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小柴胡湯2

引き続き『中医治法與方剤』(陳潮祖)より引用紹介します。
32項目にわたる綿密な論考には一層 感服します。

[応用]
 «傷寒論»及び«金匱要略»には此の方に全部で十九条を載せているが,広く用いるには注釈を加えることが必要である。
1. “傷寒五・六日中風,往来寒熱,胸脇苦満,嘿嘿不欲飲食,心煩喜嘔,或胸中煩而不嘔,或渇,或腹中痛,或脇下痞硬,或心下悸,小便不利,或不渇,身有微熱,或咳者,小柴胡湯主之。”
此の条は五臓の上下表裏各部の徴候を反映しているが,手の少陽三焦と聯系して分析しなければ,理解するのは難しい。
2. “血弱く気尽き,腠理が開けば,邪気は因って入り,正気と相い搏ち,脇下に結ぼれる。正邪が分争すると,往来寒熱が,周期性であったり,嘿嘿として飲食を欲しなくなる。臓腑は相い連なるゆえ,其の痛みは必ず下へくる,邪が高きにあるのに痛みは下へくる,故に嘔せしめる,小柴胡湯が之を主る。”
此の条の説明には幾つかの問題がある:
①平素から気血が不足し,腠理が不密であれば,邪気は虚に乗じて入る。
②寒熱往来とは邪気と正気が相い搏つ, 正邪分争の病理を反映している。
③“臓腑相連,其痛必下,邪高痛下,故使嘔也。”此の条は仲景が論述する本方証の病機及び胆胃不和の条文である。
3. “傷寒になり四・五日して,身熱く悪風し,頚項は強ばり,脇下満となり,手足温くして渇する者は,小柴胡湯が主る。”
頚項強而身熱悪風とは,桂枝湯証に似ているが,脇下満は桂枝湯証ではない! 故に此の方を用いて少陽を和解し,津気を流通させ,筋脈を柔和にする。
方中の甘草・大棗は,緩急を作すと解釈して,始めて此の証の病理と符合する。
4. “傷寒で,陽脈が渋で,陰脈が弦なら,必ずや腹中が急痛する,先ず小建中湯を與えよ,癒えざれば,小柴胡湯が之を主る。”
本方で治る腹痛は,病が胆胃に在り,疼痛部位は剣突か或いは肋縁の下面に在らねばならない。
初起には寒熱が分け難いので,先ず温中補虚・柔肝緩急の小建中湯を用いてみる,中焦虚寒からやってみて,肝木克土へと論治を移すのである。
それで効かなければ,再び本方を用いて清熱利胆,開鬱行津し,緩急止痛する,胆経湿熱からの論治である。
若し寒熱が錯雑しておれば,柴胡桂枝湯を用いてもよい。
※youjyodo註:『中医証候鑑別診断学』には 370.太陽邪陥脾气不和証 が上げられています。
若服小建中湯不差,而脉仍弦渋者,是兼少陽気鬱、木来乘土(肝病伝脾)之証,治宜小柴胡湯去黄芩疏解少陽気鬱。
(これは先に小建中湯を飲み、次に小柴胡湯を飲む二段構えでかからなければ治らない場合があるという意味に取れる。)
5. “婦人が中風にかかり七八日経ち,続いて寒熱が現れ,周期性があり,来るべき経水が来なければ,此れは熱が血室に入ったのである,すると血は必ずや結ぼれる,ために瘧状の如く,周期性になる,小柴胡湯が之を主る。”
肝は血を蔵するゆえ,血室とは肝臓を指す。
肝胆は同居するので,此の方を用いて枢機を疏利し,内陥した邪を表より解することができれば,血は結ぼれず,寒熱して瘧状の如きも愈やされる。
此の条は臓病を腑から治す法を示している。
