陽明病としての呉茱萸湯証
呉茱萸湯は『傷寒論』に出てくる処方ですが、陽明・少陰・厥陰病の三つの出方があるのをご存知でしょうか?
食穀欲嘔、属陽明也、呉茱萸湯主之。‥‥‥陽明病
少陰病、吐利、手足逆冷、煩躁欲死者、呉茱萸湯主之。‥‥‥少陰病
乾嘔吐涎沫、頭痛者、呉茱萸湯主之。‥‥‥厥陰病
それぞれ微妙に異なっていますが、共通する病機は「胃中虚寒,濁陰上逆」で、寒性嘔吐が対象です。
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私は二日前に不思議な体験をしました。
朝食はいつも八枚切りの食パン一枚を二つに切ってハム・ゆで卵・トマトを焼きサンドにしたものと牛乳とバナナ一本です。
その日のバナナはチョット大きかったかな。
食後三十分ほどしてから何だかみぞおち辺りが具合が悪くなった。
得も言われぬ不快感で、狭心症かもとさえ疑ったほどでした。
ドーンとものが詰まったような、痛みではないものの居ても立っても居られぬほどの酷さです。
仰向いたり、うつむいたり、横になったりと色々に姿勢を変えてみるものの、どんなにしても苦しさは変わらない。
しまいには額に冷や汗がにじみ、顏が真っ青になってきた。
吐き気や便意もなく、ただひたすらに苦しい。
十分ほど耐えてるとようやく症状が緩んできて、ほーっとした。
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はて、これは何だったのだろう?
同じものを食べた妻は知らん顔をしているし。
色々と考えているうちにふとこれは「嘈雑」というものではなかろうかと頭にひらめいた。
たまたま読んでいた『傷寒名医験案精選』の呉茱萸湯のところに次のような解説があります。
「寒気客于腸胃,厥逆上出,故痛而嘔也嘔吐清水,胃脘疼痛,呑酸嘈雑者,為病在陽明」
嘈雑を呑酸(胸やけ)と解釈する事が多いけれど、どうも納得いかない。
文字からいえば「がやがやと騒がしいこと」のようである。
それだと私の症状とよく似ている。
「寒気客于腸胃」「胃中虚寒,濁陰上逆」から生ずる症状のひとつなのだから。
何故かというと、最近なんとなく腹が冷えるのを感じていて、腹巻が欲しいなぁと思っていたのです。
季節は夏なので冷たいものを多く飮食するし、薄着はするしで陽気は乏しくなっています。
たまたまその日の朝食が胃気の昇降の妨げとなって嘈雑を引き起こしたのではないだろうか?
牛乳やバナナの寒性が関係していると思われてならない。
当たっているかどうかは分かりませんが、「食穀欲嘔、属陽明也、呉茱萸湯主之。」の陽明病に当たるのではないかと思った訳です。
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