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誤診から学ぶ(2)盗汗

20代の頃の体験です。
梅雨明けの頃、ふとした風邪がなかなか治らなくて、毎晩のように蒸々と寝汗が出て下着も通るほどでした。
夜だけでなく日中も少しずつ自汗があったかと思います。
ために体力の消耗は激しく、食欲はなく、立ち上がると眩暈がしました。
寒気は殆ど感じなかったけれど微熱がずーっと続いていたと思います。
病院ではリューマチ熱という診断でした。
即日入院となり、プレドニンを出され飲んだところ、その良く効くこと、即効性で一服で微熱がスッキリと取れ、その晩からもう寝汗は止まり、翌日には全快のように食欲も出て、入院しているのが恥ずかしいほどになりました。
それから3週間後に退院しました。
こんな事を思い出したのは、次の症例を読んだからです。
もしかしたらあれは湿熱盗汗だったかも知れないと思ったからです。
 虚実辨誤
案例1 湿熱盗汗を陰虚と誤る
林某,男,25歳,工人。1976年9月2日初診。
睡時に汗が出て,頭暈し,体が倦いのが2ケ月続く。
患者は七月初めのある夜に転寝しながら凉を取っていて,目醒めると全身に汗をかいていた。顔面と胸背に多かった。
ちょうど気候は炎熱の時期でもあり,冷水を浴びてから就寝したが,夜半に凉しくなってから,目醒めたら全身に汗をかき,以后も毎夜続いている。
七月中旬から,多くの処で治療を受け,皆 陰虚盗汗と診られて,六味地黄丸(湯〉、当帰六黄湯、生脈散等の益気養陰剤に竜、牡、浮小麦等の固渋斂汗の品を兼用されたが無効で,盗汗は反って増劇し,睡時の汗出は浴びるほどになった。
頭暈して体倦,煩熱と食欲不振,口干くが飲みたくない,小溲は赤く,大便は正常,顔色が少し黄色い。
舌質は紅く,苔薄く舌根は膩,脈は軟で数。
元来 酒を嗜むので,湿熱盗汗である。
芳香透泄,淡滲清利の法を用いる。
処方:霍香6 意苡仁・滑石15 赤茯苓・蚕砂9 大豆卷12 白寇仁3。毎日一剤,連服三剤。
9月5曰二診:盗汗は明らかに減少し,小溲は前よりも清白となり,苔は薄白に転じたが,脈はまだ軟数である。
湿熱は減ったがまだ残っており,そのまま原方を続服すること三剤。
9月8日三診:盗汗は已に除かれ,苔は薄白く,脈は緩,食欲は少ない。
湿はまだ残っており,脾は健運していない。
和中健胃の治を続ける。
処方:川厚朴・石斛6 茯苓・扁豆・山査子9 陳皮5。
服すること三剤で,諸症は悉く除かれた。
  [鄭家鏗.湿熱盗汗.広西中医薬,1980 (2): 26〕
按:盗汗の証は陰虚が多いが,然し陽虚、気虚、肝熱、湿熱等もあり,独り陰虚に限らない。
本例の患者は労動后に汗出し,[月奏]理が疏松なのに,冷水を淋浴したので,水湿内侵となった。
又素来からの嗜酒のため,湿熱内蘊しており,それが内外の湿の互結となり,鬱して化熱し,湿熱鬱蒸が,汗の外出を迫ったのである。
衛気は昼には陽を行き,夜には陰を行く,ゆえに白日には衛気は表を固めており,汗は泄しない,夜間に入睡すれば,衛気は陰を行くので,[月奏]理は疏松となり,湿熱が迫蒸すれば汗が出る。
頭暈と煩熱, 口干しても飲みたくはない,小便短赤などは,皆 湿熱内擾に属し,それが下注したものである;舌質が紅く苔が膩で,脈が軟数も,また皆 湿熱の証である。
脈症を参照すれば,本例は湿熱盗汗に属し,陰虚盗汗ではない。
案例2 湿熱自汗を気虚と誤る
林某,女,30歳,工人,1987年8月14日初診。
1週間前から昼夜に汗が出て,神疲喜臥,周身酸軟となり,当地の衛生院で,"気虚自汗"と診断され,玉屏風散合牡蛎散を3剤与えられた。
薬を2剤飲んだが,汗は淋漓と出,心煩して寐られず。
証見:周身から汗が出,日に数回 着替える。
頭汗は洗うが如く,汗は黏性で,心胸は煩悶して寐られず,顔面は蒼白だがまだ神があり,肢体は倦怠だが,まだ気力は衰えていない。
食欲不振で,口干して飲もうとするが,少しである。
小便は短赤,舌は淡紅、苔は微黄膩,脈は軟数。
詳しく尋ねると,患者は織麻を業とし,毎日シャワーを浴びるが,10日前に風邪を引いたようだったが治療はせずに,数日后にこのようになったとの事である。
これを細思すれば,湿熱鬱蒸に違いないが,前医は誤って補気温渋薬を投じたのだから……大汗するのは必至である。
三仁湯で清熱利湿,宣暢気機をする……
17日復診:3剤を服薬后,出汗は大いに減り, 小便は増多し,渾身が舒服となり,能く寐られるし,食欲も増えた。
薬は已に証に合っているので続服させた。
20曰3診:上薬を続服すること3剤で, 汗出は已に無く,諸症は悉く除かれ,舌苔は微黄,脈は軟となった。
飲食が少なく,肢体が乏力で,まだ湿熱が尽きていないので,ここからは参苓白朮散に荷葉、滑石を加えて4剤,調理に気をつけて飲食させるようにした。
  [黄水源.汗証救誤二則.新中医,1980, 21 (12): 15〕
按:医者は患者が昼夜に汗出し,神疲喜臥し,周身酸軟なのを見てすぐに気虚とした。
心胸煩悶して寐られず,顔面が蒼白でも神があり,肢体が倦怠していても,まだ気力が衰えておらず,食欲不振で,口干して飲もうとしても少なく,小便が短赤で,舌が淡紅、苔は微黄膩,脈が軟数,であればみな湿熱の象であるのを見逃した。
且つ患者は毎日労作后に淋浴しており,湿熱を気虚と誤ったが,実は四診合参の誤りである。
 『中医誤診学』2003年 より

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