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瓜呂(栝楼)について

生薬の瓜呂(キカラスウリ)には、瓜呂仁・瓜呂実(全瓜呂)・瓜呂皮・瓜呂根(天花粉)の四つがある。
我が国の漢方製剤で使われているのはこの内の瓜呂仁(小陥胸湯・柴陥湯に)と瓜呂根(柴胡桂枝干姜湯に)であり、瓜呂実・瓜呂皮は使われていない。
しかし中医学では四つともに各々の使い分けがされており、効能は次のようになっている。
祛痰作用‥‥‥瓜呂皮
瀉下作用‥‥‥瓜呂仁
冠血管拡張作用‥‥‥瓜呂皮>瓜呂仁>瓜呂実
ここで注意したいのは瓜呂皮が市販に無いこともあり、使われていない事です。
粘痰を切るのに瓜呂皮を使いたくともこれが無いので瓜呂仁で代用するという事になるのだがこれを指摘する人は居ない。
瓜呂実についても、この度は『中医臨床』v37-4 の丁元慶師の「帯状疱疹後神経痛の治療」の記事において大栝楼散の解説に次のような文を見つけた。
『重慶堂随筆』には、「栝楼実に潤燥開結・蕩熱滌痰の作用があることはよく知られているが、舒肝鬱・潤肝燥・平肝逆・緩肝急の作用において独壇場を誇ることはあまり知られていない」と記されている。清熱解毒・化痰通絡・柔肝緩急の作用があり、痰熱・湿熱・熱毒が籠って滞っている病症の治療に長けている。
こういう訳で瓜呂皮も瓜呂実も市場に流通することが待たれる。

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当帰六黄湯(補)

重大な説明不足がありましたので補足をします。先の記事で
胃気は熱し,熱気は胸中に熏ずる,故に内熱(※熱中のことか)と曰う。
において、この熱というのは元気虚によって生じた“陰火”の上乗であると認識しなければなりません。
『中薬の配合』の本文は次のように続きます。
この盗汗という病証の本は元気虚※で、陰火上乗は標となります。また盗汗によって陰血も損傷しています。そこで当帰六黄湯では,当帰に倍量の黄耆を合わせ,益気生血作用をもたせています。これは陽が生じれば陰も長じるという法則に沿って,本を治療する用薬法です。用量としては黄耆を多く使っていますが,実際の主薬は当帰となります。方剤名が当帰となっているのも,この理由によるものです。
黄耆を使用する意味については
当帰六黄湯については『医宗金鑑』も,すぐれた見解を示しています。 同書は「愚かな者は,寒薬に黄耆を合わせていることの意味を知らずにいる。この方剤は寒薬を多く含むが,陽気の盛んな者に使うことはできない。ここにこの方剤の妙味が隠されているのである。この病証は,営虚によって汗が出るというものである。すると発汗に伴って衛気も虚すことに なる。つまり,陰における陽の問題なのである。倍量の黄耆には,表虚を補益する作用のほかに,陰を固定する作用もあるのである。
まとめますと「熱中」による病証ということは、これが陰火であり、脾胃はすでに弱っているという意味が含まれている。
※李東垣のいう元気とは胃気のことです。

