朱進忠の難病奇治 失眠
かつて「柴胡加竜骨牡蛎湯へのグチ」に本剤が安易に使用されていることをグチった事がある。
本剤が並大抵の処方ではない事を云いたくて再度にわたりグチることになります。
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産后半月で睡眠が一時間しかできない
和××,女,29歳。
三十ケ月前に一女嬰を安産したが,嫁姑の仲が不和で,痛哭していた。
其の后突然 乳汁が減少し,煩躁失眠となり,継いで嬰児がいつも啼哭するのでますます入睡できなくなった。
西薬の安眠薬で治療したが効果がなく已むを得ず,中医治療に転じた,某医は血虚心神不安と認めて,養血安神,益気養血剤を数十剤与えたが,やはり入睡できず,加えて小兒は昼夜哭閙するので乳汁は更に減少した。
詳しくその症を看ると,この十数日来,昼夜入睡できるのは一時間しかなく,并せて煩躁不安,頭暈頭脹,胸脇苦満,食欲不振,時に煩熱上冲して,全身から汗が出る,大便干,小便黄,舌苔薄黄,脈弦緊で数である。
脈症を綜合し,反復思考するに:此れは乃ち肝鬱気滞,寒飲停滞,上熱下寒,心腎失交の証である。
治は舒肝理気,化飲安神,調理三焦の,柴胡加竜骨牡蛎湯加減が宜しいだろう。
処方:(柴胡・半夏・黄芩・党参・白朮・甘草3 茯苓・桂枝・竜骨・牡蛎・大棗5 生姜・熟軍1)45
服薬すること両剤の后,睡眠は毎夜五時間に増えた,継服すること6剤で,睡眠は正常に恢復した。
难病奇治 朱进忠(23) より
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柴胡加竜骨牡蛎湯の対象となるのはありふれた不眠症ではありません。
煩熱上冲するため頭暈頭脹があり、全身から汗が出たり、便秘や小便黄もある。
真ん中に胸脇苦満があって食欲不振、上下が分断されて上熱下寒、それが心腎不交の不眠の原因となっている。
こんな特殊な不眠症がそう多くあるものではない。
なのに今日も全国の医療機関では不眠症に柴胡加竜骨牡蛎湯エキスが安易に処方されているのです。
繰り返しになりますが、柴胡加竜骨牡蛎湯は太陽病を誤治したことで作られた処方ですから複雑な構成なのです。
構成生薬は寒熱・軽重・補瀉入り混じりの怪奇な処方ですよ!
それを理解した上で使うんなら使ってください。
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