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メニエール病と漢方

現代医学では「内リンパ水腫(内耳のリンパが増え、水ぶくれの状態)」が原因ではないかと云っている。
中国では「内耳淋巴積水と迷路水腫の所致」と表現している。
では積水、水腫はどうして生ずるのか?その原因は今なお未明である。
最近、『陳潮祖 臨証精華 宋興主編』という書物を入手した。
陳潮祖は『中医治法與方剤』の著者である。
その学術継承人である宋興(成都中医薬大学教授)氏による師の臨証精華紹介本である。
その中の一つに"梅尼埃病(メニエール病)"と取り組んだ一節があります。
吾が師、陳潮祖は梅尼埃病の患者を,肺、脾、腎の三臓の偏虚によるものと考えていた。
その多くは濁陰上汎・蒙蔽清陽ではないかと。
肺は気の宣降を司り,虚すれば宣降は失われ清気が停滞する;脾は運化升清を主り,虚すれば運化は阻碍され清陽は升らない;腎は温煦泄濁を主り,虚すれば気化が働かず濁陰は降らない。
且つ本病は外感六淫の邪に因って誘発するものが多く,既に有る正虚の面と,新たな邪実の面とがある。
そうとは知らずに"鎮肝熄風湯"で治そうとする者が多いが,効験は十のうち一か二である。
本証の辨証要点は舌胖苔滑と,脈の弦細か或いは緊である。
治療は肺、脾、腎の三臓を中心とする。
まず肺衛を開宣し表裏を暢通する,表裏が通暢すれば清気が敷布し,濁陰は自ら散ずる;
次いで中土を健運し升降の機を回復すれば,清陽は上に聚り,濁陰は下に趨る;
さらに腎気を温通し気化を回復すれば,気化は流行して濁陰は自ら泄する。
三位一体となれば,益気通陽、解表導濁の治療が体現される。
吾が師は仲景の五苓散加減より"定眩飲"を考案した:
桂枝6 茯苓・沢瀉30 白朮15 半夏20 人参・天麻10
方中の人参は肺、脾、腎三臓の元気を補益し清陽を振奮させる;
白朮は健脾除湿して水津を布運する;
半夏は化飲降逆して引流下趨を;
茯苓、沢瀉は利水滲湿して濁陰を排泄させる;
桂枝は温経散寒,開宣表衛,上通肺竅,下暖命門など,最も能く三焦の気化流行を推動し,人参の布張清陽を助け,又茯苓、沢瀉の化濁散陰を助ける;
眩暈発作の際に,并見される煩躁嘔逆は,多くは肝陽擾動を兼ねる,故に天麻を佐として平肝息風する。
全方が共奏して補虚泄濁、平肝定眩の功となる。
舌苔白滑で外感症状が重ければ,桂枝の用量を倍加し,人参の用量を半減する;
舌紅苔黄で,熱象があれば,去桂枝,加桔梗、薄荷、淡竹葉 各10g;
舌苔厚膩なら,加蒼朮、紫蘇梗、藿香 各15g,
舌紅少苔で,陰虚陽亢者には禁用である。
   『陳潮祖 臨証精華 宋興主編』より
※単に水飲の処理からではなく、先ず「外感六淫の邪に因って誘発する」と考えて、「肺衛を開宣」することから着手しているのが斬新である。

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