6. “陽明病で,潮熱を発し,大便が溏であれば,小便もよく出るはずだ,それでもなお胸脇満が去らなければ,小柴胡湯を與えよ。”
大便が溏なら,小便も通るとは,二便が通利していることを説明したいからで,二便が通利してかつ潮熱を発し,胸満が去らないのは,気鬱津凝が胸脇にある,故に本方を用いて少陽の津気を疏通させる。
7. “陽明病で,脇下が硬満となり,大便が出ずに嘔き,舌上が白苔なら,小柴胡湯を與えよ。”
便秘の機理は甚だ多く,熱が盛んで傷津し,腸中が燥結し,舌苔が黄燥なら,承気湯類を用いて寒下せよ,寒冷が積滞し,腸が伝導を失い,舌質が淡嫩なら,温脾湯類を用いて温下せよ。
陰虚で腸燥し,燥結が通らず,舌紅で少苔なら,増液湯類を用いて潤下せよ。
此の証の便秘で苔白なら,津凝不布の象である,既に寒下の宜しき所に非ず,又 温下の対する所に非ず,潤下は更に禁例である,小柴胡湯を投じて三焦の津気を疏暢し, 津気が五臓に調和すれば,六腑に降りかかり,燥結の憂は無くなる。
この種の便秘は三・五日に一行が,何年も続き,別に苦しくないのが特徴である。
脇下が硬満となれば本方を使用するのを基本とする。
8. “本の太陽病が不解のまま,少陽に転入し,脇下硬満,干嘔不能食,往来寒熱となったが,尚未だ吐下をさせず,脈沈緊の者には,  小柴胡湯を與えよ。” 脇下とは肝胆の部位で,脇下硬満而干嘔不能食,往来寒熱とは,疑いなく少陽病である。
9. “諸黄で,腹痛して嘔すれば,柴胡湯が宜しい。”
どのような黄疸かを論ぜず,ただ腹痛・嘔吐を兼ねれば,均しく本方を暫用して三焦を疏利して,胆経を通調せよ。
10. “傷寒の中風で,柴胡の証の,ひとつでもあれば即ち是れである,必ずしも悉く具わらずともよい。”
此の条の説明はただ病機が邪在少陽に属しておれば,それが一証に過ぎなくても本方を使用できる。
仲景が小柴胡湯を使用する条文を綜合すれば,胸脇苦満が9条;嘔或いは干嘔が8条,腹痛或いは脇痛が7条;不欲食が6条;往来寒熱が4条である。
往来寒熱,胸脇苦満,脇痛或いは腹痛,嘔或いは干嘔,不欲飲食,是れが小柴胡場の主証である。
此の外に,眩暈・項強・発熱・潮熱・発黄・頭汗・咳嗽・心悸・小便不利・不大便などの諸証が,時にはある。
11. 咳嗽 «蘇沈良方»云わく:“元祐二年,時行の病にかかり長く咳をする者が少なくない。本方から人参・大棗・生姜を去り,五味子・干姜を各半両加えて,服したら皆愈えた,時には常に痰実で上が塞っても,只本方に依り,食后や臥時に服すれば,甚だ妙なり。”
此の方は咳嗽を治療するが, 仲景は已に述べているのだが,重視はしていませんし,また咳嗽を治す理については,注家も言及していません。
注意すべきは咳嗽の標は肺にあるからといっても, 病機は肺臓だけとは限らない,故に«素問· 咳論»は指摘している:“五臓六腑は皆人をして咳せしむ,独り肺のみには非ざる也。”
咳嗽を引き起す病理と三焦が津気を運行するのとは関係がある,津気の盈(余剰)虚(不足)は能く肺衛の宣降功能に影響し,気鬱津凝は,尤も多く見られる。
一旦ある臓腑が功能失調すると,少陽三焦の津気の運行逆乱が引き起され,それが肺に壅滞すれば,肺は宣降を失し,咳嗽を作す!
此の方には升清降濁・利気行津の功があり,三焦の津気を調和させ,肺衛の宣降功能が恢復すれば,咳嗽は癒える!