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当帰六黄湯

当帰六黄湯の組成は次のようです。
 (当帰,生地黄,熟地黄,黄柏,黄岑,黄連<すべて同量>,黄耆<倍量>)
『中薬の配合』の当帰六黄湯と盗汗の説明のところで不思議な表現があります。
李東垣は
注意する必要があるのは,陰火上乗による当帰六黄湯の盗汗症とは「熱中による」病証である。瀉火作用が強すぎると,苦寒薬が陽気を傷め「寒中」 が生じてしまいます。‥‥‥そこで当帰六黄湯を使う場合,効果が現れた時点で服用を中止するという措置が大切となります。
と云っています。
ここで云う熱中・寒中とはいったい何であろうか?
「脾胃論 卷中 飲食労倦所傷始為熱中論」に次の一節があります。
「労倦すれば,形気は衰少し,穀気は盛りとならず,上焦は行らず,下[月完]は不通となり,胃気は熱し,熱気は胸中に熏ずる,故に内熱(※熱中のことか)と曰う。
陰盛んなれば内寒を生じ,厥気が上逆し,寒気が胸中に積って瀉せず;瀉せずば則ち温気は去り,寒が独り留まる;寒独り留れば則ち血は凝泣す;血凝泣すれば則ち脈は通らず,其の脈は盛大でも渋となる,故に寒中と曰う。」
すなわち“熱中”とは熱が胸中に在るのを指し、“寒中”とは寒が胸中に在るのを指しているという説明です。
したがって当帰六黄湯の盗汗症とは「熱中」による病証であり、補中益気湯のような甘温除火熱法とは異なり、甘寒除火熱による用薬法になっている。
だから効果が現れた時点で服用を中止せよと注したうえで
これは一般的な養血清熱法とも,養陰瀉火法とも異なる方法です。
と重ねての説明がある。

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嚔気法(ロ畜鼻法)

中医学には上焦の病に対して、粉にした薬を鼻から吸い込ませくしゃみをさ せる方法があります。
『中薬の配合』丁光迪編著、小金井信宏訳 の解説では、「この方法には,気の通りをよく するだけでなく,緊急時の気つけ薬としての作用もあります。くしゃみを 10数回すれば,腠理がほぐれ解肌作用が発揮されます。また同時に涙・鼻水・唾液などが出てきます。これは吐法と同じです。つまり,くしゃみを させることで,汗法・吐法の効果が得られるわけです。葱豉湯を服用する 必要はありません。‥‥‥これは,上にある病は上から出すという方法です。」
また『中医伝統流派の系譜』によれば、汗吐下三法を強く提唱し、邪を攻撃した張子和は外治法としての〈吐法〉を得意としました。
それによれば薬物で嘔吐を促す方法のほかに、漉涎・嚔気・催涙などの方法も吐法に帰属させている。
漉涎法……漉とは、滲み込むという意味である。突然人事不省に陥り、牙関緊急し、水を飲ませることができない者には、三聖散を煎じて鼻から滲み込ませると、自然に口が開き、よだれが出てくる(第四巻八)。
嚔気法……薬物でくしゃみをさせる方法である。たとえば流行性の疫癘にかかったときには、不臥散を鼻から吸い込ませ、立て続けに二十~三十回くしゃみをさせる(第四巻七)。また目の充血や腫瘍にも青金散を吸い込ませて、くしゃみをさせる。鼻から出血すれば、さらに速く効果が現れる(第四巻三十九)。
催涙法……眼病治療として、錠子眼薬を目の中に入れる。薬が溶けて涙が出れば効果が現れる(第十四巻三)。
実例: 大頭瘟は、流行性の邪熱疫毒の気を人が感受したために発生する。
一名を時毒とも、疫毒ともいう。
大頭瘟は、鼻・顔面・耳・頸・咽喉に発生し、赤く平らに腫れるか、中に核や根っこがある。
はじめの症状は傷寒によく似ており、憎寒・発熱・頭痛・体の激痛・ぼんやりする・咽喉閉塞、などの症状が現れ、五日から七日の間に死亡することもある。
ただし十日以上生存すれば、治療しなくても自然に治る。
 これを治療するには弁証をしなければならないので、まずその脈を診る。
滑数浮洪沈緊弦渋などが、この証候の脈象である。
浮数の脈の者は邪が表にあるので、犀角升麻湯で発散させる。
沈渋の者は邪気が深部にあるので、毒が強ければ急いで化毒湯を服用させて邪を攻撃する。
 実熱で便秘のある者は大黄湯で下す。
高齢者で気鬱のものは、五香連翹湯で治療する。
また鼻から通気散《東醫寶鑑》 (延胡索1銭半、皀角・川弓各1銭、藜蘆5分、躑躅花2分半) を吸い込み、十回あまりくしゃみをさせる方法もある。
それでもくしゃみが出ない場合は治らないが、くしゃみとともに膿と血が出れば、必ず治癒する。
また看護人が毎日この薬を用いてくしゃみをすれば、病気の伝染を防げる。
患者自身も、この薬を毎日三回から五回用いて熱を除くとよい。
これは、時毒・疫毒を治療する効果的な方法であり、記憶しておくとよい。
※インフルエンザの予防に通気散でくしゃみをするのも一法!
facebook 漢方/中医学の10月26日には次のように書きました。
 中医治病八法とは「汗・吐・下・和・温・清・消・補」の八法です。
その内の「吐法」のひとつに朱丹渓が開発した、癃闭の気実証に用いる“提壷掲蓋”法があります。
『中薬の配合』では吐法(吐かせる事のほかに、噴<クシャミ>させる事も含む)とは強制的に気を上昇させることに他ならず、気が上昇すれば自ずと濁陰(尿)は降る、とあります。(目からウロコ)
昇降法とは面白い手段ですね。

