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参苓白朮散(《太平恵民和剤局方》)

私は食欲があるから脾胃気虚ではない、と思っておられる方がいます。
そのくせ瞼が腫れたり、下肢がむくんだり、おりものがあったり、肥満傾向があったりしています。
これらの症状の原因には痰湿の存在があり、痰湿の生成には脾胃が関与しています。
だからいくら食欲があっても脾胃気虚を否定することは出来ません。
そういう人の為にこの処方は是非紹介しなければと思いました。
食欲が増えて肥るのではないかと心配する必要はありません。
食欲はそのままで、水太りの人なら却って体重が減り、体型がしまります。
[組成]人参・白朮・茯苓・炙甘草・山薬15 白扁豆12 蓮子肉・薏苡仁・縮砂仁・桔梗9
[主治]
1.脾胃が虚弱で,飲食が消化せず,みぞおち部が痞悶したり,或いは吐いたり下痢したり,四肢に力が入らず,痩せていき,脈は虚弱である。
2.小児の営養不良,身体痩弱。
3.婦女の脾虚湿盛,帯下色白,面色蒼白,身体肥胖,大便溏薄,或いは両足の浮腫,或いは月経時の泄瀉。
[証析]胃は納穀を主り,脾は運化を司る。
脾胃が虚弱だと,納運ともに失常し,津気は正常な升降が出来なくなり,遂には納運升降の各方面に病態を出現する。
運化力が弱ければ,飲食は消化しない;それで湿凝気阻ともなれば,脘部は痞悶する;
清陽が不升なら,濁陰は不降となり,吐いたり瀉したりする;
水穀の精微を化生できなければ,形体は失養し,四肢に力が入らず,体は消痩する;
小兒が営養不良になるのは,脾運不健のせいである。
婦女の帯下の色が白く体の肥胖と便溏を兼ねれば,脾虚湿盛は,前陰へと下注する;
両腿の浮腫も亦水湿下流のせいである。
経行時の泄瀉は,平素の湿滞に因るもので,月経が来た時に気機は升よりも降が多くなり,湿濁が気の下行に随い,泄瀉となる。
本方が所治する諸証とは,脾虚湿滞による,升降失調である。
[病機]脾虚湿滞,升降失調。
[治法]補気健脾,升清降濁法。
[方義]脾胃を治療するには,虚を補い,湿を除き,滞りを導き,気を調えなければならない。
方用の人参、白朮、茯苓、甘草、山薬、扁豆、蓮子、薏苡仁は脾を補う,茯苓、薏苡仁は滲湿をし,砂仁は芳化湿濁,醒脾利気をし,合せて人参、白朮、茯苓、甘草は暖胃補中をし,能く諸薬の呆滞するのを克服し,補しても滞らないようにする;
扁豆の功能は化清降濁,配合される桔梗は升清に,薏苡仁、茯苓は降濁に,清気が升れば,濁陰は降る,それで嘔吐、泄瀉等の証は愈える。
脾胃が健運となり,湿滞が化せば,水穀の精微の生化は恢復し,衰弱していた体は好転に向かう。
《医方考》に説く:"脾胃は甘を喜び苦を悪み,香を喜び穢を悪み,燥を喜び湿を悪み,利を喜び滞を悪む。是の方も,人参、扁豆、甘草は,味の甘き者也;白朮、茯苓、山薬、蓮子肉、薏苡仁は,甘にして微燥の者也;砂仁は辛香にして燥,だから開胃醒脾ができる;桔梗は甘にして微苦なり,甘の性は緩なり,故に諸薬の舟楫となる,苦は降を喜び,能く地道(大腸)を通気する也。"
呉崑根の云う脾胃喜悪釈方は,頗る特色があるが,"桔梗甘則性緩,故為諸薬之舟楫"の一語だけは正確ではない。
若し味甘即可為諸薬舟楫と謂うのなら,先ず選ばれるのは甘草でなければならない,どうして甘草を諸薬の舟楫と謂わないのか?
此の方に配伍する桔梗には両意義が包含される:
①開宣肺気:水津の運行には気を帥と頼む,湿が中焦に滞れば宣上の薬物を用いるのは,気が行れば津も行るの意なり,即ち呉氏の所謂"能く通天気于地道也である。"
②升挙清気:清気が上升すれば,濁陰は自ら降る。本方が経行泄瀉を治すのは,経期には気機は升よりも降が多いから,升清の意がある。
此の方の補気薬中に行気の砂仁を配伍し,燥湿、芳化、淡滲の中に固渋の蓮子を配伍するのは,補中有行,通中寓渋の配伍形式である。
薬力が和平,温にして不燥,益気健脾,補しても不滞,「既に杜は生湿の源だが,又巳成の湿にも化す」,清升濁降にすれば,津気の運行出入は正常となる。
《医方集解》は本方に芳香醒脾,化湿利気の陳皮を加入して,構成を更に完善にしている。
此の方が所用する品の,多くは静にして不動なり,その意は腸道蠕動を減緩し,充分に吸収させることに在る,学ぶ者は留意せよ。
[応用]
1.食少く便溏のため,面色が萎黄で,困倦乏力,苔白脈緩,が辨証の要点である。
嘔を治すには此の方を少用し,泄瀉なら常用量とする。
2.桔梗を減去し,鶏内金の,研末を加え,10回に分けて蒸痩肉で服す。これは特に小兒の脾虚営養不良に宜しい。
3.帯下の色が白いのは,脾虚湿濁下注の機理による,此の方を投ぜよ;両足が微腫し,尿蛋白が日久しく消えないのは,脾虚で精微を固摂できないからである,本方加黄芪、五味子とする。
4.経行泄瀉で,寒熱証象がはっきりしなければ,此の方を投ぜよ。
     『中医治法與方剤』(陳潮祖)より

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