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麦門冬湯《金匱要略》

世間の評価:
・長引く空咳に効果がある。
・体力が中くらいで、たんが切れにくく、のどや気道が乾燥して顔を赤くして咳き込むとき。
痰の少ない乾咳に用いる。
・痰のしきりに出る者、或いは気管支拡張症などのため痰の喀出の多い者に、麦門冬湯を与えると、反って咳がひどくなり、痰の量も多くなり、夜も眠れないほど苦しむことがある。だから痰の多い者には、麦門冬湯はよろしくない《大塚敬節》
また、麦門冬(滋潤性)と半夏(燥湿性)の共存は相反する薬性であるが、多くの解説書ではそれぞれの役立つ部分だけを取り上げて解説している。すなわち麦門冬は滋潤をし、半夏は降気をすると。
この二点について、『中医治法與方剤』(陳潮祖)ではどのように解説しているか比べてみてください。
‥‥‥
[組成] 麦門冬70 半夏・人参・甘草10 大棗12枚 粳米15
[主治] 津気両虚,痰滞気逆,咽喉不利,喘咳短気,舌紅少苔,脈虚而数。
[証析]
主症:短気して喘し,咽喉が不利;
病機:津気両虚に,痰滞と気逆;
辨証:津気両虚; 舌紅く少苔,短気して脈虚
肺が健全なら肺気の粛降により陰津は濡潤となる。
それが久病により津気が傷つくと,肺機能が損なわれて津気は下行せず,ために大気は上逆し痰が肺に滞る。
虚と滞,ふたつの病理により,短気して喘し,咽喉は不利となる。
津気両虚は,舌紅く少苔,脈虚から分かる。
気逆痰滞は,喘と咽喉不利から分かる。
[病機] 津気両虚,痰滞気逆。
[治法] 津気双補,祛痰下気法。
[方義] 益気生津,祛痰降逆。
麦冬を重用して津液を補い,肺陰を滋養する;
人参は元気を補い,肺機能を恢復する;
甘草、大棗、粳米には健脾和胃により,気血生化の源を滋し,津気双補をする。
半夏は祛痰降逆し,痰窒を開き,逆気を降し,喘を平とする。
本方は津気の補益を主とし,兼ねて痰滞を開く,補虚の中に通滞の法がある;
生津が主であり,行津を輔とす,相反の中に相成の理がある。
気逆して喘するは津虚、気虚、痰滞の三種の病理によるためだから,補虚通滞の治療が宜しい。
本方の研究には次の三点に注意しなければならない。
①本証の基本病理について:《金匱要略》では "大逆上気,咽喉不利,止逆下気,麦門冬湯主之。"とあるが、《医宗金鑑》では、大とは火の誤で,大逆上気は火逆上気と改めるべきだと異議を出している。
しかし臨証所見では,火熱の証象は無く,《医宗金鑑》の説は臨床に符合せず,本証の機理にも符合しない。
本証の基本病理は久病による津気両虚,痰滞肺系であり,そのために気逆不降になったものに違いない。
仲景が大逆上気と称するのは,心肺気衰となった根源は喘咳短気であることを強調したかったからである。
②滋陰薬と祛痰薬を同用する訳は,麦冬と半夏の配伍意義から考えなければならない。
多くの注釈家はみな本証を肺胃津虚と言うが,痰滞とは少しも言わない。
《金匱心典》独りが慧眼をもって,本証の原因は"火熱夾飲による逆"であると指摘しており,本証が単純な肺胃津虚ではなく,肺の津気虚損がもたらした肺津不布でもあるので,咽喉不利と喘咳痰多の二つのの相反する証象が同時に存在すると説明している。
多くの医家は痰少に舌紅少苔を兼ねると論じ,尤氏は痰多に舌紅少苔を兼ねると論じている。
痰多、痰少に論が分かれている。
一方は痰少の故に,麦冬の益胃生津と,半夏の開胃行津を用いて,津液上承を助け,潤肺の目的を達成すると言う。
また一方は痰多の故に,麦冬の清金潤肺と,半夏の消痰で, 生津と燥湿を并用することになったと言う。
本書では本方の病理分析に,尤氏の説を取っている。
③本方に人参が配伍されている理由は,短気にして喘するのは肺気虚損と心気虚衰が合わさって反映しているからである。
五臓の機能はみな元気を動力としており,人参の大補元気により五臓はみな補われる。
単に人参は肺脾の気虚を補うとすれば,それはまだ元気という根本を把握していないからである。
[応用] 久病にて気喘し,舌紅少苔なら,本方を用いることが出来る。
《肘后備急方》の用治は"肺痿にて咳唾涎沫して止まざる"である,陳修園の用治は倒経である,是れらはみな肺津不布と粛降無権の二つの用方に基づく。
 ※「心肺気(元気)衰」と「痰多」の指摘は新しい見解である。

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