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柴胡加竜骨牡蛎湯へのグチ

柴胡加竜骨牡蛎湯の原文、傷寒論[107条]は次の通りです。
「傷寒八九日,下之,胸満煩驚,小便不利,譫語,一身尽重,不可転側者,柴胡加竜骨牡蛎湯主之。」
中国科技術出版社の『傷寒論湯証論治』(2000年)によれば、次のように解説されています。
太陽病を誤って下したため,三陽の表裏倶病となってしまった。
その結果,上中下三焦に余邪が積熱形成をきたし,また肝鬱気滞となり,また痰熱互結となり,虚実寒熱が交錯する三陽并病の証となった。
胸陽が虚すれば邪気が内陥して,胸脅満悶となり;心神が虚し,心は主を失い,煩躁し,驚[小易]不安となる;陽明の燥熱により,譫語するし;三焦が不利になれば,小便は不利となる;少陽が鬱陥して転枢不能になれば,一身は尽く重くなる。
本方は大、小柴胡湯,柴胡桂枝湯,桂枝甘草竜骨牡蛎湯等の処方を綜合加減して出来たものである。
方中の柴胡、桂枝は外邪を解し身重を除く;竜骨、牡蛎、鉛丹は浮越した正気を収斂して内を鎮め煩驚を止める;大黄は陽明の熱を清し和胃する;茯苓は化飲により,小便を通利する;人参、紅棗、生姜は益気養栄し,扶正[示去]邪をなす。
諸薬は相い伍して, 和解少陽,化飲安神の功効を共奏する。
柴胡12 竜骨・牡蛎・黄[艸/今]・生姜・鉛丹・人参・桂枝・茯苓4.5 半夏・大黄6 大棗6枚
さて本論に入ります。
柴胡加竜骨牡蛎湯は、太陽病を誤治して成った複雑な虚実寒熱交錯の三陽并病証に対して作られた処方です。
これを今日我々は何気なく多くの病症に対して応用したり転用したりして用いています。
その発想は「胸満煩驚,小便不利,譫語,一身尽重,不可転側」という症状を見ての事でした。
例えば、「煩驚,譫語」に当たる神经症、失眠、神精病、癲癇、「胸満」に当たる心臓病、「一身尽重,不可転側」に当たる半身不遂,麻痺、「小便不利」に当たる慢性肾炎などと単純な連想から試みられた臨床の数々でした。
その後 応用は更に広範に及び、あるHPでは「精神不安、動悸、不眠、めまい、のぼせ、ヒステリー、ノイローゼ、更年期障害、てんかん、小児の夜泣きなどに。動脈硬化症、高血圧症、便秘、遺精などにも用いることができます。 」となっています。
私はこの現況を見て心配な事があります。
約二千年前に出来たこの処方が今日なお役に立つのは嬉しいことですが、我が国では処方構成を絶対的なものと見て加減をしようとはしません。
ましてやエキス製剤全盛ともなれば、固定された処方内容はビクとも動きません。
医家は固定された内容のままで色々な疾患に対応しなければなりません。
誤治から始まった処方ですから、複雑な構成なのは分かっています。
さればこそ「複雑なカギは複雑な鍵穴でなければ合わない」のではないでしょうか?
複雑の一端をかすめる程度の一致があるからと、応用範囲をどんどん広げていくのは果たしてどんなものでしょうか?
このままでは何の進歩もありません。
中医学では古典の解釈から始まって各種の解釈と理論で、無数の加減法が実際に行われています。
一体、日本漢方ではこの百年間にどんな発展があったでしょうか?
百年一日のごとく柴胡加竜骨牡蛎湯という処方はこれ一つで、いじることは出来ない状態です。
近年ではジレンマからか「合方」とて丸ごと処方ごとの合方が、2処方どころか3処方も行われています。
これでは理論も何もあったものか、金ばかりかかって健康保険も泣いています。
ああ、薬草漢方をする薬局や医家はどこへいったのか?

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