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ゲンノショウコ(現の証拠)

これって本当に効きますか?
優秀な整腸生薬であることから、イシャイラズ(医者いらず)、タチマチグサ(たちまち草)などの異名を持ち、食中り、下痢、慢性の胃腸病、便秘に効き目があると云われている民間薬です。
よく薬局へ買いに来られるのは、胃腸が弱くて食欲が無いとか下痢気味だとかのお客さんです。
説明しようとしても頭から信じているのでこちらの言う事などは全然聞いてもらえません。
漢方を学んだ人なら、この民間薬信仰に疑いを持って反論を書いても良さそうなのに、今までに誰も書いてはいません。
ウィキペディアによれば、小野蘭山の「本草網目啓蒙(1803)」には「根苗ともに粉末にして一味用いて痢疾を療するに効あり、故にゲンノショウコと言う」という記述があります。そのことから「現に良く効く証拠」に由来しています。
貝原益軒が記述した「大和本草(1708)」にも、ゲンノショウコは「陰干しにして粉末にし、湯にて服す。能くを冶す。赤痢に尤も可也。」と記述されています。
中国ではこの近縁種の老鶴草というのが使われています。
老鸛草《救荒本草》
【薬性】辛、苦,平。帰肝、腎、脾経。
【功効】袪風湿,通経絡,清熱毒,止瀉痢。
【応用】
1.風湿痺証。
本品の辛は能く行散し,苦は能く燥かし,善く疏通する性質があり,袪風湿,通経絡作用を持つ。
風湿痺痛,麻木拘攣,筋骨酸痛を治す。
煎服するか或いは熬て膏とする;或いは威霊仙、独活、紅花等の袪風通絡活血之品を配合する。
2.泄瀉痢疾。
本品は能く清熱解毒して瀉痢を止め,湿熱、熱毒による泄瀉、痢疾を治す。
単用するか或いは黄連、馬歯[艸/見]等を配伍する。
3.瘡瘍。
本品には清熱解毒之功があり、瘡瘍に内服または外用して治すことが出来る。
内服には蒲公英、金銀花、紫花地丁等と同用する;
外敷には老鸛草軟膏《中国薬典》にして,湿毒蘊結之癰疔瘡[病<節-丙]、湿疹、水火[湯/火]傷等を治す。
民間伝説
老鸛草にはあまり人に知られていない伝奇由来があります。
中国の隋唐の時代、有名な医薬学家の孫思[辷貌-一]が四川の峨嵋山上の真人洞へ行き、その洞中で不老長生の丹薬やら難病を治療する妙薬を調製していました。
四川が盆地の気候に属するため、湿度がとても大きいので、医治を求めて山に登ってくる患者の大部分は風湿病(リューマチ)を患っていました。
しかし孫氏には良い方法がなく苦慮していました。
ある日、孫氏が弟子を連れて山に登り薬草を採集していると、突然険しい崖の上に一羽の灰色のコウノトリがいるのを発見しました。
見ればしきりに何か名の知れない小さな草をつついて食べています。
それから重い体をゆっくりと動かして密林の巣へと飛び去りました。
何日か過ぎて、孫氏はまたこのコウノトリがこの草を食べるのに出会いました。
不思議な事に今度はコウノトリは前よりも雄壮で力強く飛んで行きます。
そこで孫氏が弟子に対して言います:コウノトリは一年中水中の魚介類を食べていて、非常に風湿の邪気に感染しやすい。コウノトリが食べることができるからには、この草は無毒である証拠だ。この草を食べた後で飛び方が力強くなったのは、この草が動物を元気にしたのではないか。
すぐに弟子に命じてこの無名の草を採取させ、煮つめて濃い汁を作り、診察しに来るリューマチの患者に服用させました。
またこの薬草を持ち帰って自分で煎汁を作って服用させました。
何日かして奇跡が起こりました。
もともと両足と関節が赤く腫れていた症状がすっかり消えて、野良に出て歩くことまでできました。
うれしいニュースは各地の山地の住民を驚かし、人々は争って教え合いますが如何せん名前が分かりません。
治って全快したリューマチ患者達は孫氏にどうかこの薬草に名前を付けてくださいとお願いしました。
孫氏はしばらく考えて云います:この薬草はコウノトリが知ってたのだから、コウノトリの手柄に答えて“老鸛草”と名付けよう。
※以上、引用したのは「優秀な整腸生薬」でもないし、一般の下痢薬でもないという事を強調したかったからです。
昔から明記してあるのは「痢疾を療する」ということです。
痢疾とは細菌性の伝染病である、コレラ・赤痢・o-157・食中毒などのことです。
中国の文献でも、述べているのは清熱解毒という瀉剤の性質です。
下痢に良いという“くず湯”などのように、補剤のひとつと考えて安易に使用してはならない(平薬ゆえたいした副作用も無いでしょうが)という事です。
そしてもう一つ、風湿病(神経痛やリューマチ)や瘡瘍・おでき類にも応用して貰いたいという事で、これは漢方を学んだ薬剤師がやらなければならない事です。

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