興味深い治験例 慢性気管支炎2
2.気逆作喘なのに升浮の薬を反用した
例:患者耿××,男,成。
喘咳が2ケ月以上も止らない,某院では慢性支気管炎合并感染と診て,入院治療を一ケ月以上したが無効で,又中医に転じた,先用したのは定喘湯加地竜,継用には小青竜湯,射干麻黄湯等の加減としたが仍お無功だった。
其の証を細審すると,喘咳のため平臥不能,痰涎壅盛,咽喉不利,頭汗較多,脈滑,寸盛尺弱である。
これは正に蘇子降気湯証に合致している,但だ麻黄が喘家の聖薬である事を考慮すると,恐らくは蘇子降気湯の量では効かないだろうと,蘇子降気湯加麻黄として治療することにした。
だが服薬2剤で寸効も無かったので,教えを恩師李翰卿先生に求めた。
先生云わく:“証は蘇子降気湯証に間違いない,効かなければならないはずなのに,全然効かなかった,理由は麻黄の一味に在る。麻黄は喘家の聖薬ではあるが,性は宣散升浮である,本病は痰濁壅盛,気逆作喘,降気化痰、納気帰腎に非ざれば解することが出来ない,若し麻黄の升散を再加入すれば,必ずや病勢を上冲させるから,喘咳は劇しくなるだろう,因って麻黄を去りなさい。”
私は其の意に従って,去麻黄としたら,僅か2剤を服しただけで喘咳は即減した,継服すること10剤にして暫時緩解している。
朱进忠医案 より
※蘇子降気湯は上盛下虚のため頭汗と足冷が対になって現れるようです。
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