余はいつも此の方から人参・大棗・生姜を去り,干姜・細辛・五味子・茯苓を加えたものを用いて,久咳不愈を治療していつも良効を得ているが,調気行津こそが咳嗽治療の鍵であると信じている。
12. «張氏医通»は説く:“凡そ咳嗽して,一二口飲水すれば暫くでも止まるのは,熱嗽であり,熱湯を呷って暫くでも停るのは,冷嗽である。熱嗽を治すには小柴胡加桔梗を,また冷嗽なら,理中湯加五味子である。”
13. 失血 «仁斎直指方»は本方加烏梅を,“治男女の諸熱出血。”に用いている。
此の方は能く出血を治すが,決して偶然ではなく,根拠とする理論がある。
出血の原因は多いが,肝経有熱,迫血妄行;肝不蔵血,疏泄太過;衛気虚損,血失統摂の三種の機理が最も多い。
血熱妄行には,清肝止血が宜しく;疏泄太過には,斂肝止血が宜しく,気不摂血には,益気摂血が宜しい,此の方はあたかも一石三鳥のように,全部が揃っている。
方中の黄芩は清肝の要薬,血が熱迫に因って妄行するには,此れにて清熱止血の功を収める,人参・甘草・大棗は能く元気を補い,脈外に元気を充盛させると,陰血は脈中に守られ, 気不摂血にして血溢する者は,此れにて益気摂血の功効を収める。
酸斂の烏梅を加えて肝の疏泄を調理すれば,又 斂肝止血の法を体現出来る。
楊氏が少陽気鬱津凝の方を止血の治法に変えたのは,古方善用の実例である。
若し清熱の力量を増強したいと欲するなら,青黛・梔子・地楡・大黄の類を加えよ;
若し収斂止血の力量を増強したいと欲するなら,竜骨・牡蛎・白及の類を加えよ;
若し益気摂血の力量を増強したいと欲するなら,黄芪・白朮を加えよ;
若し寒熱錯雑ならば,附子を加えてもよい,柔軟な変化は,その人の心次第,ただ智者にのみ可能な神技である。
14. 体虚感冒 外感の風寒には,荊芥・防風・葛根を加え,三陽の表を疏解する; 外感の風熱には,金銀花・連翹・板藍根を加えれば,細菌感染と病毒感染に宜しい。
15. 反復感冒 衛気虚損により,腠理不密から,今日治愈しても,明朝又患うには,本方加黄芪を用いて益気実衛し,外邪の侵襲を防御する,附子は下焦の陽気を温煦して,衛気発生の源となり,白朮は健脾益気して,衛気充盛の継続をなせば, 何の患いや有らん。
16. 発熱 本方を発熱に用いるなら,柴胡の剤量は重くしたほうが宜しい,人参の2倍にして始めて退熱作用がある。
若し人参と等量だと,退熱療効は無い,蒲公英・敗醤草・金銀花・板藍根の類を加入すれば,清熱解毒の功を増強できる。
17. 乳房腫痛 寒熱嘔悪を兼ね,昏暈・口苦・咽干・両脇脹痛すれば,本方に蒲公英・青皮・白芷の類を加えると,清熱解毒,疏肝理気,疏泄風熱となる。
18. 乳癖 乳房が脹痛し,腫塊が喜怒消長に随い,面色無華,眩暈,舌淡・苔白・脈弦を伴えば,本方加瓜蒌・当帰・赤芍を用いて滌痰・散結・活血をする。
19. 頚部包塊 紅腫拒按,発熱悪寒,苔黄微渇,食少・脈弦数を兼ねれば,本方から人参・大棗を去り梔子・胆草・生地黄・車前子・沢瀉・木通・当帰・夏枯草を加える,甚しければ,大黄を加えてもよい。
20. 癇証 脳波検査を経ておれば,“異常脳波”となる。 患者は不規則に突然昏倒し,人事不省となり, 牙関は緊閉し,両眼は上視し,口から涎沫を吐き,面色は青紫となり,或いは頭昏・困倦・嗜睡がくる,記憶は減退し,神情は呆鈍となり,煩躁不安となり,失眠・善驚(上証は必しも具わらなくともよいが)となれば,即ち癇証と診断される,本方と桂枝湯の合用が宜しい。
熱に偏っておれば,本方から生姜・甘草・大棗を去って,丹参・竜骨・牡蛎・石菖蒲・鈞藤・黄連・琥珀・蝉衣・羚羊角を加えよ。
此れは筋膜が発生した病変である,本方には調気行津の功があり,息風解痙・開竅安神の品を加入すれば,病機と合う。
寒に偏っておれば,原方に竜骨・牡蛎・全蝎・蜈蚣の類を加えれば宜しい。
21. 妊娠子癇 此れは肝血不足,陰不済陽,少陽枢機不運,下虚上実であるから,本方加熟地黄・亀甲膠を用いて滋陰養血,柔和筋脈とする。
