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桂枝湯の解肌とは

《傷寒論》第16条に云く:“桂枝の本来は解肌なり,若し其の人の脈が浮緊で,発熱して汗が出ていなければ,与えてはいけない”。
桂枝湯の効能は解肌であると説明している。
では解肌とは何ぞや?
歴在の《傷寒論》の教材中では,あるものは“肌表の邪を解除する”と解釈し,あるものは“解肌祛風とは,発汗の緩剤なり”と解釈している。
これでは解肌の本当の意味にはならない。
我々は現在 桂枝湯の効能を“解肌祛風,調和営衛”と称し;麻黄湯の効能を“発汗解表,宣肺平喘”と称している。
両方の作用機序と適応範囲を比較すれば,幾らかは理解の助けになろう。
発汗とは,亦 発表とも称し,辛温発汗の方薬を用いれば,腠理の開発を通して,出汗を促し表邪を祛除する事である。
其の適応症は太陽傷寒の表実証で,代表方は麻黄湯であり,其の病機は寒邪束表,腠理閉塞で,其の典型的症状は発熱悪寒無汗である。
病位から看れば,最も表が浅く;性質から看れば,純実無虚(実のみで虚は無い)である。
解肌とは,調補営衛を通して,営衛関系を協調させ,営衛の機能を恢復して汗出邪去の方法を達成するものである。
桂枝湯が其の典型代表である。
肌はまた肌肉の意味であり,桂枝湯証と麻黄湯証を比べると,病は一層深くにあり,所属の臓腑から看れば,麻黄湯証は肺に在り,治療目的は宣肺を主とする;桂枝湯証は脾胃に在り,治療目的は補脾胃に在る。
ゆえに桂枝湯の根本は補脾胃と袪外邪で,解肌の実質は調補脾胃である。
第一に組成から分析すれば,桂枝湯は辛甘温剤に属し,解肌祛風の外に,調補中焦,強壮胃気の作用もある。
方中の桂枝は辛甘温で,解肌祛風,温通血脈の外に,温補脾胃もする,《神農本草経》謂く“咳逆上気,結気喉痺,吐吸,利関節,補中益気を主る”。
生姜の辛温は,桂枝の散邪を助ける外に,温中健胃もする;甘草の甘平は,益気健脾;大棗の甘平は,補脾益胃,滋営養血。
芍薬の酸苦微寒は,養血斂営,《神農本草経》謂く“邪気腹痛,除血痺,破堅積寒熱疝瘕,止痛,利小便,益気を主る”。
第二に桂枝湯を服した后に熱稀粥を啜ることを要求し,穀気をも補脾胃の助けとしている。
桂枝湯の解肌祛風の源は調和営衛にあり,調和営衛の源は補益中焦にある。
脾胃強健,気血充沛の基礎があってこそ,桂枝は衛気を通調し,腠理は開き汗出邪去となる;芍薬は営気を収斂し,営を内守するから過汗傷正にはならないのである。
営衛が和し腠理の開閉が適切だと,腠理が開いて発汗祛邪となり,邪が去れば腠理は閉じて汗は止る。
尤在涇は小建中湯を論じた時に説いている “陰陽の和を欲求するなら,必ず中気に求めよ,中気を立てること,建中することである”。
この論述は桂枝湯にこそふさわしい,何故なら営衛の源は陰陽にあり,建中の源は桂枝にあるからです。
章楠は《傷寒本旨》中で桂枝湯を論じた時に説いている“此の方の立法は,脾胃より営衛に達し,一身を周行し,表裏を融合し,陰陽を調え,気血を和し,経脈を通す”と,これで更に明確である。
以上の道理から,我々は桂枝湯を広汎に使用することが出来る。
凡そ脾胃虚弱で,腠理が疏松な人は,寒邪を感受すると容易に太陽中風の表虚証を形成し,発熱、汗出、悪風、脈浮緩を現す,それが桂枝湯で解肌祛風,調和営衛する適応証なのである。
外感でなくとも営衛不和となり,病人は発熱汗出することがある。
例えば更年期綜合症や,交換神経の機能紊乱等である。
営衛不和はまた営衛の運行渋滞を表わし,身痒、肌膚の麻木不仁(しびれ)となる。
臨床では蕁麻疹、四肢麻木、硬皮病等にも用いられる。
《金匱要略》で黄芪桂枝五物湯を用いて血痺を治療しているのが其の例である。
桂枝湯が脾胃を調補することから,脾胃の病変にも適応症を広げている。
例えば《金匱》婦人病篇に:“婦人は平脈だが,陰脈が小弱で,其の人渇き,食べらず,寒熱は無い,これは妊娠である,桂枝湯が之を主る。数えて六十日頃に此の証があれば,これは妊娠して胎気が上逆して胃気不和となり食べられないのである”。
また脾胃虚寒の腹痛に小建中湯等を用いるのも其の例である。
小建中湯は桂枝湯に芍薬を倍とし、飴糖を加えたもので,広汎に各種消化系統の疾病に用いられる。
桂枝湯は脾胃を補って,気血を益するのが主なので,各種の気血陰陽虧虚の病証に用いられる。
例えば気営不足の身疼痛に桂枝新加湯を用いているのに習って,気血虧虚的な周身の関節疼痛で,“風湿性関節炎”、“神経官能症”等で,不紅不腫,無寒熱の象で,舌淡脈沈無力者にも用いることが出来る。
他にも桂枝加竜骨牡蛎湯、小建中湯、黄芪建中湯、当帰建中湯等も皆同じ事が云える。
※桂枝湯の解肌とは肌表の邪を解除するだけでなく、また脾胃を調補する事も出来る。婦人妊娠して「食べらず」とは、悪阻(つわり)の一歩手前である。悪阻ならば『金匱要略』に「婦妊,妊娠嘔吐不止、乾姜人参半夏丸主之」があるが、建中には桂枝湯の方がよい。

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