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八味丸証の臍下不仁とは何か?

「八味丸の証で最も特徴的なのは臍下不仁と呼ばれる腹証です。これはヘソの下の下腹部がふにゃふにゃとやわらかい、無力である、また、上腹部よりも下腹部のほうがさわったときの感覚が鈍いという意味です。あおむけに寝て、指先で下腹部を押して無力なら、臍下不仁で八味丸が適した証といえます。」
これが世間に流通している大塚敬節氏をはじめ多くの人達が広めた説です。
臍下不仁は、臍下が脱力して軟弱無力で、甚だしい場合は、この部分が陥没している。古人が腎虚と呼んだ場合に見られる腹証で八味丸を用いる目標である。ところで八味丸の腹証は、この臍下不仁だけでなく、小腹拘急がある。
《金匱要略》卷上 中風歴節病脈証并治第五 崔氏八味丸 治脚気上入,少腹不仁。
これが原本の記載であり、少腹不仁となる原因は「脚気上入」があるからです。
《金匱要略》第六篇第十五条 虚労腰痛,少腹拘急,小便不利者,八味腎気丸主之。
脚気は小便不利のため腹が張って少腹拘急を呈しますから「臍下不仁と小腹拘急,小便不利は併存する」状況です。
《金匱要略》第二十二篇第十九条 婦人病飲食如故,煩熱不得臥,而反倚息者,何也? 師曰:此名転胞,不得溺也,以胞系了戻,故致此病,但利小便則愈,宜腎気丸主之。
さらに脚気のみならず転胞という不得溺をも治療の対象にしているのですから、双方とも同じ病機なのです。
『中薬の配合』丁光迪編著、小金井信宏訳 の解説は次のようになっています。
脚気とは陰邪(風湿または水毒)に属する病証です。少腹部の不仁とは , 脚気が上行して心を侵そうとしている状況です。補腎丸はここでは,補腎化気作用・温陽作用で陰邪を解消するために使われています。これは,のちに「通陽泄濁法」と呼ばれるようになった治療法です。陰邪を下行させ,陽気が回復すれば,脚気が上行するような事態は起こらなくなります。
つまり、脚気の小便不利は八味丸の通陽泄濁法によって解消し、臍下不仁および小腹拘急も無くなるのです。
これは八味丸を単なる補腎剤ではなく、気化作用もある「補+通」の作用をもつ構造であると指摘しています。
よく八味丸の構成は三補三瀉であるといいますが、三瀉こそが「通」の作用を担っています。
そして腎気丸の特徴は, 補腎を行う際に「」を重視している点にあります。また少陰の臓である腎には「」という機能があります。
例えば,虚労による腰痛・少腹部の拘急・小便不利という症候は,腎気虚によって腎の気化機能が失調している状況です。つまり開合機能のうちの開に問題があります。ここに補腎化気作用のある薬を使うと,下焦の開合機能は回復し, 正常な排尿がみられるようになります。また気化機能が回復し,陽気が正常に運行するようになれば,腰痛や少腹部の拘急も解消します。
このような正鵠を射た解説は今までに見た事がない、まったく目から鱗です。
ちなみにこんなのもあります。
“臍下拘急して、之を撫するも知らず。此れ所謂不仁也”《腹診配剤録》
「不仁」はこれ水の病なり《薬徴》
なお「合」とは,五臓六腑の精を蔵する機能,つまり固精納気機能を指しています。「開」とは,化気利水機能・通二便機能を指しています。

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