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湿邪咳嗽(湿咳)

一般に肺気とは単に五穀の匂いを嗅ぎ,衛気を宣発し,膚に熏じ、身に充ち、毛を沢すものと考えられているが,実は肺系に進入した邪気をも宣発することが出来ます。
邪気の影響で肺気不降になると,咳嗽吼喘を起すが,ふたつの病理は区別されていない。
その区別は実は、咳嗽とは肺気の宣発そのもの“上逆”でもあり,咳嗽によって肺気は宣暢となるのです;如し肺気が不暢のままで,胸中に壅塞しておれば,宣発も粛降も出来ません,それで現れるのが喘です。
この違いで咳嗽と喘の治療方法に些かの差異が出ます:治咳には一般に肺気の宣発を要し,邪気を宣散する薬物が用いられ,宣発の勢いに逆らってはなりません,降逆止咳だけでは,肺気は抑制され,閉門留寇(邪を門内に留める)となります。
喘証の治療には宣と降の両方が求められ,肺気が調暢されれば,正常な宣発と粛降が可能になります。
正気が虚弱では咳嗽にもなりません,邪が有る故に咳が出るのです;正気不足で,宣発力が弱いと,虚咳となりいつまでも治らない。それが虚実夾雑の証です。
咳嗽に補益法のみというのはありません,虚咳を治すにも補益の中に消導を并用する必要がある。
如えば加味救肺飲、参蘇飲、清燥救肺湯等の方剤は皆是の原則によっている。
咳声が表浅なら病位は浅い,咳声が深沈なら病位は深い;干咳なら病位は上にある,痰嗽で痰量多きは病位は下にある;白昼に咳多きは病位は浅い,夜間に咳多きは病位が深い。
病位が上にあれば辛味の発表薬物で散ずる,病位が下にあれば透散すると同時に化痰、理気をする。
証型辨治:
(一)寒傷なら寒邪に外感して,肺系に侵入する:痰は白色で,多くは清稀,口は不渇,苔白く,脈は浮弦或いは緊,杏蘇散にて治療する。
如し寒飲停肺や停心下を兼有すれば,小青竜湯を用い,酌情により杏仁、茯苓、射干を加入する;
若し寒飲鬱久して化熱し,煩躁や口渇,脈滑で舌紅く苔水を兼ねるなら,張仲景の小青竜加石膏湯を用いる。
(二)肺の熱傷で風熱犯肺により咳をすれば,麻杏石甘湯や桑菊飲加減を用いる。
内熱なら,干咳少痰,或いは痰中帯血,煩躁口渇,尿赤便燥となる。
木火刑金なら,急躁易怒,胸脇が疼痛し,脈は寸口が浮数か弦数となり,瀉白散加山梔子、黄芩、枇杷葉、浙貝母、全瓜蒌を用いる;咽痛があれば,射干を加える;痰中帯血なら,白茅根を加える。
若し痰多くして米粥のように粘稠なら,千金葦茎湯を合せる;如し肝火犯肺なら,黛蛤散を合わせる。
(三)肺の湿傷による咳嗽は比較的多いが,これを認識する者は少い,古代から医家で湿邪致咳を論述していても,如えば《内経》の湿咳の記載,王綸の《明医雑著》の咳嗽には“‥‥湿熱なら瀉せ‥‥”のような論述にすぎない,現代最も完備している中医内科臨床著作の《実用内科学》でも痰湿咳嗽の証型で,痰を論ずるばかりで,湿邪咳嗽は略されている。
此の型の咳嗽の特徴は痰多,胸悶して饑えず,汎悪、咽痛,或いは午后の発熱,口不渇,面色淡黄,脈弦細にして濡,舌苔白膩にして厚などである。
中でも舌苔に対する辨証は非常に重要な意義がある,ただ舌苔が白膩で厚ければ,病程の新久を問わず,また脈象の如何を論ぜず,即 甘露消毒丹 を投ずるべきである。
如し湿が重ければ,三仁湯を合せて使用してもよい。
甘露消毒丹に関して,王孟英は《温熱経緯》で其の使用指針を講じている:“発熱倦怠,胸悶腹脹,肢酸咽痛,斑疹身黄,頤腫口渇,溺赤便閉,吐瀉瘧痢,淋濁瘡瘍等証。ただ病人の舌苔が淡白か厚膩か干黄なら,是れは暑温熱疫の邪がまだ気分にある,悉く此の湯で治せば立効できる;并せて水土不服(その土地の水が体に合わない)の諸病をも主る。”
この一段の論述で舌象が此の湯の応用に重要だという説明は十分である。
劉氏の甘露消毒丹を用いた湿熱咳嗽の治療経験は前人の未備を補足している。
如し内傷久咳で,痰多色白、胸悶納差、倦怠疲乏を証見すれば,二陳湯加減を用いる。
(四)肺の燥傷なら,桑杏湯を用いる。
如し干咳無痰か少痰で燥や,痰中帯血,喘息気急,胸脇疼痛,少気乏力なら,清燥救肺湯を用いる。
※正気があれば治咳には宣発のみ、治喘には宣発と粛降を、というのは分かりやすい。それにしても湿咳とはまた重症ですね。

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