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甘露消毒丹(《続名医類案》)

[組成] 白蔻仁・藿香・薄荷・連翹・射干・川貝母・木通10 石菖蒲12 黄芩20 茵陳24 滑石30
[用法]水煎服。
[主治]時疫を感受し,湿熱が変生され,それが少陽三焦を阻むと,発熱倦怠となり,面は油垢の如く,汗が出ると酸臭がし,胸悶腹脹し,神志は昏蒙となり,小便は短赤で,舌苔は黄膩,脈象は濡数となる。
亦 咽腫、頤腫、斑疹、出血、黄疽、瀉痢、淋濁証をも治す。
[証析]此れは時疫(流行性感染症)を感受し,湿熱を変生し,それが少陽三焦の気分を阻むのを治療する主方である。
温疫は口鼻から受けるが,先ず肺胃にぶつかる。
吸気から受ければ,先ず肺系を侵犯し,津気の運行に影響すると,気鬱化熱となり,津凝して湿となり,それが少陽三焦に留恋すると,諸証が蜂起する。
湿熱が交蒸すれば,身熱倦怠となり,面は油垢の如く,汗が出ると酸臭がする;
湿は清陽を閉じこめ,気機が阻滞されると,胸悶脘痞,腹脹不舒となる;
湿熱が蒸騰し,清竅を上蒙すれば,神志は昏蒙する;
湿が三焦を阻(はば)み,水道が不利となれば,小便は短赤となる;
頤腫(耳下腺腫)、咽腫は,湿熱が上焦を阻み,壅滞し不通となった象である;
斑疹、出血は,疫毒が内侵し,血熱が外溢したものである;
身目が発黄すれば,それは邪が口より入り,熱鬱肝胆となり,胆汁が外溢した症である;
瀉痢となれば,それは疫が口より入り,腸道を侵犯したからである;
淋濁となれば,それは尿路に感染し,腎系を侵犯したのである,受邪の途径は違っても,基本病理は同じである;
舌苔の黄膩が,湿熱の佐証である。
[病機]三焦に湿熱あり。
[治法]清熱解毒,芳化淡滲法。
[方義]湿熱が少陽三焦を阻むと,三方面から施治することを考慮しなければならない:
①疫毒が肺胃を侵襲し,気鬱化熱となれば,清熱解毒により,病因を消除し,所化の邪熱を解消しなければならない。
②津凝から湿になれば,淡滲利水により,三焦を通調し,已に停湿したものを祛除しなければならない。
③肺胃が失調すれば,辛開肺気と,芳香醒脾により,両臓の功能を調理しなければならない。
此の方は黄芩を重用し清熱解毒するのだが,凉散の連翹、薄荷の相助を得て,はじめて病因を消除し鬱熱を疏解できる;
滑石を重用して清熱滲湿するのだが,茵陳と木通の相助を得て,已停の湿を祛るのみならず,増強された清熱の力で,熱邪を引導して下行させ,清熱利湿の主要部分となる。
佐薬の射干、貝母は泄肺利咽,化痰散結するが,薄荷が上焦の津気を宣通させるのと合さり,肺衛の功能を調理する;
白豆蔻、藿香、菖蒲は芳香化湿,醒脾利気となり,脾運を恢復する。
諸薬が合用されて,能く清熱解毒,芳化滲湿の功効を呈し,湿熱が三焦に阻滞する証候に用いられ, 理想的な療効となる。
此の方を研究するには,薬物の選択と除湿薬の配伍の両方面に注意しなければならない。
先ず除湿薬の配伍について言えば:此の方は辛開肺気を上に,芳香化湿を中に,淡滲利湿を下に展示して,三焦并調の配方となっている。
開宣肺気とは,上閘を啓(ひら)いて水源を開く;芳香化湿とは,脾気を醒して脾運を復す; 淡滲利湿とは,水道を通して湿濁を祛ることである。
次に薬物の選択について言えば:方中の黄芩は肺、胃、大腸、肝胆の清熱に長じ,連翅は上焦心肺の清熱に長じ,二薬で上中下三焦を兼顧する,辛凉の薄荷を再配すると,清中に宣有り,凉しても鬱せず,熱を外へ出しても凉伏となる憂はなく,清軽宣達となり,気機を展(ひら)く法となっている。
滑石は三焦湿熱を清利するのに長じ, 木通は心経湿熱を清利するのに長じ,茵陳は肝胆湿熱を清利するのに長じ,三薬で上中下三焦を兼顧するのみならず,又清熱の力を増強してもいる,故に薬物の選択から云っても,優れている。
本方が各種の急性熱病に広汎に応用されるのは,薬物の用途が広汎だからである。
[応用]
1.本方は湿熱壅滞が上焦にある咽腫,湿熱鬱滞が三焦にあり,発熱日久となりても不解,汗出でて黏,食欲欠佳,身重無力,大便不爽,口苦、口甜,苔黄膩者に用いられる。
2.暑温(乙脳)で神志不清の者には,菖蒲の剤量を加重し,并せて大青葉、板藍根各30を加え,解毒力を増強し,亦少量の麻黄を酌加して宣肺行水の功を増強させる。
菖蒲の功能は醒脳開竅,大青葉、板藍根は能く乙脳の病毒に抗し,麻黄は能く顱(頭蓋)内の水腫を消すから。
3.頤腫(腮腺炎)で湿が重くなければ,普済消毒飲を用いる,若し舌苔黄膩なら,此の方に病毒を善治する青黛10,或いは板藍根30を加え,解毒力を増強する。
4.咽腫には連翹の剤量を加重し,并せて金銀花、大青葉、板藍根各15〜30を加え,解毒力を増強する。
5.斑疹、出血には方中の黄芩が止血の功を具えているが,青蒿、青黛、白茅根、大薊、小薊等の清熱解毒、凉血止血薬を酌加してもよい。
6.黄疸は常に湿重、熱重の両型に分ける。
茵陳蒿湯は熱盛湿微者に対すれば療効が好い,若し舌苔黄膩で,湿熱倶重なら,此の方を用いれば効を獲る。
茵陳の剤量は30〜60が宜しい,若し梔子、大黄を加えれば前后分消となり尤理想的である。
7.蚕豆黄(溶血性黄疸)には本方に田艾(鼠鞠草、清明菜)を加えれば療効が好くなる。
8.熱淋(腎盂腎炎)には柴胡、白茅根、大薊、小薊、石韋等の清熱通淋を加える。
9.瀉痢(腸炎、痢疾)には地楡、鉄苋菜等の清熱解毒薬を加える。
   『中医治法與方剤』(陳潮祖)より
※一見して大層な処方に見えますが、日常的な掌蹠膿皰症や副鼻腔炎などにも応用が出来ることを経験しています。

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