おっぱいの出がわるいのに桂枝加芍薬湯
『中医治法與方剤』(陳潮祖)には「産后乳房脹痛」に桂枝加芍薬湯が有効とあります。
その訳について補足説明をいたします。
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桂枝加芍薬湯《傷寒論》は、外感風邪による表証を誤って下した結果、表邪が裏の腸に入って腹痛を起こした場合の処方です。
本太陽病、医反下之、因爾腹満時痛者、属太陰也、桂枝加芍薬湯主之。
桂枝湯の芍薬が増量されているだけで構成は同じですから、基本的には桂枝湯と同じ作用を持っています。
即ち裏へ入った表邪を表へ誘導して排泄するのが狙いです。
誤って下した為に失った体液という陰分を補充するために芍薬を増量させているだけです。
桂枝湯の方意は「営衛失調すなわち営弱衛強」の補正です。
この「営弱衛強」という状態は傷風の他に、産后にも起こり得ます。
初産に起こりやすい「産后傷陰による乳房脹痛」です。
初産后は「衛強」は無いけれども、体液・血液という陰分を消耗して「営弱」になりやすくなります。
それで「産后傷陰」は「営弱衛強」とよく似た状態と云えます。
新産后の乳房の経脈未通による脹痛(乳汁流通不利)を「営衛失調」と考えれば桂枝加芍薬湯が適応されます。
「営弱」が解消すれば営衛が和して経脈が通利して乳汁が流通します。
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この発想は大変斬新だと思います。
我が国では「授乳時の乳腺炎に葛根湯が効く」という情報が流れています。
その根拠については誰も証明できないのですが、この通説は桂枝加芍薬湯と何か関連があるかもしれません。
何故なら成分的には、[桂枝加芍薬湯+麻黄・葛根=葛根湯]ですから。
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「授乳時の乳腺炎に葛根湯が効く」というのは本当か?否か?について、今までに三回もテーマに上げてきました。
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