« 麻杏甘石湯は痔に効くか?(1) | Main | 柴胡加竜骨牡蛎湯へのグチ »

麻杏甘石湯は痔に効くか?(2)

ちなみに痔核の成因はどうなっているかを『中医証候鑑別診断学(2版)』から引用してみますと日常的なものは次の二つでしょう。
1.湿熱蘊結‥‥‥飲食不節,多食厚味,醇酒辛辣
2.気血淤結‥‥‥久坐久站,負重運行,婦女妊娠后子宮圧迫直腸肛門,或肝気鬱結
かくして生じた痔核がおとなしくして居れば問題ないのですが、何かの原因で急に腫脹・疼痛・便血などの症状を起こした時には標治法としての対応が必要になります。
どうも、それが麻杏甘石湯が対応できるケースのようです。
だから1.2.の原因治療として麻杏甘石湯を用いるのは間違いで、漢方家はよくこの辺りを心得ておかなければなりません。
また何故ここで麻杏甘石湯でなければならないか、越婢加朮湯では駄目なのか等の疑問が出てくればシメたものです。
日本漢方は口訣ばかりで理論がありません。
では老中医達の治験はどういう理論に基づいているのでしょうか。
劉洪鈞医案
[羽/隹]某,女,24歳,1989年9月4日初診。
分娩后に脱肛を継発して一年になる。
内痔も合并しており,常に脱肛痔が垂れて,肛門は腫脹している。
所見:口渇と微熱があり,胸悶不適,舌質は紅,苔は薄白,脈は浮滑にして数。
処方:麻杏甘石湯加味(麻黄6 杏仁・甘草・升麻・黄岑・黄柏10 石膏30)
半分は内服とし,残りの半分は温めて15分間坐浴とする,1日2回。
服用3剤にして,紅腫は消退し,肛門脱出は引いた。
按語:肺と大腸は表裏の関係にあり,肺熱が下の大腸に移って肛腫痔痛となり,また直腸下垂となったものである。
治療にはただ肺熱を宣散すれば良い。
すなわち「下病上治(下の病を上で治す)」であり,「腑病治臓(腑の病を臓で治す)」の法である。
口渇と微熱,舌質紅,脈浮滑にして数ということは内熱があることを表明している。
胸悶不適とは,肺気不宣を表明している。
本病の病機は「熱壅于肺,肺気不宣」であるが,咳喘するのではなく脱肛痔垂,肛門腫脹を起こしている。
これは肺熱が大腸へ移ったのであるから,麻杏石甘湯を用いて肺熱を宣散したと考えられる。
‥‥‥
麻杏甘石湯が効いた例(2)
陳忠旭医案
李某某,男,48歳。
痔瘡の病歴あり,二日前から肛門が痛み,痔瘡が脱出して,歩行が出来ない。
肛門検査では内痔の脱出嵌頓である。
痔核は暗紫色で,肛縁が水腫し,粘液及び血液が滲出している。
処方:麻杏甘石湯 +延胡索・牡丹皮・桃仁l0
2剤を服したら,疼痛は減軽し,水腫も次第に消えていった。
継服すること8剤で,症状は消失した。
按語:肺熱が大腸に移り,腸絡が淤滞し,痔瘡を誘発したものである。
本案の細部は不祥だがこの他に,咳嗽、口渇、舌紅、苔黄、脈数等があるはずである。
麻杏甘石湯で清宣肺熱するのが本治で,玄胡、丹皮、桃仁を佐薬にしたのは化淤行気のためである。
‥‥‥
宮毅教授による「痔急性発作の治療への麻杏石甘湯の応用」
痔の急性発作期は肺胃鬱熱証であり、臨床的には痔疼痛,便血,紅腫,黏膜充血糜爛,舌紅、苔黄、脈弦数が主要症状である。
加味麻杏石甘湯(石膏18 麻黄・馬勃6 杏仁・山豆根・黄岑・淡竹葉・地錦草・地楡・槐角9 甘草5)
麻黄が宣肺泄熱するのは,“火鬱は之を発すべし”の義による;
麻黄は性温であるが,麻黄の3倍の石膏を配する故に,宣肺しても助熱することなく,清肺して邪を留めない。
両者ともに君薬である。
臣薬:山豆根は清熱解毒,消腫止痛を兼ね;
馬勃、黄岑は清熱解毒,凉血止血を兼ね;
地楡は凉血止血に消腫斂瘡を兼ね,槐角と地錦草は凉血止血に消腫止痛を兼ね,三薬は均しく下血を治療する専用薬である。
佐薬:杏仁は肺と大腸経の帰経薬で,宣肺潤腸をする。
淡竹葉は清熱利尿により,熱を二便より去らせる。
使薬:甘草は益気和中,調和諸薬。
以上により、加味麻杏石甘湯は顕著に痔の急性発作である水腫、疼痛、便血、黏膜改変等の症状を減軽することが出来る。
※いずれの例も皆、痔そのものを治したのではなく、急性発作である水腫、疼痛、便血、黏膜改変等を緩解した対症療法であるが、それでも大したものです。

|

« 麻杏甘石湯は痔に効くか?(1) | Main | 柴胡加竜骨牡蛎湯へのグチ »

治験」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 麻杏甘石湯は痔に効くか?(2):

« 麻杏甘石湯は痔に効くか?(1) | Main | 柴胡加竜骨牡蛎湯へのグチ »