むくみ 春沢湯
『中医証候鑑別診断学(2版)』の 157脾虚水停証 の解説は次のようである。
この水腫病の特徴は:頭面及び四肢が水腫し,その腫勢は徐緩であり,浮腫は目窩の下から始まり,朝起きると顔面がむくんでおり,労累后には四肢へと及ぶ,小便は正常かやや少いかであり,腫勢は軽微で,手で圧すと直ぐに戻る,身体は沈重で,食欲が減り,倦怠乏力,呼吸が浅く物言いが懶い,顔色はすぐれず,時には大便稀溏(下痢),舌淡苔少,脉緩弱である。
補益脾胃,滲湿消腫の必要があり、春澤湯(汪 庵《医方集解》) を用いる。
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春澤湯についての情報はネットでも少ない。
《医方集解》のほかに同名の処方は(明・方賢着《奇効良方》)にもあり、内容と効能は異なる。
紛らわしいので今は《医方集解》のものに限る。
春沢湯は五苓散に人参を加入したものである。
組成:人参、桂枝、猪苓、茯苓、白朮、沢瀉。
功効:升清降濁、益気温陽、健脾利湿。
主治:気虚による傷湿,中気不足の癃閉症(尿閉)。
症状:下腹が墜脹し、排尿が不暢、神疲乏力、舌淡苔薄白、脈細弱。
臨床運用:本方は老年人の慢性前列腺炎、前列腺肥大、腎炎、腎積水等の治療に用いることができる。
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この解説にとらわれず、組成から類推すると『中医証候鑑別診断学(2版)』 157脾虚水停証 のような解説も可能となり、これだと日常よく目にする症状だから使う機会が多いと思う。
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先日、若いお母さんが「朝から顔が腫れて、手や脚もむくみ重い」という相談で見えた。
普通は「夕方になると脚がむくんでも朝には元に戻って一番細い」と聞いているので心配だとの事。
食欲は普通にあり、口渇や排尿の異常もなく、ただ冷え性でクーラーが嫌いだ。
こんなありきたりの症状だが、どう弁証すればよいかと考えると直ぐには考え付かない。
脾虚水停証で五苓散に人参を加えればどうかと囁かれると、うーん成る程という気にもなる。
ただの五苓散ではなく、人参を加えたところが憎い。
五苓散だけだと利湿に偏り、補益が無い。
補瀉の兼顧が無ければ完全ではないと思う。
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これは自身の体験であるが、青年の頃の夏に富山の大日岳に上った時のことである。
一気に登ったのはいいが、途中でかなりの口渇引飲をした。
そのために翌日は山小屋で起上がれないほどに体がだるかった。
食欲も無くなり、足がだるくてその日の登山は中止してしまった。
※この時の症状が春沢湯の証にピタリではないかと今思い当たるのです。
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