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補腎は補脾に及ばない

「補腎は補脾に及ばない」という論点と「補脾は補腎に及ばない」という相反する論点があります。
この解説が『中薬の配合』丁光迪編著、小金井信宏訳 にあり、次に要約します。
脾腎病において前者は、[腎虚<脾病が急]である場合について言っているものです。
急なものを先に治療するという原則に従い,脾胃を重視しているのです。
脾胃を回復させれば,体に穀気が溢れ,営衛気も充実します。
これに対して後者は,[腎虚が急>脾病]という脾腎病の場合について言っているものです。
真火が脾土を温める機能を回復し,食欲を回復させる方法です。
つまり同じ脾腎病でも,重点が脾にあるか,腎にあるかという違いがあるわけです。
そして上述した2つの論点は,この両者を適切に治療するために生まれたもので矛盾はないのです。
程鐘齢は『医学心悟』でひとつの見解を提示しています。
 脾が弱く腎は虚していない場合,補脾を優先する。
 腎が弱く脾は虚していない場合,補腎を優先する。
 脾腎ともに虚している場合は,両者を補益する。
したがって上述の2つの論点には,脾腎病を治療する際には,病状の深さに応じて薬の使い方にも程度の違いがある,ということも示しているのです。
ところが脾も腎も、陰陽それぞれに傷ついた陰陽両傷ともなれば、陰を治療すれば陽に対する弊害があり,陽を治療すれば陰に対する弊害が出る場合があります。
そんな時には法外の法として脾胃だけを治療する特殊例になります。
『霊枢』邪気臓腑病形篇は「脈が小であるものは,陰陽・形気のすべてが不足している。これを針で治療してはならない。(諸小者、陰陽形気倶不足、勿取以鍼、而調以甘薬也) 甘薬で調えるのがよい」と述べています。
また楊上善は注釈で「陰陽も形気も衰えているときに,針で治療を行うと病状を悪化させてしまう。この場合は,甘味薬を使って脾気を調えるのがよい。脾胃の気が和せば,残りの四臓も回復する」と述べています。
この甘味薬とは小建中湯のことなのです。
『金匱要略』血痺虚労篇は「虚労による,裏急・心悸・鼻出血・腹中痛・夢精・四肢がだるく痛い・手足のほてり・咽喉部や口の乾燥」などの病証に小建中湯を使っています。
これは陰陽両傷による,虚寒と虚熱が同時に存在する病証で、陰陽両傷病の治療法です。
陰を治療すれば陽に対する弊害があり,陽を治療すれば陰に対する弊害があります。
このとき重要なのは「胃気は,あらゆる病の本である」という法外の法です。
尤在泾は『金匱要略心典』でこのように述べています。
「中とは脾胃である。営衛は水穀より生まれる。そして水穀は脾胃によって運化される。中気がしっかりしていれば,営衛も流れ,不和が生じることはない。また中は四運の軸でもあり,陰陽の要である。よって中気がしっかりしていれば,陰陽は環のように終わることなく,また偏ることなく循環を続けるのである。」
 ※虚労以外で小建中湯を使うのであればこのように難しく考える必要はありません。

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