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肢体疼痛

痺証の発生機序:一つは人体の皮、肉、筋、経、骨、脈等の正常組織を損傷して,導びかれる局部の血瘀絡阻,による痛み,如えば火熱焼灼、外傷打撃等によって引き起される疼痛は皆この種の情況のものです。
もう一つは人体の正常組織の営養缺乏によるものです,如えば気血虚弱,或いはある種の営養物質が流通不能により患処に到達できないための痛み。
一切の疼痛の病機の伝統的解釈は“通ぜざれば則ち痛む”とされています。
劉氏は肢体疼痛とは皮肉筋骨の“外症”表現で,一般の臓腑病変の症状には属さないと考えています,故に《傷寒論》では肢体疼痛は表証の一症状で,その治療には発散方法や兼用発散方法を用いています。
発散法とは因勢利導(勢いの赴くところへ導く)により,祛邪外出させるもので,薬物の作用は体表に行き,病所への直接作用ではありません。
疼痛の辨証では,疼痛が「時に作し時に止る」のはで,持続するのが;痛んで「温めたり按ずることを喜ぶ」のが虚や寒,「冷やすことを喜び按ずることを拒む」のが熱や実;疼痛が日中に重いのは気分病,夜間に重いのは血分病である。
風は上を傷つける,故に痛みが上に偏すれば風気が勝れており;湿は下を傷つける,故に疼痛が下に偏すれば湿気が勝れている。
新病の多くは寒傷であり,久病の多くは夾瘀熱である。
痛みが甚しければ寒が勝り,痛処が移動しない;痛んで沈重するなら湿が勝る;痛処が游行転移するのは風が勝る。
久病は絡に入り,疼痛が日久しければ絡脈瘀阻の病機を含んでいる。
 劉氏の肢体疼痛証の類型辨治:
(一)寒湿疼痛‥‥烏頭桂枝湯。如し寒勝陽微から,陽虚寒湿証に変れば,附子湯や真武湯に転方する。
(二)湿熱疼痛は湿熱実証と湿熱虚証に分け,湿熱実証は又湿と熱の多少により湿重型と熱重型に分ける。
湿重型は加味蒼柏散※にて清熱去湿,疏風散邪,理気活血する。
 ※加味蒼柏散《医学入門》蒼朮10 白朮8 知母・黄柏・黄岑5 当帰・芍薬・生地4 木瓜・檳榔・羌活・独活・木通・防己・牛膝3
此の型の病症病機には湿阻気滞による,下肢沈重と発脹があり,加味蒼柏散中の檳榔等が理気祛湿する。
熱重型で如し汗出、口渇、脈洪大で数なら,外に熱気偏盛で湿邪が少ない,これには《金匱要略》白虎加朮湯を用いる;如し裏に湿熱偏なら,呉鞠通の加減木防己湯※を用いる。
加減木防己湯は清熱の中に利湿があり,木防己、白通草、薏苡仁、杏仁、滑石を用いて利尿滲湿、宣降水湿する,桂枝では太陽の気を通し行水、宣痺止痛し,石膏で清熱する。
劉氏は后に此の方に海桐皮、石見穿、絲瓜絡、稀莶草、晩蚕砂 等を加えて祛湿通絡止痛の効果を増強している。
湿熱虚証は気血皆虚す,故に麻木、疲乏、少気、脈細等の虚弱の象がある。
此の型の病証では,形気が皆虚している,故に当帰拈痛湯※で祛湿清熱、補益気血、蠲痺止痛する。
 ※当帰拈痛湯《蘭室秘蔵》(羌活 当帰 防風 茵陳 蒼朮 苦参 升麻 白朮 葛根 甘草 知母 沢瀉 猪苓 人参 黄芩)
上述の三型で,若し湿熱の邪の痺阻気血が久しくなると,壅鬱して熱毒を化生し,関節紅腫熱痛,脈滑数,舌質紅絳となる,この場合は方中に清熱解毒の,忍冬藤、紫地丁、蒲公英等を加える;熱盛なら胆草を加え;血熱なら牡丹皮、紫草を加える。
(三)風湿疼痛は風気偏勝であり,疼痛は身体上部が重くなる,如えば肩臂疼痛、背痛,或いは頭項疼痛を伴い,舌苔白,脈濡緩である。
治には防風通気湯を用いる,これは亦“羌活勝湿湯”ともいう。
如し身体疼痛、微腫,汗出悪風なら,風湿に表気不固を兼ねているから,《金匱要略》防己黄芪湯※を用いる。
 ※(防己、黄芪、白朮、炙甘草、生姜、大棗)
(四)虚証の疼痛は気血虚弱で,営養が失われて痛む。軽ければ《傷寒論》桂枝新加湯※を用い,桂枝湯で調和営衛、生化気血、疏通表気する。
 ※(桂枝 芍薬 甘草 人参 生姜 大棗)
気血虚弱が重ければ,八珍湯を用いて益気養血する。
外に風湿、裏に気血不足を兼ねれば,独活寄生湯を用いて攻補兼施とする。
腎虚には,六味地黄丸や済生青娥丸加減※を用いて治療する。
 ※青娥丸《済生方》(肉苁蓉・陽起石・鹿茸・赤石脂・巴戟天・韭菜子・白茯苓・鹿角霜・竜骨・制附子)
(五)絡阻疼痛は痛みが針で刺すようで,痛処が固定しており,病程は日久しく,羸痩し,面色が黎黒で肌膚は甲錯し,脈渋舌暗となる。
是れは病邪が已に絡脈に入り,血絡が瘀阻不通となっており,活血通絡止痛の,仙方活命飲※を用いて治療する。
 ※(炮穿山甲,天花粉,甘草節,乳香,白芷,赤芍,貝母,防風,没薬,炒皀角刺,当帰尾,陳皮,金銀花)
此の方はもと外科の瘡癰治療の方だが,効果がすこぶる好い,故に名づけて“仙方活命飲”と云い,肢体疼痛で久病入絡した者に応用する。
(六)肝胆の気が抑鬱されて肢体疼痛する機理とは:肝胆の気は疏泄を主り,疏泄が正常なら気血は流暢だが,反して気血鬱滞となれば,肝胆の気は抑鬱されて肢体疼痛となる。
此の外に,肝は将軍の官なり,其の性は舒展条達を喜び抑鬱を悪む,鬱すれば伸を求める,気が鬱勃とすれば必ずや肝気攻冲を伴発し,それが肢体を攻冲すれば作痛する,攻冲した処に疼痛は出現する。
肝気疼痛とは、肝胆は東方風木の気を禀けるため,其の性は舒展条達を喜び抑鬱を悪み,抑鬱して舒びざれば病となる、俗に游行走竄を特徴とする“肝気竄”のことである。
《傷寒論》柴胡桂枝湯:傷寒六七日,発熱,微悪寒,支節煩疼,微嘔,心下支結,外証未去者,柴胡桂枝湯主之。
この“肢節煩疼”とは太陽少陽の気の両鬱による肢体疼痛のことである。
※なかでも肝気疼痛は肩関節周囲炎などで見られるようです。

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