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小柴胡湯1

小柴胡湯について『中医治法與方剤』(陳潮祖)より引用紹介します。これ程の詳細な解説は今迄に見たことがありません。
[組成] 柴胡24 半夏12 黄芩・生姜・人参・甘草9g 大棗12枚
[用法] 水煎,分3次,温服,1日量。
[主治] 邪が少陽に居座り,往来寒熱となり,胸脇苦満となり,口苦・咽干・目眩・心煩・喜嘔となり,飲食を欲せず, 或いは胸中煩するも嘔かず,或いは渇し;或いは腹中痛み,或いは脇下痞硬となり;或いは心下悸となり,小便不利となり;或いは渇せず,身に微熱があり;或いは咳をする証を治す。
また熱が血室に入ったものや,黄疸,便秘,失血,項強,眩暈・妊娠悪阻,風丹(蕁麻疹),虚人の感冒等の証を治す。
[証析] 少陽は手の少陽三焦と足の少陽胆経を包括するが,此の方の所治は, 手の少陽三焦経が主である。
三焦は膜原と腠理から成り,陽気が升降出入し,水液が運行する所である。
もし平素から正気が不足し,腠理が緻密でないと,風寒は表から裏へと入り,少陽を占拠すると,必然的に衛気の升降出入や,水液の運行輸布,胆汁の輸泄流通,筋膜の柔和活利に影響し,病態を呈する。
邪が少陽を犯すと,三焦の衛気は表から祛邪せんとし,外から入った風寒は正気に勝って裏へ入ろうとする。
邪が勝ち正が負けると,陽気は内鬱するため悪寒がする。
正が勝ち邪が負けると,陽気は外へと達するため発熱する。
正邪が争い,対立すると,遂には往来寒熱を呈する。
口苦・咽干・心煩・発熱等の証は陽気が邪鬱のために,外へと疏達できず, 気鬱から熱化が起こったもので,これは衛気の病変である。
邪が少陽に留まれば,津液の流通が阻まれ,三焦は湿鬱となり,升降しなくなるので,小便不利となり,心に及べば悸となり,肺を犯せば咳となり,上りて清陽を干(おか)せば眩暈となり,内に入って胃腸を侵せば食が減り・嘔逆となる,これは水津の病変である。
邪が三焦から内へ入り胆腑に帰すれば,胆経は気鬱となり,胆道は不利し,胆汁の流通が阻まれ,遂には脇下痞硬・脹満・疼痛を呈する,これは胆系の病変である。
膜原は三焦の組成の一部ゆえ,邪が少陽を犯し,気鬱津凝となれば,また筋膜の柔和さに影響して目眩・干嘔・項強・疼痛等の証を呈する,これは組織の病変である。
以上をまとめると,この証には基礎物質の病変である気鬱津凝という徴候と,組織の柔和さが失われて攣急・緊張となった徴候がある。
手の少陽三焦の徴候があり,また足の少陽胆経の徴候があり;少陽兼厥陰の徴候があり;また胆胃不和の徴候があり;上焦心肺の徴候があり,また下焦腎系の徴候がある。
病の本は少陽に在っても,徴候は五臓に現れる。
[病機] 邪が少陽に居座る。
[治法] 和解少陽法。
[方義]  此の証には正気不足と邪気侵襲の病理が同時に存在する。ゆえに扶正祛邪が治法となる。
半表の寒と半裏の熱という病理が同時に存在する。ゆえに表裏同治が治法である。
気鬱化熱と津凝が変じて湿となった病理が同時に存在する。ゆえに寒温を共用すべきである。
清陽不升と濁陰不降の病理が同時に存在するので,又 升降并調をすると良い。
上述の治療法を取り,正気旺盛になり,邪気が除かれ,表邪が解かれ,裏滞が疏通し,鬱熱が清し,湿邪が化し,清気が升り,濁陰が降れば,三焦は調和する。
これは汗・下・温・清の諸法と違って,表裏寒熱虚実升降を調和させる,故に和解少陽と名づける。
方中の柴胡は少陽を治する要薬で,気機を疏暢し,陽気を升発し,邪を表へ透達させ,鬱熱を解除する功がある。
本方は此の少陽半表の邪を透達させ, 気鬱からの化熱を発泄し,三焦気鬱の脹を疏暢させ,鬱結して伸びない陽を升発させるなど,作用が全面に及びかつ用量が大きいゆえ,方中の主薬である。
黄芩には肺胃肝胆を清する功があり,柴胡と対をなす。
則ち柴胡は能く陽気を舒展し発熱の源を消除する。黄芩は能く肝胆を清泄し専ら已鬱の熱を清す。
半夏は燥湿運脾し,生姜は水津を温散する。
三焦の湿鬱は独り中焦が取るというのは,中焦が水液升降の軸だからである。
人参・甘草・大棗は元気を大補する。
方中に配入するのは,扶正祛邪にて邪気が裏に入るのを予防し,祛邪の薬効を増強するゆえ裏方役である。
甘草・大棗の甘は又 肝の急を緩めて膜絡を柔和ならしめる。
七薬は同用してこそ,能く和解少陽の効を発揮する。
此の方には柴胡の半表の邪を疏散する作用と,黄芩の清泄裏熱の作用と,生姜・半夏の燥湿行津の作用があり,これにて表裏同治法となっている。
柴胡・黄芩の凉が気鬱所化の熱を清解し,半夏・生姜の温辛は津凝の湿を燥かす,これは寒温共用の法である。
柴胡・黄芩・生姜・半夏等の薬で祛邪すると同時に,人参・甘草・大棗等の薬で扶正するので,これは扶正祛邪法となっている。
柴胡は清陽を升発し,生姜・半夏は濁陰を降泄するゆえ,これは升清降濁法となっている。
柴胡・黄芩・生姜・半夏は津気を調和させ,甘草・大棗は膜絡を緩和にするゆえ,これは膜絡津気同治の法となっている。
将に和解表裏・平調寒熱・升清降濁・通利三焦・扶正祛邪・膜絡津気同治が渾然一体となり,構造は表・裏・寒・熱・虚・実・升・降・津・気・膜・絡の各方面を兼顧している。
少陽三焦は表裏上下を聯系し,五臓六腑の枢であり,津気の升降出入の路であるので,方剤の構造は又 寒熱并用,補瀉兼行となっている。
ゆえに此の方は臨床では表・裏・温・清・升・降・補・瀉のすべてに用いられている。
若し三焦より論治すれば,気鬱・津凝・液阻(黄疸等)・失血等の証を治すことが出来,用途の広さ,配伍の佳さから,古今の名方であり,匹敵するものの無い,和解少陽の総方である。
章楠は謂く:“仲景は六経病証を分けて,それぞれに主治の方がある。たとえば桂技湯・小柴胡は同じく和剤としている,しかし桂枝は専ら営衛を和し,太陽の主方である。柴胡は専ら表裏を和し,少陽の主方である,各々はその部位深浅が違う”。
小柴胡湯の升清降濁し,三焦を通調するのは,つまりは表裏を和すことで枢機を通暢している,故に少陽の主方である。

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