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補腎は補脾に及ばない

「補腎は補脾に及ばない」という論点と「補脾は補腎に及ばない」という相反する論点があります。
この解説が『中薬の配合』丁光迪編著、小金井信宏訳 にあり、次に要約します。
脾腎病において前者は、[腎虚<脾病が急]である場合について言っているものです。
急なものを先に治療するという原則に従い,脾胃を重視しているのです。
脾胃を回復させれば,体に穀気が溢れ,営衛気も充実します。
これに対して後者は,[腎虚が急>脾病]という脾腎病の場合について言っているものです。
真火が脾土を温める機能を回復し,食欲を回復させる方法です。
つまり同じ脾腎病でも,重点が脾にあるか,腎にあるかという違いがあるわけです。
そして上述した2つの論点は,この両者を適切に治療するために生まれたもので矛盾はないのです。
程鐘齢は『医学心悟』でひとつの見解を提示しています。
 脾が弱く腎は虚していない場合,補脾を優先する。
 腎が弱く脾は虚していない場合,補腎を優先する。
 脾腎ともに虚している場合は,両者を補益する。
したがって上述の2つの論点には,脾腎病を治療する際には,病状の深さに応じて薬の使い方にも程度の違いがある,ということも示しているのです。
ところが脾も腎も、陰陽それぞれに傷ついた陰陽両傷ともなれば、陰を治療すれば陽に対する弊害があり,陽を治療すれば陰に対する弊害が出る場合があります。
そんな時には法外の法として脾胃だけを治療する特殊例になります。
『霊枢』邪気臓腑病形篇は「脈が小であるものは,陰陽・形気のすべてが不足している。これを針で治療してはならない。(諸小者、陰陽形気倶不足、勿取以鍼、而調以甘薬也) 甘薬で調えるのがよい」と述べています。
また楊上善は注釈で「陰陽も形気も衰えているときに,針で治療を行うと病状を悪化させてしまう。この場合は,甘味薬を使って脾気を調えるのがよい。脾胃の気が和せば,残りの四臓も回復する」と述べています。
この甘味薬とは小建中湯のことなのです。
『金匱要略』血痺虚労篇は「虚労による,裏急・心悸・鼻出血・腹中痛・夢精・四肢がだるく痛い・手足のほてり・咽喉部や口の乾燥」などの病証に小建中湯を使っています。
これは陰陽両傷による,虚寒と虚熱が同時に存在する病証で、陰陽両傷病の治療法です。
陰を治療すれば陽に対する弊害があり,陽を治療すれば陰に対する弊害があります。
このとき重要なのは「胃気は,あらゆる病の本である」という法外の法です。
尤在泾は『金匱要略心典』でこのように述べています。
「中とは脾胃である。営衛は水穀より生まれる。そして水穀は脾胃によって運化される。中気がしっかりしていれば,営衛も流れ,不和が生じることはない。また中は四運の軸でもあり,陰陽の要である。よって中気がしっかりしていれば,陰陽は環のように終わることなく,また偏ることなく循環を続けるのである。」
 ※虚労以外で小建中湯を使うのであればこのように難しく考える必要はありません。

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