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誤診から学ぶ(3)咳嗽

風邪挾飲の咳嗽を燥熱傷肺と誤診して
案例 呉佩玉の次女が,傷風による咳嗽を呈した。
最初の医師は疏風潤肺の(例えば桑杏湯・養陰清肺湯などの)止咳薬を用いたが,応ぜず,更に嘔渇咽痛の薬を加えた。
張石頑が診ると,六脈は浮滑と指に感じた。
因って半夏散及湯〈法夏、桂枝、炙甘草各二銭)を三剤与えたら病が軽快した。
 咳嗽咽痛に渇があると,世間ではみな燥剤を戒めるのに,今半夏を用いて效いたのはどうしてですか?
曰く:"用薬に必要なのは,治病には必ず其の本を求めることです。此れは風邪挾飲が上攻した暴嗽です。故に半夏、桂枝を用いて,経絡を開通し,痰涎を掃き取り,兼ねて甘草の脾胃を和して津液をもたらす事により,風痰は散じ,営衛が通じて,咽痛燥渇が自然に止まったのです。もし燥渇だからといって清潤剤を用いなければならないとこだわったら,其の痰湿は滋潤されて増え,経絡はいよいよ壅塞され,燥渇咽痛は,ますます悪化するでしょう。それだけではありません,近頃は風寒咳嗽を治すのに,表薬を用いてでも,必ず桑白皮、黄岑、天花粉を,甚しいと知母、黄柏の類までも兼用する……すると初めの元気が未だ衰ろえていなければ,服すれば邪熱は暫らくは押さえられ,幾らか良くなるでしょうが,長引くと真気は次第に傷つき,飲めば飲むほど悪化します"。(清,兪震《古今医案按》)
按:此の案は風邪挾飲の上攻による咳嗽です。
前医は燥熱傷肺と誤診して,甘凉潤肺の止咳剤を用いて,口渇咽痛にしてしまった。
どの医師もみな口渇咽痛と見れば燥熱の象とみなして,辛燥剤を用いるのを畏れるが、張氏の辨証は正確で,果断に半夏、桂枝を与えて化痰、通絡をし,兼ねて甘草で脾胃を和し,風痰が散じ,営衛が通り,咽痛燥渇が自然治癒した。
本案の中, 脈浮滑に気付いたのが辨証の鍵です。
これが若し風熱咳嗽か燥熱咽痛なら,清凉潤剤は正解です。
しかし寒邪外束によるものなら間違いで,必らずや辛温薬でなければ治せません。
   『中医誤診学』2003年 より
※『改訂版証候鑑別診断学』の少陰寒邪犯咽証には次のようになっています。
《傷寒論》の“少陰病、咽中痛、半夏散及湯主之。”という記述は少陰陰盛が陽鬱をもたらして咽痛となったものを治療する方法です。
先ず少陰を病み,復た風寒に感じ,寒束陽鬱の状態から,痰濁が阻閉したのが本証の病因病機です。
章虚谷の所説:“外邪が裏に入ると,陽は伸びず,鬱すると火に化し,上って咽を灼く。すなわち辛温開達法を用いて,邪を外解させれば,内火は散ずる。此れが本治である。若し咽痛を見て寒涼を投じれば,反って其の邪を閉じて,必ずや更に重くなる。”
※以前のブログに「半夏でどうして咽痛が治るの?」(2009.01.18)というのがあります。あわせてお読みいただけば幸いです。

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