳は清竅なり,《内経》に“清陽は上竅へ出る”の説がある。
若し清陽が升らず,濁気が上蒙すると,清竅は閉塞する,それで耳蒙や耳鳴等の症が出現する。
六和湯には升清の参、朮があり,又 降濁の半夏、杏仁等がある。
筆者が石菖蒲、柴胡、蝉衣等を加入したのは,清陽の升るを助け,耳竅を開啓する為である。
后用の冬瓜皮は利湿しても陰を傷らず,絲瓜絡は開竅しても気を傷らない。
若し単に相火上越と腎水未充から論治すれば,的中しなかっただろう。
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※六和湯《奇効良方》
(縮砂、半夏、杏仁、人参、赤茯苓、藿香、白扁豆、香薷、厚朴、木瓜各一銭 炙甘草半銭)
六和とは「六気を和す」という意味です。
六気とは「風寒暑湿燥火」のこと、気候の特質をいいます。
この特質の過多や不足が病気の外因として働くと「六淫」と呼ばれます。
夏季の暑気が外傷となり、また飲食の生冷が内傷となって内外から迫られて脾胃の調和を損なわれて発病するのがよくあるケースです。
寒熱交作,嘔吐泄瀉,胃脘痞満,霍乱転筋,頭目昏蒙,倦怠嗜臥,口穢納呆,亦治中酒、傷食等病症。
それでこの処方には脾胃を匡正する薬味が多く使われています。
内の脾胃が調和を取り戻せば外の六気も害をなさないというわけで六和湯と云うのです。
面白いのは「亦治中酒、傷食」とあることです。
飲酒による宿酔いに使えるのです。
宿酔いには、我が国ではもっぱら黄連解毒湯や五苓散ばかりが注目されていますが正しい使い方ではありません。
中医には六和湯もあれば葛花解酲湯もありです。
エキス漢方から離れてもっと大きな流れそのものを見つめなければ本当の漢方は得られないでしょう。

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