22. 肝気鬱結,痰鬱為癲 証として面色淡白,精神抑鬱,表情淡漠,神志癡呆,時には喃喃独語し,時には焦慮不安となり,時には哭笑无常となり,舌苔白膩,両辺徴黄,脈象弦滑を現す。
此れは思慮太過から,肝気鬱結し,少陽枢機不運となり,痰気互結し,神明を阻蔽し,精神異常となり,癲病を発したものである,本方加石菖蒲・遠志を用いて其の蔽阻を開き,神明を啓く。
23. 月経来潮,癲狂即作 此れは熱入血室,瘀熱が神明を上犯したのである,本方加牡丹皮・赤芍・桃仁・焦梔子・焦山楂を用いて,清解鬱熱,凉血化瘀をするか,或いは加大黄にて瘀血を攻逐する。
24. 胃脘脹痛が,片方か両脇に及ぶ 此れは少陽胆熱が内鬱し,胆気犯胃である。本方加青皮・枳殻・木香の類を用いて,行気破結すれば,脹痛は自から消える。
25. 目赤腫痛 此れは邪熱が少陽三焦に鬱し,清竅が塞阻し,白睛は外眦に赤脈が多くなる,本方加蒺藜子・荊芥・夏枯草を用いて風熱を疏散するか,或いは車前・木通の類を加えて淡滲利湿する。
26. 眼生翳膜 黒睛疾患の多くは肝胆と関係がある,若し気虚胃弱,少陽の升発無力に因り,翳膜を生じたのなら,本方加羌活・防風・川芎・白芷を用い,風邪を疏泄し,陽気を升発せよ。
27. 目眩昏蒙 三焦は津気の升降出入の通り道である,もし少陽の枢機不利で,玄府(汗腺)が閉塞し,絡間に精液が阻滞し,清純の気が鬱遏すれば,目眩昏蒙となる,本方加枸杞子・生地黄・女貞子・羌活・刺蒺藜等の薬を用いて運旋枢機,開通玄府,敷布精液すれば験を獲る(以上三証は巴中県中医院張玉竜経験から)。
28. 風丹(蕁麻疹) 本方に僵蚕・蝉蛻・防風・茯苓を加える。
29. 痄腮(流行性耳下腺炎) 本方に板藍根・僵蚕・赤芍・牛蒡子・夏枯草を加える。
30. 眩暈 頭暈眼花が・舟車に坐す如く・時に嘔吐せんと欲し・動けば甚しくなるのが主証なら,本方加竜骨・牡蛎を用いる;
若し外邪が加われば,疏風散邪の品を加えるべきである。眩暈の証には,気虚で清陽不升に因る者がある,補中益気湯合生脈散を用いて益気升陽する,痰飲水湿が陽位に僭居して,蔽阻清竅した者ならば,真武湯・五苓散・呉茱萸湯・朮附湯・沢瀉湯・蒿芩清胆湯の類を用いて痰濁を化して以って壅蔽を開く;
若し気虚で清陽不升と濁陰僭居陽位の両種の病機が同時に存在すれば,上述の諸方には長短があるから,本方だけを選用すれば,ちょうど好い。此の方の人参・甘草・大棗は益気補虚し,柴胡は升挙清陽するので,気虚下陥で,清陽が上らず頭眩すれば,此の益気升陽の品を得れば愈えることができる!
半夏・生姜は運脾除湿し,濁陰を降泄するから,湿濁が清竅を蔽阻した眩は,此の祛除湿濁の品を得れば愈える(湿濁が甚しければ白朮・沢瀉を重ねて加える)!
眩暈の基本病理は気血津液の盈虚変化が肝系の膜に影響したものであるが,只 調気調津の品を用いるだけで膜のことを顧みなければ,完全ではない,鎮静の竜骨・牡蛎を加入して,はじめて全てが考慮され,療効を高める。
外感が誘発した梅尼埃(メニエール)病に対しても療効が佳く,往々一、二剤で即効を獲る。
31. 頭痛 いつも午後2時になると,頭痛・眩暈が始まり,過ぎると諸証が無くなるのは,陰陽失調,升降逆乱である,此方加川芎・白芍を用いよ。
32. 妊娠悪阻 肝胃不和なら,本方加呉茱萸・黄連・白豆蔻を; 肝鬱血虚なら,加当帰・白芍・白豆蔻を; 肝熱脾虚なら,加茯苓・白朮・砂仁を。
病案: 陳行松,男,2004年8月3日就診。
行房すると精中に鮮血が混じる,多方の医治も無効にて,治を求めて来た。
舌色は淡で,熱は無い,そこで小柴胡湯加味:柴胡24g,黄芩10g,法半夏15g,生姜10g, 甘草10g,大棗10g,鳥梅10g,青黛10g,炒蒲黄10g,三七10g,黄芪30g,白朮15g,竜骨30g, 牡蛎30g とした。6剤を服した后,精中は無血となった,原方を再服すること数剤で,療効を固めた。

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