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天王補心丹(《摂生秘剖》)

天王補心丹の[主治] が健忘、不眠、大便乾燥と来れば高齢者の認知症にも応用されるのではないでしょうか?
[組成] 生地黄120 人参12 玄参・丹参・白茯苓・五味子・遠志・桔梗15 天門冬・麦門冬・当帰・柏子仁・酸棗仁6
[用法] 蜜丸、朱砂為衣,毎次服9g。
[主治] 陰虧(かけ)血少,心悸,健忘,失眠,夢遺,大便干燥,口舌生瘡,舌紅少苔,脈細数。
[証析] 心悸、健忘、失眠、夢遺が本方の主証である;陰虧血少は此の証の病機である;其の他の脈証は陰虚の辨証根拠である。
人の主は心,心を養うのは血,陰が虧け血少となれば,心の本体が失養し,心悸となる。
心の蔵神作用とは実際は大脳機能を指して言う。
大脳が正常思維を保てるのは,全て気血津精という基礎物質があるからである。
いま陰虧血少に因って,脳が濡養を失えば,思考する事が出来ず,健忘となる。
陰虧血少で,陽が亢じて陰に入ることが出来ないと,陰虚のため涵陽をする事が出来なくなり,不眠になる。
遺精とは本は腎病に属するが,また下は陰虚で,上が陽亢だと,日中の事を思い出し,夜に夢遺をする,此れは上で神が揺らぎ,下では精泄となるメカニズムである。
何故 上述の四証が陰虧血少に因るものと分かるのか?
大便干燥,舌紅少苔,脈細数だからである。
[病機] 陰虧血少。
[治法] 養心安神法。
[方義] 陰虧血少,治は滋陰補血に宜し,心神失養すれば,法は当に養心寧神すべし。
此の方の生地黄は凉血滋陰を専門とし,用量は諸薬の八倍も大きい,玄参を得れば相助けて,腎経に同入し腎水を滋して心火を制し,血分に同入し亢陽を瀉して陰津を滋す; 天冬、麦冬は清養肺胃を専門とし,気分の津液を補充する,四薬を同用すれば,心腎の陰津を滋補するのが主で、肺胃の陰津がそれに次ぐ輔となる、また血中の陰津が滋されるのが主で、気分の陰津がそれに次ぐ輔となるいう配伍形式である。
人参を配するのは心気の不足を補い,五味子は心気の耗散を収斂する,当帰は生地黄の養血和営を助け,柏子仁、酸棗仁は養心寧神する為である,それはまた滋陰が主で,補血が輔で,兼ねて心気を補うという配伍形式である。
諸薬が皆補だと,壅滞しやすくなるのを防がねばならない,補の中に通を置いて,はじめて滞らなくなる。
方中に人参、五味子の益気があるので, 桔梗の肺気開提がある;生地黄、当帰の補血があるので,丹参の活血行滞がある;生地黄、玄参、天冬、麦冬の滋陰があるので,茯苓の甘淡滲湿があり,又 補中に通がある配伍形式になっている。
諸薬の性は沈で,上へ達し難い,故に桔梗の浮性を借りて舟楫とする;三焦が若し滞れば,水火が互いに済(すく)い難くなるのを考慮して,また遠志の祛痰を用いて宣滞している,二薬はまた載薬上行と交通心腎の法となっている。
朱砂を丸衣とするのは,一つには清心安神のため,二つには諸薬の黴変を防止するためである。
諸薬が合用して,陰血が補われれば動悸は除かれ,心神は養われ記憶が回復する,陰が能く涵陽すれば睡眠は安らかとなり,水火は相済されて夢遺は愈える。
此の方は桔梗、丹参、茯苓、遠志を選用して気血津液を宣通する,桔梗はまた載薬上行し,丹参はまた補血し,茯苓、遠志はまた寧神をする,すべては一薬両用となっている,学ぶ者はこれに気が付かなければならない。
[応用] 四つの主証のうち一証でもあれば本方が使用できる,但し大便干燥、舌紅少苔,脈象細数を兼ねていなければならない,それで陰虧血少のメカニズムが整う。
故に便干、舌紅、少苔、脈細が辨証の要点となる。
気血津液が同補されれば,能く心神は養を得る,本は心悸、健忘のために設けられたものである。
若し本方を用いて失眠を治療するなら,酸棗仁の量を重くするのが宜しい;夢遺の治療には,竜骨、牡蛎を加えて固腎渋精をはかる。
    『中医治法與方剤』(陳潮祖)より

※厚生労働省から「植物由来製品である青黛(せいたい)を摂取した潰瘍性大腸炎患者において、肺動脈性肺高血圧症が発現した症例が複数存在する」という通知が出されたそうです。
『本草備要』には「青黛は陰虚火炎者は忌用」となっています。
単品で長期間にわたり服用を続ける場合には必ず補陰にも配慮しなければなりません。
天王補心丹における処方構成の配慮には学ぶべき点が多くあります。

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