興味深い治験例 慢性気管支炎5
5.心腎陽虚,水飲内停,上凌心肺なのに,宣肺化痰を反用して正気を傷つけていた
例如:患者李××,女,成。
支気管哮喘が反復発作してもう数十年になる,一年前には感冒に因って咳喘が加重した,某院では支気管哮喘合并感染と診断して,前后して入院治療を7ケ月以上したが好転せず,その后また中薬の射干麻黄湯、定喘湯、蘇子降気湯、小青竜湯加減等の配合で治療すること8ケ月以上になるが亦無功だった。
其の証を診ると,喘咳短気して平臥できない事の外に,骨痩して柴の如く,飲食は倶に廃され,畏寒肢厥,足冷は膝までに至り,手冷は肘までに至る,口干しても飲みたがらず,舌淡で苔白,脈沈細促無力である。
反復思考し,証脈を合参すれば,心腎陽虚,邪水上汎,上凌心肺と弁証される。
しかるに前医が用いた諸方はみな実治だったから,奏功しなかったのである。
そこで真武湯の原方を1剤とした。
すると某医は処方を視て,云く:“病重くして薬軽し,また麻黄の定喘が無ければ,飲んでも無駄である。”と云ってその処方に麻黄を加えて1剤を服させた,結果として服薬すること4剤になっても,効果は無く,又私の診を請うことになった。
私云わく:“正虚の躯に,克伐の品を過用して,已に正虚邪実の重証に成っている,麻黄の発散力は微かでも,正気を傷つけるには充分である,麻黄を去り,人参、杏仁を加え,正気が少し回復すれば,痰飲は減るだろう。”
処方:人参・杏仁・附子・白芍・茯苓・白朮6 生姜1片。
薬進すること2剤で,咳喘は少し減り,継服すること20剤で喘咳は平定して退院した。
朱进忠医案 より
※「病重くして薬軽し」と考えるのは誰もが犯しやすい間違いだ。
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