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歯ぎしりと漢方

知一庵さんの《難経鉄鑑》の《黄帝八十一難経》解説に次のような記載があります。
また睡眠中に咬牙〔歯ぎしり〕する人もいます、小児に多い現象です。人が眠っているときには上部の気が降り下部の気が升ります。もし飲食癖積〔停滞〕等によってその升降が妨げられると、逆気が胸中を満たし歯ぎしりをして争うことになります。下部の気は腎の気であり上部の気は肺の気であり、
最近この悩みについての相談を受けましたので一端を記しておきます。
中医学では歯ぎしりを"噛歯","磨牙","咬牙"などと云います。
孟潁舟 中医師は経方治噛歯験案を2例報告しておられます。
案1 李某,男,56歳,2001年6月14日初診,
2个月前から上下の歯を喰いしばってカクカクと音がして終日止まず,自制出来ません。
これまでに針灸やら、肌注やらで解痙鎮静の法をやりましたが,効果はありませんでした。
見れば噛歯の音は髙く力強く,頻繁に鳴っており,口中の濁気が口から出ています。
心下痞満を自覚しており,食べれば腹中がひどく脹り,時々干嘔し,シャックリやゲップが出,  大便の出が悪く,小便も黄色で,舌は紅く,苔は黄白で膩,脈は弦数です。
湿熱内蘊で,中焦が塞がり,気機が暢びない証である。
辛開苦降法にて,脾胃の寒熱を調理する。
半夏瀉心湯化裁:
法半夏・黄岑 ・干姜・厚朴10 黄連・木香・丹皮6 党参15 竹茹9 生姜3片 大棗4 枚
上薬を5剤服した后,心下痞満と腹脹気滞は消失し,シャックリも出ておらないが,磨牙はまだ間断なく出る。
しかし自制が出来るようになり,舌質は淡紅で潤,苔は薄白,脈は緩稍弦となった。
薬は已に的中しているので,継投すること5剤で,頑疾もついに愈えた。
 患者は噛歯の外に痞満,食后腹脹,シャックリ曖気もあり,舌苔黄白で膩であった。
これは寒熱并存,脾胃同病を反映している。
半夏瀉心湯にて和中降逆消痞しなければならない。
この辛開苦降,寒温并用の法にて,ようやく脾胃の湿熱を去り,中焦の気機を宣暢した。
痞満を消除する目的で,方中に竹茹を加えて胃熱を清し濁気を降す。
また木香、厚朴を酌加して行気除満を助けた。
案2 呂某,女,35歳,2004年4月12日初診。
患者は最近夜間の磨牙があり,夫が腹に虫が居るのではないかと云うので診察に来た。
診ても正常で,ただ少し元気が無く,疲労しやすい。
少し口苦,咽干して渇き,大便秘結を訴え,舌は淡紅で苔は薄黄, 脈は弦緩で有力である。
少陽胆火亢盛,枢機不利の証であるので,和解少陽を治療法とし,試ろみに小柴胡湯化裁を投じた。
処方:柴胡・黄岑・鬱金・芒硝10 党参15 天花粉12 生牡蛎30 炙甘草5 大棗3枚
上薬を7剤服したところ,半月后に電話で,磨牙が消失したと云ってきた。
口苦,咽干,便秘も亦除かれた。
 本病には口苦,咽干があり,少陽の主症と符合していたので,この一証のみで小柴胡湯化裁を投じて,和解少陽の法を用いた。
口渇があったので法半夏を去り天花粉を加えて生津をはかり,鬱金にて胆腑の鬱熱を清し,生牡蛎にて軟堅の法とし,芒硝にて和解攻裏し以って大便を通じた。
少陽の胆火が一たび消えるや,口苦、咽干は除かれ,磨牙も亦止った。
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胡某某,52歳。初診:1986年5月14日。
一月前から上下の歯が相互に磨切して,カクカクと音を立て,自制できず,終日止らない。
其れば噛歯の音は高く響き,連連として断えず,前牙は已に三分の一に減り,口に濁気がある。
また心中煩悶,心下痞満を伴い,時に干嘔がある。
小便の色は黄色く,舌は紅く苔は中心が黄色く,脈は弦数である。
湿熱内蘊,阻于中焦,気機不暢,脾胃升降失常の証である。
苦寒清熱,辛熱宣通,少佐甘温調補の法をとる。
半夏瀉心湯加味:
半夏・黄連・竹茹9 黄岑・丹皮7 干姜・生姜4 党参・生姜6 大棗4枚
2剤。
二診:服薬后、心中豁達を自覚し,心煩、痞満等の症は消失した。
磨牙の間隔時間は延び,自制できるようになった。
苔は白く,脈は数である。
薬は已に病に当たっているので,そのまま原方を守り,継投すること3剤にして,一月の痼疾は痊愈した。
※『中医臨床』v36-4 に紹介された黄元御の中気理論の「中気が虚衰して昇降作用に異常を来すことは万病の元である」というのが良く分かる。

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