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防風通聖散(《黄帝素問宣明論方》)

[組成] 防風・麻黄・荊芥・薄荷・連翹・川芎・当帰・白芍(炒)・白朮・黒山梔・大黄(酒蒸)・芒硝15 桔梗・石膏・黄芩30 甘草60 滑石90
[用法] 粉末とし,毎服6g,加生姜3片,水煎服。
若し湯剤を作るなら,剤量は比例して増減せよ。
[主治]
1.憎寒と壮熱あり,頭目は昏眩し,目赤く睛痛む,口苦く口干き,咽喉は不利で,胸膈は痞悶し,大便は秘結し,小便は赤渋となる。
2.瘡癰腫毒(急性化膿性感染)や,腸風(便血)痔漏や,驚狂譫語し,手足は抽搐し,風丹瘾疹(蕁麻疹)が出るもの。
3.亦 土漆(天然漆)の過敏を治す。
[証析] 此方は表裏倶実の風熱に用いる。
寒が表を傷り,表衛が閉鬱したか,或いは温邪を上に受け,先ず肺が犯され, 邪は気分に在り,化熱して傷津し,三焦は熱熾となる,外(表)では憎寒して壮熱あり,内(裏)では口渇と口苦があり,上では頭目が昏眩し,目赤く睛疼み,驚狂や譫語を発し,手足は抽搐する,下では大便は秘結し,小便は赤渋し,腸風や痔漏など,一言では言い尽くせない,是はみな熱盛のゆえなり。
故に呉崑謂く:"表裏に客熱ありて,三焦が大いに実するなら,此方が主る"。
風熱が壅盛で,表裏倶に実となる。
疏風清熱,表裏双解の法なり。
三焦の熱熾なら,治法は清熱すべし。
方中の連翹、梔子、黄芩、大黄は均しく清熱解毒作用が有る,若し温邪上受なら,此れらが致病原因を消除する;若し傷寒の化熱なら,配合されている石膏が其の鬱熱を清する。
熱は気鬱に由って化生する,寒凉を過用すれば,陽気を損傷するから,熱の出路を用意して,事半功倍(少ない薬量で大きな効果を)の効果を収めなければならない。
故に開表泄邪の防風、麻黄、荊芥、薄荷を配して,熱を表から散ずる;清利湿熱の滑石,瀉熱通腑の芒硝、大黄が,熱を二便へと引導して下す,合わせて解表通裏,表裏双解の効能となる。
外邪が相い侵せば,気血の宣流に影響する,故に桔梗を配して肺気を開泄し,麻黄の協助により肺衛機能を恢復する;当帰、川芎、芍薬は活血調営し,営血の正常運行を恢復し,合わせて調和営衛の効能となる。
佐薬には健脾の白朮、甘草があり,又 石膏の寒凉が胃を害うのを防止している,此方は薬味が多いが各々が主となり,能く重疾を愈やす。
此方を学習するに当たり研究すべき幾つかの問題:
1.既に熱盛三焦となっているから,清熱するのは当然である,なのに何故こんなに多くの解表薬を用いるのか?
此証は寒が表を傷り,鬱結して化熱したものである事を知らねばならない,若し解表疏邪や,宣通毛竅をしなければ,憎寒壮熱の証候は解除出来ない,解表薬物が四味と多いが,全ては鬱熱を発散する為である。
方中の荊芥、防風、白芍、甘草には均しく解痙作用が有る,故に手足抽搐に対して効果がある。
2.此方は何故能く瘡癰を治すのか?
瘡癰とは熱毒壅滞に由って成り,治法は清熱解毒,疏通壅滞をすべきである。
此方には梔子、黄芩、大黄、連翹の清熱解毒が有り,麻黄、荊芥、防風、薄荷は毛竅を宣発し,芒硝、大黄は裏結を通じ,川芎、当帰、白芍は行血し,白朮、滑石は通津し,仙方活命飲の構成と似ている,故に有効である。
3.此方は何故能く風丹瘾疹を治すか?
風邪が膜原に客し,外では疏解できず,内では通瀉できないのが,風丹瘾疹の基本病理である。
此方は外では毛竅を開き,内では胃腸を通じて,風邪を引導して外へ出す,并せて梔子等の薬で清解鬱熱し,川芎等の薬で血行を暢旺にする,故に可能である。
土漆の過敏反応と風丹の病理は同じだから,本方を使用できる。
4.此方は何故能く腸風痔漏を治すか?
腸風痔漏とは風邪が内陥して,血が気に随って腸道へと陥下するものである。
此方の梔子、黄芩はみな清肝の薬物だし,芒硝、大黄は尤も血分の邪熱を清瀉する良薬である,邪熱が一たび去れば血は自ら安寧となる,荊芥、防風、麻黄等の升浮薬物を用いて疏風泄邪するのは,気機を外達せしめ,"陥者は之を挙げる"という意味がある,故に腸風下血にも亦使用できる。
[応用] 外に壮熱が有り,内に便秘が有れば,形は白虎承気湯証に似て表鬱を兼ねる者であるから,此方を用いる。
麻黄、防風、荊芥、当帰、芍薬、川芎、白朮を減去すれば凉膈散になる,しかし此方は清熱解毒,発散鬱熱,活血調営に長ずる。
風動抽搐に用いるのは適切ではない。
若し借用したければ,荊、防、芎、帰、麻、朮を減去し,息風の品を加入せよ。
表裏双解には2方がある。
二方は同じく表裏同治の配伍形式に属するが,但だ一寒一熱の異が有る。
五積散は表裏倶寒を治し,其の基本病理は外寒相侵により気鬱、血滞、津凝となったもので,一切みな不通の証候である,故に全方は温通が着眼点となっている。
防風通聖散は表裏倶熱を治し,其の基本病理は:外邪相侵により,気鬱から化熱となり,熱盛のため津傷となったものである,故に一切みな凉散と凉瀉が着眼点となっている。
   『中医治法與方剤』(陳潮祖)より
※風邪が体表を襲って悪寒し、体内では鬱熱が壅滞し、津液が失われてきた為に熱毒が発生したのが防風通聖散の証です。この三段階が認められなければ使えません。二段階目や三段階目の一部の症状だけを見て使うのなら、もっと他に良い処方があるのです。

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