« 湿邪咳嗽(湿咳) | Main | 譫語妄行,独語不休 »

耳鳴耳聾

耳鳴・耳聾は中気不健による濁陰上逆・相火上炎が原因である。

【脈証機理】
耳は清陽の門戸なり,清虚なれば善く聞き,滞塞すれば重聴となり,甚しければ耳聾となる。
《素問·陰陽応象大論》に云わく:北方は寒を生ずる,臓は腎,竅は耳なり。
《素問·金匱真言論》に云わく:南方の色は赤,心に通入し,耳に開竅するので,耳は腎官でもあり,また心官でもある。故に心腎は同じ少陰に属する。平人は心火は下に蟄(冬眠)し,腎水を温め,腎水は上を承(サポート)し,心火を済(救う)すれば,心腎交泰,水火既済,下温上清となる。上清となれば気機暢利となり,濁陰は悉く降り,耳竅は虚霊となる,故に耳聡くして善く聴える,下温なれば精血は充盈し,清陽は上達し,耳竅は空霊となり,声は耳に通入する,故に巨細なるとも必ず聞える,ゆえに耳は一竅なれど心腎の并官である。心腎交泰の権限は,中焦脾胃に在り,脾が升れば腎肝はこれに随って升る,胃が降れば心肺はこれに随って降る。肝は魂を蔵し,心は神を蔵す,魂とは神の初気なり,肺は魄を蔵し,腎は精を蔵す,魄とは精の始基なり。平人は水土温暖にして,肝木は条達して鬱せず,清陽は升発して神旺なり,肺気は清粛にして滞らず,濁陰は悉く降りて精盈となる,この故に耳鳴、耳聾を病まず。
されど内外に傷を感じたり,房室が過度なれば,真元を耗傷して,脾腎を両虚ならしめ,肝木を生長させることが出来ない。
肝は生を主る,生気が旺せずば,清陽は升らず,因って魂神は倶に虚となり,耳鳴を病み,甚しければ耳聾となる。
脾が虚せば肝鬱となり,必ずや胆胃は上逆し,肺は降斂を失い,精魄は倶に虚し,濁陰は耳竅を填塞し,耳鳴を病み,甚しければ耳聾となる。
腎は骨を主り,骨は髄を生ず,脳は髄の海なり,肺は水の上源であり,亦髄の上源である,腎は髄の下源である,肺が降斂せずば,魄は虚して化精せず,髄源は不足し,髄海は空虚となり,両耳は倶に鳴り,甚しければ倶に聾する。
《素問·通評虚実論》に云わく:頭痛や耳鳴の,九竅の不利は,脾胃が生ずる所なり。
綜じてその所因は,中気不運,脾湿肝鬱,胆胃上逆,清帽下陥,濁陰上逆,填寒孔竅,虚霊障蔽である,故に耳鳴耳聾,重聴不聞となる。
病いは耳竅に在っても,其の本源に朔れば,実は中土不健に因っている。
脾虚肝鬱になれば,濁陰は上逆する,故に脈は細濡、弦、稍滞、関寸較大を現わし,舌苔白膩、或いは黄膩となる。
【治則】
健脾疏肝,平胆和胃,清上温下。
【方薬】
(云茯苓・黄芩炭・炒杭芍・広橘紅・全瓜蒌・法半夏・広鬱金・石菖蒲3 制首烏7 生竜骨・牡蛎粉・北沙参4 草蔻仁・粉甘草2)47,水煎温服。
【方解】
云茯苓、粉甘草は,健脾和中;黄芩炭、炒杭芍、制首烏は,平胆疏肝;北沙参、広橘紅、全瓜蒌、広鬱金、法半夏は,清肺理気,寛胸降逆;草蔻仁、石菖蒲は,暖中化瘀,交通陰陽;生竜骨、牡蛎粉は,蟄火潜陽,斂精蔵神。
【加減】
腎寒なら,補骨脂9 を加えて,温腎し以って祛寒をする。
陽気浮動なら,炙米殻3-5 を加えて,温中暖下し,以って浮陽を潜める。
【忌宜】
烟酒を忌み,房欲を節し,以って居処を清静にし,清心寡欲なるが宜し。
【按語】
耳鳴、耳聾は,異なる症状であり,異なる病名である。
名は二つでも,実は一つの証であり,僅かに程度が異なるだけである,軽いのが耳鳴で,重いのが耳聾である。
症状については,其の本病を治せば,耳鳴耳聾は并愈する。
疾病については,多くは腎虚で,清陽不升,濁気上逆,填塞耳竅である。
治療には降濁を主とし,升清を輔とする。
肺胃が清降となれば,上逆する相火は蟄蔵され,上清下温の常に復し,耳竅は空霊となり,声は耳に通入し,耳鳴耳聾は遂に愈える。
   麻瑞亭治验集 より
※従来の腎からではなく肺胃からのアプローチであり、補益ではなく升清降濁の気機暢利の治法である。北沙参、全瓜蒌、草蔻仁などは新鮮に見える。

|

« 湿邪咳嗽(湿咳) | Main | 譫語妄行,独語不休 »

漢方」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 耳鳴耳聾:

« 湿邪咳嗽(湿咳) | Main | 譫語妄行,独語不休 »